掟ポルシェ 大切な思い出がツバまみれ2

あの世で罰を受けるほど【2023年8月号 掟ポルシェ 連載】『大切な思い出がツバまみれ 2』

 ある日のこと。フランスパンのバゲットが食べたくなり、東京都下某駅ビルのチェーン店パン屋に入店。夜も遅かったため焼き立てとは言えないものの、無事欲しかったバゲットを購入。このパン屋では、店員がパン切り包丁を使い手作業でバゲットをカットしてくれるのでななめ切り3センチ幅でお願いする。レジを打ってくれたバイトくん(推定年齢22歳・和術慧舟會の若手にいそうな風貌の短髪青年)が、会計の後すぐに目の前でカットしてくれたのだが……、
 力任せに切りすぎて、バゲットめちゃめちゃつぶれてない!?
 うまく切れないからって力入れて包丁垂直に押し当ててるのが背中越しからでもわかるし! バゲット、結構固いよ? なんでそんな押しつぶすことが出来んの!? グアッ、またつぶしたッ! おい! お前、パン! 俺のフランスパン! いま「ギチッ」って言う音出たぞ! 外はカリッと中はふんわり食感のデリケートな食品を切る時に絶対しない音出た! うーわうわ、どうなってんだよ俺のバゲット! バイト!! てめえ! おーいっっ!!!
 次々凌辱されていく俺のバゲットに時間と空間が歪みもうわけがわからない。国分寺パン切り包丁バイトマサカーによる公開背中越しパン処刑。あまりの出来事に完全に目が点になっていた。
 「おまたせしましたー」
 一切悪びれない声とともに、つぶれバゲットを乱雑に入れた袋を差し出すバイト。こ、こいつ何事もなかったかのようにバゲット包丁圧縮扁平の所業をごまかすつもりだ! いつもの俺ならブチギレるところだが、よく行くパン屋なので事を荒立てないように、「パン切る時、結構、つぶしましたよね、ダメですよね」と、冷静な声で伝えた。するとどうだろう、
 「すみませんでしたー」
 口では謝っている。が、顔色変わらず一切うろたえることなく、つぶれバゲットの入った袋を一層強めに差し出すのみ。なんだお前!?
 まぁツブレてると言ってもおそらく数個だけだろうし、360円のバゲットで声を荒らげるのも大人げないかと思い、渋々商品を受け取り帰宅。で、家でバゲットを袋から出してすぐさま確認。バゲットのつぶれ率、およそ6割……。予想を越えるグッチャリぶり、ていうか端っこの固いところ以外ほぼつぶれてんじゃねえか!!! バイトてめえこの野郎! なんで俺だけこんな目に遭わないといけないの!? ……ハッ、そうか、もしやこれは……
 これが前世の報いというやつか!?
 なんだ、何やった!? 一体前世で何悪いことやった俺!?

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