OWARAI Bros.WEB版「同級生~ときどき幼馴染~」連載第1回 前編 ミキ×相席スタート・山添

しばらく会っていなくても、不思議と当時の関係性に戻れる学生時代の友達。そんな関係だからこそ引き出せる表情や知られざるエピソードが楽しめる新連載「同級生~ときどき幼馴染~」対談がスタート。

記念すべき第1回は相席スタート・山添 寛とミキ(昴生/亜生)。1歳違いの山添と昴生が同じ中学校のサッカー部で出会い、そのサッカー部の試合を観に来ていた昴生の弟・亜生を含めて、家へ遊びに行く仲になったという3人。山添の高校卒業後、一度、交流はなくなったものの、別々に進んだお笑いの世界で再会。今も家族ぐるみで付き合いのあるほど、仲がいい間柄だという。
前編では「仕事でこんなにじっくりと話すのは初めて」という3人に、出会いから学生時代の思い出、それぞれの芸人になった経緯、再会の思いなど和気あいあいと話してもらった。

構成/竹村真奈・村上由恵 取材・文/高本亜紀 撮影/大槻志穂
写真提供/ミキ、山添 寛(相席スタート)

出会いは中学校のサッカー部


――ミキさんと山添さんは学年は違えど、同じ中学校の出身ですよね。出会いは?

昴生 僕が中学1年生のとき、寛ちゃんが2年生のときですね。サッカー部で一緒になったんです。

山添と昴生のサッカー部の集合写真

山添 寛(以下、山添) しかも、僕の弟と昴生は同級生でして。

昴生 寛ちゃんの学年はヤンチャな人が多くて、最初は怖かったんです。寛ちゃんも当時カラーギャングやったし。

亜生 そうそう、カラーギャングの青! 青いバンダナに青くてデカいTシャツ、青いジーンズで。額にバンダナの結び目があってね?

山添 ……こう聞くと治安が悪い地域やと思われがちなんですけど、ほんまはすごく住みやすい地域で。カラーギャングのチームがあったとかではなく、当時流行ってたからそれっぽく見せたくて、みんな、青くてデカめの服を探して着てただけです(笑)。

昴生 寛ちゃんの代はみんなサッカーがうまくて、公式戦が始まる前の練習試合では、どんな強豪と戦っても無敗やったんです。けど、いかんせんめちゃくちゃ仲が悪いから、どんどん弱くなっていって。寛ちゃんのことは面白い人やなとは思ってましたけど、正直、当時はめっちゃ苦手でした。

山添 それは知らんかった。昴生からはめっちゃ好かれてると思ってたわ。

昴生 夏か秋の公式戦でPKまでもつれ込んだとき、寛ちゃんが外して負けたんですけど、試合終わってからヘラヘラしてて。俺、マジでシバいたろかなって思ったもん!

山添 たしかに、昴生は真面目やったもんな。

昴生 僕の卒業式に、なぜか卒業してる寛ちゃんが原付で来てて。先生がおらんようになるのが悲しくて泣いてたら、嘘泣きしながら近寄ってきて写真撮ってて……。あれもほんまにイヤやった。その写真、今だに持ってます。

卒業式で泣いている昴生と嘘泣きをしている山添

――亜生さんはいつ山添さんと出会ったんですか?

亜生 僕が小学生6年生のときですかね。お兄ちゃんが中学2年生で寛ちゃんが3年生やったんですけど、試合を観に行ったりしてたんです。覚えてるのは、寛ちゃんがフォワードからボランチにコンバートされた試合。めちゃくちゃすごいロングシュートを打って、当時の監督から「山添! それがお前の武器や!」ってめっちゃ大きい声で言われたのに無視してて。

山添 公式戦の終わりに武器やって言われても……気づくんが遅かったわ(笑)。

亜生 あはは! あと、僕らの家にもちょくちょく遊びに来てたんです。

山添 当時の亜生はめっちゃかわいかった。学年が被ってないのに、みんな亜生のことをかわいがってて。

小学6年生の亜生

――昴生さんは友達と遊びに行くとき、いつも亜生さんを連れて行ってたんですもんね。

昴生 そうですね。寛ちゃんはよく遊びに来てくれてて、おかんが作ってくれたご飯を一緒に食べたりしてました。

山添 当時の昴生は先輩ばっかりの中、スタメンで。センターバックをやってたんですけど、僕らに対して「戻れや!」とかタメ口で言うてたんです。けど、雑誌のインタビューとか読むと、学生時代にはあんまり友達がいなかったとか話してて。おいおい、嘘つけ! そういう仕事の取り方してんのか?ってビックリしたわ。

亜生 寛ちゃんは高校に入ってからのお兄ちゃんを知らんからな。マジで3年間、一度もお兄ちゃんの声、聞いたことがなかった。

山添 なんで心を閉ざしてしまったん? 中学の頃は明るかったし、学年のマドンナ的な彼女もおったやん。

昴生 その子を友達に取られてから狂った。寛ちゃんは高校に入ってから、アルバイトで僕らの地域の新聞配達をしてくれてたんです。あの頃、唯一楽しく喋れたのは寛ちゃんとだけ。会うたびにミニコントしてて……。学校からの帰り道、家までチャリで新聞を届けに来てくれるのを見つけると嬉しかったですね。

中学3年生の亜生。この頃、山添はふたりの家へ新聞配達をしていた

山添がNSCを受け直した理由


――学生時代に仲がよくても大人になるにつれて会わなくなることってあるじゃないですか。みなさんはどうだったんですか?

山添 実は僕、高校卒業してすぐに1回、大阪のNSCに入ってるんです。2ヶ月足らずで辞めたんですけど、そのタイミングでミキのふたりとは一度、接点がなくなってますね。

昴生 なんで新聞配達してたんか、知らんかったんです。理由を聞いても教えてくれへんかったんで。アルバイト最後の日、おかんが「寛ちゃん、高校卒業したらどうするん?」って聞いたら、「おばちゃん見といて! 俺、スターになるから」って去って行ったらしくて。

山添 昴生、違う! 「ビッグになるから」や。スターよりビッグのほうがダサいやろ! そこ、ちゃんと覚えとけ!

昴生 あはは! そうや。その後NSCに入ったっていうのを、誰かから聞きましたね。

――山添さん、大阪のNSCはもし卒業していたら何期生だったんですか?

山添 27期生やったんで、GAGさんとかトットさんと同期ですね。

亜生 めっちゃ先輩やん。なんで行かへんようになったん?

山添 ひとりで入ったけど、漫才したかったからコンビを組みたいなとは思ってて。入ってすぐ、ふたりくらい誘ってくれてんけど、能力もないし、(芸人らしいことは)何もやったことがなかったくせにトガってはいたから、ネタ合わせしても結局やりたい感じと違うっていう理由で解散してしまって。それを何回か繰り返してたら、ほかの人らはみんなコンビ組んでて、組めそうな人が少なくなくなってたんよ。で、相方と一緒に入ったほうがよさそうやし、東京やったらフリーライブとかあるやろうからお金貯めて上京しようと思って辞めた。

昴生 東京に行く前は京都におったん?

山添 滋賀のパチンコ屋で1年半くらいバイトして、お金貯めて上京した。俺も俺で、昴生がお笑いやりたかったなんか全然知らんかった。言うてなかったやろ?

昴生 なかった。高校卒業するくらいに、なりたいなと思って。僕は幼なじみとコンビを組んだんやけど、その幼なじみが就職することになって。誰かコンビ組める人おらんかなってなったとき、寛ちゃんがNSCに入ったって聞いたんを思い出して電話したんです。で、「俺、今お笑いやってて。寛ちゃんはどうなん?」みたいなことを聞いたら、東京でやってるって言われて。

亜生 タイミングが違ったら、ふたりはコンビやったかもしれんなぁ。

山添 (顔を歪めて)いやぁ…………合わんやろ? 見えんやろ?

昴生 寛ちゃんから言われるの、なんか腹立つ! お前が言うなよ(笑)!

亜生 僕は家でYouTubeかなんか観てるとき、寛ちゃんがヒダリウマっていうコンビで出てたのを観て、芸人やってるのを知りました。おかんと「寛ちゃん、吉本入ったんや」ってびっくりしましたね。

再会後、数年はギクシャクしていた


――芸人としては、いつ再会したんですか?

昴生 たぶん(ヨシモト)∞ホールですね。

亜生 何かのライブにゲストで呼ばれたときかな。

昴生 初めて会ったとき、めっちゃ感動しました。まさか東京にある吉本の劇場で再会するなんて。

山添 今思い出した。そのとき、僕は昔のテンションで挨拶したんですけど、亜生から敬語で「おはようございます」って言われて……。昴生も「おぉ」みたいな感じでよそよそしいし。

昴生 高校3年間で、人見知りを爆発させてたから。それに、寛ちゃんが東京の劇場でどういう立場なんかも知らんし、周りの目も気になるやん。

亜生 そうそう。僕がいきなり「寛ちゃん!」なんて言ったら、和田まんじゅうさん(ネルソンズ)とかえらいことになるかなと思って。

山添 あいつは厳しそうに見えるけど、そんなん絶対ならん! あれ、距離を取られた感じがしてショックやった。それで、今までどおりの感じで話しかけたらイヤがられるんかなと思うようになって……。やから、昔のような仲に戻ったんはここ2~3年です。

亜生 みんな、僕らが昔からの知り合いやって知ってくれてるようになったから。

山添 舞台で昴生にツッコまれるときのぎこちない感じとかすっごくイヤやった。昔はいろいろと言い合った仲やったのに、ときが経って久しぶりにキツいこと言うたら傷つくかなって思いながら言うてるんやろうなって感じて切なかった。

昴生 昔の感じでいって、周りがついてこられへんかったらどうしよう、みたいなのもあったし。

亜生 寛ちゃん、カラーギャングやったことも隠してたやん?

昴生 (山添の相方の)ケイちゃんもびっくりしてたもん。

山添 「僕、カラーギャングやったんですよ」なんか言うタイミングあるか? あるわけないやろ!

亜生 (笑)。あと、初めて会ったとき、寛ちゃんに「あんなかわいかった奴の下ネタなんか聞きたない」って言われたのも覚えてる。当時、テレビに出させてもらい出した頃で、ほかの芸人さんから「最近、遊んでるんちゃうん?」とか聞かれてて。

山添 離れたところから「俺やってエッチくらいするやろ!」って亜生っぽい声が聞こえてきて……ショックやった。しばらくはそういう話するんは、ほんまにイヤやったわ。

※12月22日(曜日確認)配信予定の後編に続く。

ミキ

昴生(1986年4月13日生まれ、京都府出身)、亜生(1988年7月22日生まれ、京都府出身)。2012年結成。2020年『第5回上方漫才協会大賞』大賞受賞。毎週日曜『ミキの兄弟でんぱ!』(KBS京都ラジオ)など出演中。書籍『ミキ、兄弟、東京』(ヨシモトブックス)好評発売中。

山添 寛(相席スタート)

1985年6月11日生まれ、京都府出身。東京NSC14期生。2013年山﨑ケイと相席スタートを結成。10月よりさらば青春の光YouTubeチャンネル内でインディアンス田渕とともにラジオ『激イタ珍道中』配信中。

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