日本社会を照射した、胸アツ社会派ドラマの傑作『新聞記者』が、いよいよ配信開始!

Netflixシリーズ『新聞記者』が、1月13日(木)、いよいよ配信開始!
現在発売中の「TV Bros.2月号 年末年始オススメコンテンツ号」では出演する米倉涼子、綾野剛、横浜流星の3名を表紙に迎え、3名のグラビア・インタビューと、映画版からの続投となった藤井道人監督の作品に込めた思いを掲載している。
今回は、上記4名にインタビューしたライターが本作の見どころをさらに詳しくご紹介。
3連休も明けていよいよ(気持ち的に)スタートする2022年を骨太のコンテンツで開幕したい方、ぜひ。

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『新聞記者』
Netflixシリーズ
2022年1月13日(木)、Netflixにて全世界同時独占配信
監督/藤井道人 脚本/山田能龍 小寺和久 藤井道人
出演/米倉涼子 綾野剛 横浜流星 吉岡秀隆 寺島しのぶ 吹越満 田口トモロヲ 大倉孝二 田中哲司 萩原聖人 柄本時生 土村芳 小野花梨 橋本じゅん でんでん ユースケ・サンタマリア 佐野史郎
(2021/日本/全6話/制作プロダクション:スターサンズ)
●2019年に大ヒットした映画『新聞記者』のドラマ化。東都新聞社会部記者・松田杏奈(米倉涼子)は、ある国有地払い下げ問題を取材していた。だがその証拠隠蔽のため、公文書改ざん行為も発覚する。そして隠蔽作業に関わったと思われる職員(吉岡秀隆)に松田はコンタクトを取るが、その後、彼が自らの命を絶ってしまう。彼の無念と遺志を感じた松田は真相究明に乗り出し、彼の妻(寺島忍)を訪ねるが――。国有地払い下げ問題に関係する官僚・村上(綾野剛)、新聞配達をしながら大学に通う就活生・亮(横浜流星)らも、それぞれの場所で必死に生き抜こうとしていた。

<プロフィール>
折田千鶴子(映画ライター)

おりた・ちづこ●栃木県生まれ。映画ライター、映画評論家。「TV Bros.」のほか、雑誌、ウェブ、映画パンフレットなどで映画レビュー、インタビュー記事、コラムを執筆。TV Bros.とは全くテイストの違う女性誌LEEのWeb版で「折田千鶴子のカルチャーナビ・アネックス」(https://lee.hpplus.jp/feature/193)を不定期連載中。

日本社会を照射した、胸アツ社会派ドラマの傑作

文/折田千鶴子

本作のどこかに必ず「自分」を発見する、とっても近しい物語

 これはもう日本中、声を掛け合って観て欲しい渾身作だ。特に、日ごろ政治に興味を感じていない人たちには、マストで声掛けをお願いしたい。社会派だが決してお堅い話じゃなく、本作のどこかに必ず「自分」を発見する、とっても近しい物語。観れば社会不正がどう起きて、どんな風に隠蔽され、真実が潰されていくのか、社会の仕組みがよく分かると同時に、とにかく感情を揺さぶられる、(これが一番の強み!)すっごい面白さだから。
 しかも米倉涼子、綾野剛、横浜流星という今をときめく3人が、素晴らしく味わい深い演技を見せる。いつもは華のある3人がそれを封印し、3つの物語の軸をそれぞれ一つずつガシッと担って屋台骨になりつつ、舞台上でも見応えのあるパフォーマンスを披露する、みたいな感じ。作り手たちの熱量が、画面からあふれ出して観る者を瞬く間に引き込んでくれる。

 

 既に誰もが知るように、当シリーズは2019年に公開された映画『新聞記者』のドラマ版だ。しかし単なる焼き直しではない。シリーズものという長尺を生かし、膨大な人物を登場させ、より多角的に、そして設定もさらに現実の事件に即して近づけ、より各人の心情や事情を掘り下げて肉薄していく。キャストを一新したのも、英断だ。政治色の強い映画は当たらない日本で、成否が分からぬ作品に飛び込んで主演を担った松坂桃李、シム・ウンギョンの勇気と熱演も素晴らしいし、映画のラストシーン、松坂桃李演じる若き官僚の死んだような暗い目がいつまでも印象に残る。ここで演者を変えたことで、そういう映画独自の記憶や印象が、ハッキリ本作とは別物として残るからだ。
 その上で、ドラマのオフィシャル資料が自負するように、“衝撃の問題作がさらにスケールアップ”した本作は、監督を続投した藤井道人自身が「映画で個人的にやり残したことがあった」と語る、その部分が補完されたディレクターズ完全版とも言えるだろう。個人的には正直、映画版で“食い足りない”と感じた感触も完全に払拭された。大ヒット、且つ高く評価された(日本アカデミー賞3冠達成、その他でも賞を受賞)映画版を、本シリーズは確実に凌いでいると(勝手に)断言しよう。

「“声なき声”をいかにドラマですくい取れるかが、自分にとってはすごく大事なテーマだった」

 物語のベースとなるのは、先日賠償金支払いを認めて裁判を打ち切り、真相解明を封印するという暴挙に出た、“不当な国有地払い下げ”⇒“証拠隠滅の文書改ざん”⇒“改ざんを強いられた職員の自殺”をめぐる一連の事件。膨大な人間が複雑に関わるこの事件を、本作は、メディア(報道)、権力(政治)、市井(庶民)の3つの視点から追い、映し出していく。米倉涼子が演じるのは、不屈のジャーナリスト・松田杏奈。綾野剛が演じるのは、国有地払い下げに関わる若手官僚・村上真一。そして、ドラマで新たに加わった“市井の視点”を担う横浜流星は、新聞配達をしながら大学に通う就活生・木下亮。この3者の3つの視点が物語としても少しずつ交わっていくことで、新たなドラマや発見が生み出されていく展開が上手い。

 中でも横浜が演じる木下亮の絡め方が秀逸だ。新聞配達をしながら、新聞を読んでもいなかった亮が、あることを機に変わりはじめ、社会に目を向け成長していく姿は、この題材にして爽やかな感動まで与えてくれる。米倉もインタビューで、「フとした瞬間にのしかかった事件から、亮が人生を掴んでいくまでの流れが、6話でこんな風に追いかけていけるのかと、すごく印象に残った」と語っている。しかも新聞配達所内の人間関係が、懐かしい肌触りで実に温かい。亮とは対照的に就活を熱心にしてきたバイト仲間が、皮肉にもコロナ禍で運命を振り回される姿も、胸が痛くて直視できないほど。なるほど誰も社会とは無関係では生きられない。だから、声を上げるべきなのだ。今の日本に生きる色んな人々のエピソードが、本題を損なうことなくいくつもサラリと描き込まれる。藤井が「脚本開発は本当に長い旅でした」とため息を吐くのも非常に納得の、相当に練り込まれた脚本であることがうかがえる。

 一方で、ジャーナリストの松田と自殺した職員の妻(寺島しのぶ)との関係や、やがて事件に立ち向かって共闘するに至るまでが、非常に繊細に描き出される。若き官僚・村上も含め、それぞれの人間の職場や家庭・家族内の人間関係がサラリと描き込まれ、よりドラマに厚みを持たせている。そう、硬派なのに非常に“繊細”。それは藤井が、「“声なき声”をいかにドラマですくい取れるかが、自分にとってはすごく大事なテーマだった」と語るように、そのテーマを米倉演じる松田に背負わせながら、2人でそれを大切にしながら本作を紡いだことに拠るだろう。

 回を重ねるごとに、先を知りたいと急く気持ちが募り、ドラマのテンポを視聴者が自ら上げていく効果も生み出しながら、松田は伏魔殿の権力側にどう立ち向かっていくのか。そして現実では硬直状態にある事件の真相解明、自殺した職員の無念と矜持、その妻の思いは、ドラマでは報われるのか否か。それは観てのお楽しみだが、最後「観て良かった!」とウルウルしながら胸がジンと熱くなる感動をお約束。
 是非、集中できる状態で観始めてください。ちなみに、内調の上司を演じる田中哲司だけは、映画からの唯一の続投。相変わらず上手いので、不気味で怖いっす!!

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