昨年はCOVID-19が猛威を振るったこともあり、多くの映画が公開延期を余儀なくされた。楽しみにしていた作品が軒並み後ろ倒しになり、映画好きには厳しい年になった。それと比べると今年は、終息とまでは行かないまでも、感染者数もある程度は落ち着きを見せ、それに伴い公開延期になっていた映画も続々とスクリーンで流れ始めた。それに伴い、今年は劇的に映画館に行く回数も増え、沢山の作品を劇場で観ることができた。今回はそんな中でも特に印象に残った3本を紹介したい。
【筆者プロフィール】
人間食べ食べカエル
●Twitterで人喰いツイッタラーをやっています。ID @TABECHAUYOで検索すると出てきます。他には、映画秘宝様やciatr様等にも寄稿しています。人が食べられる映画が大好きで、1番お気に入りは「ザ・グリード」です。これを観ると物凄く食欲が湧くんですよ。
まず1本目は『レリック 遺物』だ。今年は、アンソニー・ホプキンスがアカデミー主演男優賞を受賞したことでも話題になった『ファーザー』に、そこに居るだけで超速老化する恐ろしすぎるビーチが舞台の超常スリラー『オールド』と、老いをテーマにした作品が目立つ年だった。そして、本作も同じく老いをテーマにしている。不死でもない限り誰しもに平等に訪れる老い。抗いようのないそれは多くの人にとって恐ろしいものだろう。この映画は新鋭の監督ナタリー・エリカ・ジェームズが、自身の経験をもとに作り上げたホラーである。離れて暮らす母親が行方不明になったことで、娘と孫娘が母の暮らす生家に戻る。しかし彼女たちは、そこで想像を絶する体験をすることとなる。これがかなり怖い。幽霊の見た目が怖い!という直接的な恐怖よりは、理解を超えた事象がジワジワと迫りくる怖さがある。余計にたちが悪い。身近な存在であった母親が次第に人ならざる何かへと変貌していく。娘たちにそれを止める術はなく、ただその変貌を見守るのみ。恐ろしく、そして物悲しい。その変異の末に待ち受けるラストがいまだに脳に強く焼き付いている。彼女たちの姿を、嫌でも自身の人生に置き換えて観てしまう。後に引きずるという点においては群を抜いている作品だった。
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