小栗旬「そんな感じのファミリー像です」【『鎌倉殿の13人』ドラマをもっと楽しむための舞台研究<三島・伊豆編>5日連続特集第1回】

いよいよはじまった大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。第1回の放送に合わせてイベント「大河ドラマ『鎌倉殿の 13 人』グランドプレミアin 伊豆の国」が行われた。主人公・北条義時役の小栗旬をはじめとして、源頼朝役・大泉洋、父・北条時政役・坂東彌十郎、兄・宗時役・片岡愛之助、姉・政子役・小池栄子、妹・実衣役・宮澤エマと一緒に第1回『大いなる小競り合い』を観るパブリックビューイングの企画である。彼ら北条ファミリーが北条の里のあった伊豆の国に勢揃いする機会はこれが最初で最後と聞いて、テレビブロスも取材に馳せ参じた。

せっかくだからと『鎌倉殿』の聖地もいくつか周って来たので、ドラマをもっと楽しむための舞台研究として全5回でご紹介しながら、『鎌倉殿』の今後の展開を考察していきたい。

第1回は主として北条ファミリーの会見ルポをお届けします。

取材・文/木俣冬 撮影/ツダヒロキ

『鎌倉殿の13人』ドラマをもっと楽しむための舞台研究<三島・伊豆編>5日連続特集 記事一覧

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「鎌倉殿の13万人!」

パブリックビューイングの前に、出演俳優たちの会見が行われた。場所はなんとお座敷。縦に長い大宴会場のようなところで、記者たちは座布団に座ることになった。温泉まんじゅうまでもらえた。伊豆は、熱海を筆頭に温泉が有名で、ここ伊豆の国市にも温泉宿が点在している。「頼朝の湯」なんて名前のついた宿もあった。

お座敷で座って待っていると、出演者たちが登壇。マイクが用意されているのを見て小栗は「地声で届くんじゃない?」と言い出した。さすが舞台俳優でもある小栗旬だと思ったが、筆者はあえて後ろに座っていたので聞こえなかったらどうしようとそわそわ(彼の発声を信じてないわけではないのだが)。「テレビカメラが入っているので」と広報スタッフに言われ小栗は「ああ」とナットクし、マイクを持って「この日を迎えられたことを非常にうれしく思っております」と挨拶した。

続いて、小池、片岡、坂東、宮澤が第1話の放送前の胸の高鳴りを語る。最後は大泉で、「東京から来られた方はいるんですか? 伊豆の皆さんも?(何人か手をあげる記者を見て)地元の方ですかそうですか。地元の方はあれですが、東京から来てくれた方はね、なんで来る気持ちに(笑)。なんでってことはないですが、内心ね、東京でやってもらいたかったなと思っている方もいるんじゃないかと」とブラックユーモアをふりまいた。だが「いいですよね、伊豆に来られて」とフォローも忘れないのが大泉らしい。さらに、ツイッターのフォロワー数が13万人を突破して「鎌倉殿の13万人!」と場を盛り上げた。

会見では大泉演じる頼朝が北条ファミリー扱いされなかったり、頼朝が「いやなやつ」だといじられたり。由緒ある源氏が伊豆の豪族にかかるとかたなし。三谷幸喜が、「サザエさん」に例えると、カツオ(義時)がタラちゃん(源実朝)を滅ぼすことでフグ田家(源)が滅亡し、磯野家の鎌倉時代ができるというような物語(大意)と事前に語っていたことが着々と現実味を帯びて来ている感じがするのだった。

小栗「三谷幸喜さんの脚本がそう書かれているからですが、やなやつですよ」

小池「カリスマ性はね(あるけれど)」

小栗「なんで僕(義時)に対してそういう言い方するのかっていうところがいっぱい出てくるんですよね」

小池「父上(義政)は認めていらっしゃいますよね」

坂東「まあ表向きはね(笑)」

宮澤「それを言うんだったら、実衣が一番ストレートに『あの人のなにがいいの?』って姉上(政子)に聞いちゃっているので。(ファミリーの中で)実衣が頼朝を最も理解できていないんですよね」

坂東「父としては『わりといいやつだったな』って言っていますよ」

片岡「僕(宗時)は一番信じて頼朝を匿いますが、なかなか賛同してくれないんですよね」

小栗「兄上(宗時)も途中で言いますよね、今日は第1回に関する取材会ですが、ゆくゆく『源氏なんてどうだっていいんだ』って言うんですよね(笑)」

片岡「そうなんですよ、ぽろっと言っちゃうですよね、利用しているだけだって(笑)」

小栗「そんな感じのファミリー像です」

脚本上では、北条ファミリーと頼朝の間にはいろいろありそうだが、俳優同士はとても息が合っていていい雰囲気を作っていた。実際、第1回『大いなる小競り合い』を観ると、それぞれのキャラが立っていて、やりとりがとても生き生きしている。喧嘩好きそうなやんちゃな時政と宗時。頼朝に夢中な政子。彼らにハラハラしている義時。ちゃっかりしている実衣。

雅な雰囲気をまとい魅力的だが、何を考えているのかつかみどころのない頼朝。義時は大好きな八重姫(新垣結衣)を頼朝に奪われて面白くない。わりとマイペースな彼らがやがて一丸となって天下を取りに打って出る。歴史の結果はわかっているが、三谷幸喜の脚本はそれぞれの人物描写を細かく描いて面白いものになるだろう。

演技に好影響
当時を感じられる地でのロケ

さて。せっかくゆかりの地での会見。北条の里のロケは実際に里のあった近くでロケを行ったそうで、ゆかりの土地の印象やそういう場での演技体験が何をもたらすか。そんなことにも話は及んだ。

 

小栗「事前にこの地を周りましたが、実際、北条の里があった場所の近くに似たような雰囲気の北条の里を作ってもらってロケを行ったので、知らない場所をいろいろ想像する必要がなく、きっとこういうところで過ごしていたんじゃないかなあということを身近に感じることができました。もちろんドラマで描かれている時代から900年以上経って、風景もまるで変わっているでしょうけれど、ちょっと歩けば、いろいろなゆかりの地があって、そういう環境にはとても助けられました」

小池「女性陣は家の中で男性陣を待っている場面が多く、私は伊豆ロケには3日くらいしか参加していないのですが、出来た映像を見て、うらやましく思いました。やっぱりロケの空気感には助けられることが多いですから、もっとロケに来たいです」

片岡「宗時はお墓がなく供養塔があります。事前にそこに伺い、宗時はこういうところの空気を吸って育ってきたのだと感じ、自然体で撮影に入ることができました」

宮澤「私も姉上と同じでロケが少ないのですが、実際自然のなかで撮影していますと、『鎌倉殿の13人』は自然の中で生活した豪族の話なのだということが理解できます。なにもないけど自然はある。そんなところで生まれ育った人々が突如、日本を揺るがす政局に巻き込まれていく。そのギャップをおもしろく感じました。兄上たちが馬に乗って帰って来て、馬から下りて家の中に入るとき、『ちゃんと足を拭いてくださいね!』というセリフがありますが、自然を見ていると、その生活感が実感でき、この時代の人達に親近感が沸きます。今、目にしている山々はきっと、あの頃も見えていた山だと思いますし、地続きなんですよね」

坂東「時政の墓には3回も行きました。それと北条家の屋敷跡にも何度も伺い、いまではそこを『僕んち』と呼んで、地元感を抱いています(笑)」

大泉「登場人物の生きていた場所に来ることができることは何よりありがたいです。これくらいの距離感で闘っていたんだなとか、その想いを胸に演じることができます。『鎌倉殿』をきっかけに伊豆にいらっしゃる方も、ドラマに出てきた道はこんなところなのかなと感じてもらえる場所があると思います」

地元の人たちに『鎌倉殿』にまつわる地元情報をSNSで発信してほしいと呼びかける出演者たち。

ブロス取材班は地元民でもないのに、伊豆ビギナーなのに、『鎌倉殿の聖地』を紹介してしまうぞ。三島の最大パワースポットに迫る第2回に続く。

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