ヒッチ作品の魅力が詰まった初期作品『三十九夜』平松禎史 第2回【連載 アニメ人、オレの映画3本】

大人気シリーズ『呪術廻戦』の総作画監督&キャラクターデザイン等で活躍中のアニメーター&演出家、平松禎史さん。1回目は『未知との遭遇』について語って頂きました。果たして2回目となる今回は?

取材・文/渡辺麻紀

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<プロフィール>
1963年生まれ、愛知県出身。アニメーター、アニメ演出家。1987年に『ミスター味っ子』(テレビ東京系)で原画デビュー。『ふしぎの海のナディア』(1990~1991年/NHK総合)第11話「ノーチラス号の新入生」で初の作画監督を務めた。
最近の主な参加作品に『寄生獣 セイの格率』(2014~2015年/日本テレビ系)、『ユーリ!!! on ICE』(2016年/テレビ朝日ほか)、映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018年)、『呪術廻戦』(2020、2023年/MBSほか)など。現在は、岡田麿里監督『アリスとテレスのまぼろし工場』に副監督として参加中。

喋り出すと止まらないのがヒッチコック映画なんですよね(笑)

――平松さん、では2本目をお願いします!

平松 (アルフレッド・)ヒッチコックの『三十九夜』(1935年)です。彼がまだイギリスで撮っていた時代の代表作。小粒ですが、ヒッチらしいアイデアがたくさん詰まっている。

彼が得意とする巻き込まれ型のサスペンスで、外交官が休暇でロンドンに帰国していたときスパイ事件に巻き込まれる。ミュージックホールで出会った女性をひと晩泊めることになるんですが、彼女は軍の機密が盗まれようとしていて、その手掛かりは“39階段”だという。半信半疑だった外交官だけれど翌朝、彼女は殺されていて、自分が犯人に仕立てられていた‥‥というストーリーですね。ヒッチコックはこのあと『逃走迷路』(1942年)や『北北西に進路を取れ』(1959年)等、同じスタイルのサスペンスを撮っていますが、その元祖と言っていいと思います。

――ヒッチコックの円熟期の作品じゃないところから選んだ理由は何かあるんですか?

平松 ヒッチコックの作品はやはり代表的なものから観ているんですよ。『北北西に進路を取れ』や『サイコ』(1960年)、『裏窓』(1954年)、『めまい』(1958年)等、いわゆる彼の代表作。そういうのを観たあと初期の作品に遡ったら、何とヒッチ作品の魅力がすでにここに詰まっていたという感じ。原点を見つけた面白さがあった。

――とりわけ『三十九夜』には、のちにヒッチコックのスタイルとなる要素の片鱗が散りばめられていますからね。

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