Netflixでアニメ化されたことも記憶に新しいジャンプ黄金期を支えた名作、「BASTARD(バスタード)!! -暗黒の破壊神-」。その作者の萩原一至氏が原案・キャラクターデザインを務めたインディゲームが東京ゲームショウ2022(以下、TGS2022)に出展しているとの噂を聞きつけ、そのゲーム『QUESTER』を開発する㈱サウザンドゲームズ社長兼、プロデューサーの桑原敏道氏に突撃取材を行った。
取材・文 TV Bros.編集部
【原案:萩原一至】ハクスラRPG
「QUESTER」クラウドファンディングページ
https://camp-fire.jp/projects/view/622187
サウザンドゲームズ公式
Twitter https://twitter.com/1000games_pr
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萩原一至 原案、キャラクターデザインの企画が立ち上がるまで
ーー(桑原さんは)ゲームをずっと作られていらっしゃるんですか?
そうです。もう30年以上ですね。もともとのデビューは、パーソナルコンピュータ向けのゲームです。「MSX2」の頃からですね。そこから、「PlayStation」のゲーム開発もしていました。その後、ガラケー向けのゲームビジネスで、「株式会社ジー・モード」という会社の立ち上げメンバーになりました。その時、テトリスが爆発的にヒットしまして最終的には同社の取締役を務めました。 ゲームプロデュースを始めたのはコンシューマーゲーム(家庭用ゲーム機)の開発に携わるようになってからです。 「グランディア」というゲームの制作・販売に関わっていた「ESP」という会社で、アシスタントプロデューサーになったことが始まりでした。そこから「株式会社ジー・モード」が立ち上がり、ゲームプロデュース業が多くなりました。
ーー今回のゲームの企画のスタートのきっかけはどんなものだったのですか?
企画のスタートは「萩原一至」さんがいらっしゃったからです。もともと萩原さんは、すごくゲームが好きな方なのです。で、ひょんなことで知り合いになったのですが、萩原さんはそもそもゲーム向きの企画もお持ちでした。ただ、ゲームのパブリッシャーから依頼を受けても、萩原さんが作りたいものや、パブリッシャーが希望していたビジネスモデルとなかなか合わない部分などがあり、まだ実現されていないようでした。ですので思い切って、だったら小さいゲームでもいいのであれば、「私と(ゲーム作りで)付き合ってくれませんか?」と提案してみたのです。それを「面白そうだ!」と、受けていただいたところから企画がスタートしました。
最初は洞窟を探索する「ウィザードリィ」や「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のようなダンジョンRPGがいいかなと思っていました。なぜなら萩原さんや私たちの中で、ゲームとして共通の知識があり、最小限のコミュニケーションでコンテンツを確立できると思ったからです。昔からある戦士、僧侶などの職業のクラスシステムがあるダンジョンRPGなら、実現しやすいのではと考えました。そこからは先ず、萩原さんの『QUESTER』へのイメージや世界観をアウトプットしていただいた上で、ゲームデザイナーを立てて、それをゲームシステムとして落とし込みました。クローズドβテストの参加者を募集するクラウドファンディングのページにも原案「萩原一至」と記載しましたが、ゲームのベースとなる発想は、ほとんど全部、萩原さんに考えていただきました。それを基にゲーム化して実現したのは、ゲームデザイナーの加藤ヒロノリさんですね。
ゲームの舞台は、文明を維持できなくなった退廃未来の世界
ーー萩原一至さんのゲームの世界観はどのようなものなのですか?
そうですね。「食べ物を探す」というのが一つのキーワードになっています。なぜかと言うと、萩原さんがゲーム内の食料事情をすごく気にしていたからです。「戦いに勝って食べて、それで生き延びるんだ」という世界観をすごくプッシュされていた。だからそれがゲームにも取り入れられていて、食料を探すということをベースに冒険を進めることにしました。今のプロトタイプでも、このモンスターは食べられる、このモンスターは食べられないという設定を萩原さんから頂いています。この『QUESTER』のゲーム世界では、人体に害のあるウィルスの蔓延と共に発生した天変地異によって、文明を維持できなくなった退廃未来の世界という設定です。そのため、食べ物が貴重になります。加えてこの世界にお金はありません。その代わりに「浄化燃料や資材」というものがあり、それが貴重品として流通しているという世界観です。それは、ゲームデザイナーの加藤ヒロノリさんの方から出てきたワードなんですけど、汚染されている世界だからこの「浄化燃料」を焚きながら、身を守って冒険しているのです。クラウドファンディングでリターンとしてマスクもつけているのも、そういった「汚染された世界」というテーマに沿っています。ちなみに、この世界には「魔法」はありません。科学文明は衰退してしまっているけれど、「火炎放射器」や「回復薬」「ドローン」は、かろうじてある。そういう世界観です。
「萩原一至デザイン」の魅力
ーー萩原一至さんによるデザインのキャラクターも個性的ですね。
それぞれのキャラクターの職業がまず面白いと思いました。「乱暴者」、「和尚」、そして「機動隊」などですからね(笑)。本当に萩原さんの設定はすごく考えられていて、ゲームに反映しきれていない部分を含めて、ここまで考えてコンテンツ作ってるんだなというのは改めて思いましたね。
萩原さんの設定資料は、画像を中心にして設定がびっしり書いてあるのです。このキャラクターは何を持ってるなどの情報が敷き詰められていて、とても詳細です。博士はドローンを使うんだとか、ジュラルミンケースが実は盾になっているなど、萩原さんの発信があってそれをゲームデザイナーが広げています。
また、この世界のモンスターは「何か」が欠落してるモンスターが多いのですよね。そういうマニアックな部分にも萩原さんのメッセージがこもっているのではと想像しています。
ーーゲームシステムについても教えてください。
先ず、1日の間に限られた活動限界があります。自分の拠点から旅をして、食料や資材を見つける事が、ゲームの根幹です。その上で、先ずは新しい拠点を見つけるのが旅の目的になります。東京の大きな都市、例えば大手町などが拠点になっています。そこを見つけると新しいベースキャンプになり、そこからまた新しい拠点を探す。「浄化燃料」を頼りに、そういう探索をしていくゲームになります。拠点が増えるとそれが点から線に広がり、どんどん探索できる範囲が広がっていく。そのようにして、手探りで見えないところを探っていくということが、ゲームシステムの根幹にあります。
ゲームの付録といえば「カセットテープ」!
ーークラウドファンディングを始められた理由はどんなところにあるのですか?
本当にコンセプトに興味を持ってくれている人の声を聞きたいというのが一番です。私たちが作るゲームに共感してくれる人の意見を最優先にしたいと思っています。このゲームは、誰もが、好きになって遊んでくれるゲームにはならないと思っています。(ゲームの進行上は)ストーリーもないわけだし、派手な演出もありませんから。もちろん資金的な部分もありますが、コンセプトガイドブックという設定資料を見ながら楽しむという部分も含めて、コンセプトに共感した人に提供したい。それが大事ですね。その思いで、本来ダウンロード型ではいらないゲームのパッケージや付録のカセットテープまで作ってます。必要ないかもしれないけれど、ゲームと言えばパッケージ、昔のパソコンゲームの付録と言えばやはりカセットテープでしょ!と思うので。
また、クラウドファンディングが目標額を達成したら開発期間を延ばすと宣言しています。まだまだ、詰め込みたいのです。ボリュームを増やすのか、グラフィックを強化するのかはまだ決めきれてはいませんが、目標達成を楽しみにしています。
クラウドファンディングのお高めなコースには、萩原先生が、申し込んでくださった方の要望を参考に新キャラクターを描き下ろしてくれるというリターンもあります。要望を出してくれた人の斜め上の方向性のキャラクターを萩原さんは描かれると私は妄想しています(笑)。そういった一筋縄では行かなそうな部分も楽しんでほしいです。
会社名をサウザンドゲームズにした理由
ーーファンの方はそのほうが嬉しいかもしれませんね。桑原さんはどんなゲームを目指されているのですか?
ゲーム性で勝負する作品にしたいですね。どこかを探索して、バトルをして強くなり、さらに強い敵に挑む。それが「ハックアンドスラッシュ」というゲームだと思うのですが、私たちのゲームもまさに「ハックアンドスラッシュ」です。萩原さんも、現代でもハクスラには可能性があると言ってくれているので、そこに特化したいなと思っています。そして、ナラティブなゲームを作りたいという思いもあります。ストーリーとか会話で進むゲームではなくて、設定があって想像しながら遊んでもらう。その想像は各個人で自由で絶対的な正解がないようなゲームです。その上で、できればボスを倒せば終わりではなくて、プレイヤーが勝手に目的を作ってずっと旅をできる。そんなゲームになるといいなと思います。
また、ゲームの流通方法も、雑誌プラス、シリアルコード販売のような形ができないかと考えています。もしくは、ゲームの攻略本やテーブルトークRPGのマニュアルのような形も挑戦したいと思っています。ゲームの中ではストーリーなどは語らず、雑誌やマニュアルを読んでみるとこういう設定があるのかと、だんだんわかってくるようなものがやってみたいですね。クラウドファンディングのリターンで、コンセプトガイドブックっていう表現を使っていますが、雑誌をリターンにつけて、モンスターデータ集、(キャラクターの)スキル集や、萩原さんや、ゲームデザイナー加藤さんのインタビューなど加えて、一冊の本や雑誌の形にしてゲームと一緒に楽しんでもらうということをやってみたいです。
そして、根本には、何度も遊べるゲームをしたいという気持ちがあります。会社名を”サウザンドゲームズ”にしたのも何回も遊べるゲームを目指したい。そういう気持ちが根本的にあるからなのです。
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