4月27日(水)、東京・銀座三越を皮切りに、『ジミー大西 画業30年記念作品展「POP OUT」』が全国を巡回し、開催される。1992年のテレビ番組の出演を機に、絵を描き始めたジミー大西。岡本太郎からの「キャンパスからはみ出せ」というアドバイスを胸に、いろんな展覧会や美術館を巡るほか、スペインへ移住するなどして、さまざまな作品を生み出す。その後、2015年に一旦休業したものの、2020年から再び創作活動を再開。新たな技法に挑戦し、これまでにない表現を探求し続けている。
今回の作品展では初期から海外移住までの作品に加えて、未発表の新作など展示予定。また、放送作家の高須光聖監修のアートにもチャレンジしたジミー大西に、画家としての活動を振り返ってもらった。
構成/竹村真奈 村上由恵(タイムマシンラボ)
取材・⽂/⾼本亜紀 撮影/⼤槻志穂
目次
■岡本太郎からのメッセージをきっかけに
――絵を描くようになったのは、幼かったIMALUさんと遊んでいたとき、明石家さんまさんから声をかけられたことがきっかけだったそうですね。
そうですね。IMALUちゃんとお絵描きしてたら、さんまさんから「お前、変わった絵描くなあ。(島田)紳助さんがオークションみたいなテレビ番組やってるから描いてみたらどうや?」って言われたんです。そう言うんやったらと描いた絵を『EXテレビ』(日本テレビ系)に出したら、岡本太郎先生からFAXで「キャンパスからはみ出せ」という手紙をいただいて。その言葉を模索しながら、どんどん絵を描くようになりました。太郎先生がピカソの絵を観て電車の中で涙したというエピソードを聞いて、上野の展覧会へ行ってピカソの絵を観たことも。ピカソって幼少期から絵の天才やと言われていたのに、なんでここまで崩しはるのかな? そこに太郎先生も惹かれたのかな? とかいろんなことを感じて、ピカソを追いかけるためにスペインへ移住もしました。太郎先生からの言葉がなければ、今まで絵を描いてなかったと思います。
――スペインでは、画家としていろいろな刺激を受けたのではないですか。
めちゃくちゃええ時間でした。バルセロナではやっぱりガウディが有名で、『サグラダ・ファミリア』の主任彫刻家をやってる外尾悦郎さんともお会いして、いろんなお話を聞きました。そこから、オブジェの制作にも取り掛かるようにもなりましたね。あと、ピカソ美術館にも行きましたけど、ピカソの絵には絶対にある場所にもかかわらず、サグラダ・ファミリアが描かれてなかったりするんですよ。これってガウディのことを意識してたからなんかな? どこかで嫉妬してたんかな? とか想像したりもして。『ゲルニカ』が観られたのもよかったですね。
■筆を折ってしまった理由
――そこまで真剣に取り組んでいた絵を、帰国後、辞めてしまったんですよね。
焼き鳥屋でアルバイトの時給1200円っていうのを見て、やっとられへんわ!と思ってしまったんです。さんまさんは僕が絵を描いてないのを知ってたはずなんですけど、5年くらいはなんにも言わなくて。で、あるとき、「ジミー、最近は絵を描いてんのか?」ってしらじらしく聞いてきたんです。僕が「(絵を描く時間をアルバイトの給料に換算したら)時給380円くらいやから、もう描きません」って言うたら、「人に喜んでもらうことを、時給計算したらいかん。芸人でも、人にたくさん喜んでもらってる人ってお金持ちやろ? 絵の世界もそうや。たくさんの人に描いた絵を観て喜んでもらったら、自分に返ってくるもんがあるんちゃうか。まあ、お前がどう思うかは勝手やけど」って言われて。
――さんまさんから言われてすぐ、絵を描き始めたと。
まず筆を買いに行きました。辞めてすぐ、筆をバキバキっと折ってしまったんでね(笑)。
■お笑いと一緒で挑戦していれば何かができあがる
――(笑)。再開後、描き方に変化はありましたか?
いろんな技法に挑戦するようになりました。これもさんまさんからなんですけど、「ウケるウケへんは別にして、スベるのも大事。人を喜ばせることに重点は置かなあかんけど、スベることも影響はある」って言われたので、挑戦していれば何かができあがると思って描き続けました。それに、世界中を回っていろんな絵を観て、ガウディ建築はもちろん、ティンガティンガ(アフリカ・タンザニア発祥のポップアート)の技法とかも学んだりしましたからね。
――世界を周って多くのアートに触れたことが、今の作品に活きているんですね。
そうですね。いろんな美術館を回ってみて思ったのはみんな、変わった目の描き方をしているなっていうこと。迫力ある絵って、目を上手に描いてあるんですよ。ダリとかもそうですよね。まあ、僕には合わないっていうか、ダリの絵を観て吐いてしまったことがありまして(笑)。あかんのです、ああいう万華鏡みたいな絵は。
――(笑)。それくらい、絵から強烈な何かを受け取られたんでしょうね。
はい、何か迫力を感じたんやと思います。
――作品展にあたって、改めて過去のご自身の作品について感じたことはありましたか?
スペイン時代は遊び過ぎたかなっていうのはありますねぇ。スペインにいた頃は、油絵をやってたんですけど、僕、(顔を触るため)鼻や目にできもんができるのでやめて、今はアクリルで描いてます。初期は水彩やったんですけど、今見るとめちゃくちゃシンプルですね。『THE 銀座』っていう絵は新作でまだ完成してないんですけど、描いてて目がおかしなりました。没頭も没頭! 58歳にして寝ないで描いたんは初めてでしたね。
『芸能界』(1994)
『ジャングルの眼』(1994)
『THE 銀座』(2022)
■これからは楽器に絵を描いてみたい
――今後はどんな絵を描いていきたいですか?
立体的にどんどん絵を描いていきたいなと思ってます。特に描いてみたいのは、楽器。例えばドラムのシンバルやなんやらいろんなところに全部、絵が入っていたら楽しそうじゃないですか。昔、高見沢さん(THE ALFEE)からギターに絵を描いてもらえないかってお願いされたんですけど、時間がなくて断ってしまったんですよ。だから、高見沢さんのギターにも描いてみたいですし、MISIAさんには『Jimmy〜アホみたいなホンマの話〜』(Netflix)の主題歌を歌ってもらったりもしたので、いろんなミュージシャンともコラボしていきたいですね。
ジミー大西
1964年1月1日生まれ、大阪府出身。1982年吉本興業に入社し、明石家さんまの運転手をしながら活動。1992年、テレビ番組の企画で絵画を発表したことをきっかけに、翌年初めて個展を開き、本格的に画家としての活動を始める。1996年画家に転向し、スペインへ移住。世界各国を周るも2015年に休筆。2020年に画家としての活動を再開し、現在バラエティ番組など芸人としての活動と並行して活躍中。2022年4月27日~5月9日東京・銀座三越にて『ジミー大西 画業30年記念作品展「POP OUT」』がスタート。その後2023年まで全国各地で開催予定。
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