アイドルではなく、アイドルの「人間ドラマ」を描きたい。KONAMIが手掛ける王道アイドルゲーム「シャインポスト Be Your アイドル!」

「誰かが嘘をつくと輝いて見える」というチート能力欲しいですか?そんな特技を持つ芸能マネージャーを主人公にしたアイドルゲームを、あの「ラブプラス」のディレクターが作成中?そんなニュースを聞きつけて、東京ゲームショウ2022(以下、TGS2022)のKONAMIブースに編集部が突撃した!

そのゲームこそが『シャインポスト Be Your アイドル!』。小説、アニメ、音楽、LIVEなどとのメディアミックスとして進んでいる一大プロジェクトだ。TGS2022でも「ラブライブ!」で「矢澤にこ」を演じた徳井青空やアイドルグループ「≠ME」の櫻井ももなどが、ゲームに登場予定の新しいアイドルユニット「ひまわりシンフォニー」として参加することも発表され、話題を呼んでいた。そのプロデューサーであり「ラブプラス」(※注1)でもディレクターを勤めた石原氏に話を聞いた。


(※注1・ラブプラス 2009年にニンテンドーDS向けに発売された「コミュニケーションゲーム」。ゲームに登場する3人のヒロインのいずれか1人と恋人同士になり、現実の時間や季節に合わせたリアルタイムの「恋愛生活」を体験できるゲーム。「攻略すれば終わり」ではなく、恋人となってからの毎日がエンドレスで続く構成が熱心なファンを産んだ。また、タッチパネルやマイクなどニンテンドーDSおよび3DSの機能を活かした、デート中にスキンシップを取る·ヒロインに話しかける等のコミュニケーション機能も大きな特徴だった。)

取材・文/TV Bros.編集部

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アイドルという分野を再構築したい

ーーどのようなきっかけでこのプロジェクトを始められたのですか?

元々メディアミックスに興味があったことが一つです。同時に、僕自身がオリジナルのゲームを作ることが好きなので、また久々に立ち上げたいなと思っていました。

ただ、年々ゲーム作品を完全オリジナルの単体作品として立ち上げるのが難しくなってきていることも感じ、何か方法がないかと考えていました。そんなタイミングでメディアミックスを多数手掛けてきた元KADOKAWAの三木一馬さんが独立することになり、一緒に何か新しい企画をやらないかとお声がけいただきました。そんなきっかけで企画が立ち上がったのが、もう6年前の話です。その作品をやっと世の中に出すことができたのが今という状況です。

メディアミックスをやるにあたって、アイドルという分野を分解して再構築したいと思っていました。リアルなアイドルが好きで、特に「ももいろクローバーZ」が好きでした。Zがつく前の「ももいろクローバー」時代からずっと観ていまして、そこから国立競技場2DAYSまで全国ツアーの遠征含め、多くの大小ライブの現場に通いました。現在、アイドルのゲーム自体はたくさんありますが、私が現場で感じたアイドルの魅力をコンテンツの中核に置いたゲーム作品はありませんでした。そのため、自分が実感したアイドルの魅力をシンプルに形にすれば、ありそうでなかったコンテンツができるのではないかと思い、企画を進めていきました。

実際に出来上がった作品群は、王道と言える作品になったのではないかと思います。お客様の反応を見ていると、アイドル文化に触れた経験のある人は特に楽しんでくれているようです。データ的にも作品に触れてくれた人の多くに満足していただけているようです。一方、課題は届いていないことです。オリジナルは届けるのが本当に大変だなと感じています。

今は「ラブプラス」を開発した頃に似ている。

なんだか私は今の状況が、「ラブプラス」の開発を行なっていた状況に似ているのかなと思うことがあります。

ーー「ラブプラス」自体が見たことの無いような新しいプロジェクトでしたね。

「ラブプラス」は、これゲームなの?というのが最初の反響でした。コンセプトは面白いし、斬新なのだけどエンディングも無い。この作品をどう捉えればいいか分からないと周囲からは言われていました。そのたびに、「これは生活なんです、人生なんです」そう説明していました。けれど、「斬新だけどそれだけでは売れないんじゃないか」と理解してもらえないこともありました。そんな中、テストプレイやいろんな展示会に出展すると、お客さんにはこれはすごい!と大きな反応と応援をいただける。そんな黎明期に気づいていただいた人たちの中でワッと盛り上がり始めた実感がありました。『シャインポスト』は、テレビアニメも放映していますが、現在アニメの作品数自体がかなり多く、放映するだけだとなかなか観てもらえません。そのため、アニメをやってることをプロモーションするという二重プロモーションが必要になってきますが、今の時点ではそこまでやっていません。それでも、見てくれた人は応援してくれています。僕自身より見た人が積極的に応援してくれる上に、周囲に広めてくれます。この流れを「ラブプラス」の頃のようだなと感じています。まだ立ち上げたばかりなのであそこまでブレイクするかわからないけれど、参加してくれているクリエイターが凄まじい熱量で作ってくれているのでコンテンツの質には自信があります。

参加している豪華音楽製作陣

音楽は、「ラブライブ!」『μ’s』(ミューズ)のプロデューサー木皿陽平さんにお願いしています。お願いに伺った時に「最後発なので、今の市場にはあまり見かけないアイドルを作りたい」という話をしたところ、そこにシンパシーを感じてもらいました。アイドルの系譜を非常に大まかにお話しすると「松田聖子」、「中森明菜」などのソロアイドルが中心の時代から、「モーニング娘。」などのグループアイドル中心の時代を経て、今は、秋元康さんが広めた「会いに行けるアイドル」というライブアイドルが中心の時代になっているのではないかと思います。そう考えると、今のアイドルは昭和のアイドル文化とはまた違った進化を遂げているのではないかというお話を木皿さんにさせていただきました。そこでもし、昭和のソロアイドルの文化が、そのまま正統進化していたらどうなっていたのだろうか?というコンセプトで曲を作ってみるのも面白いのではというご提案を木皿さんにいただきました。さらに木皿さんがいつかお仕事をしてみたいと熱望されていた、「中森明菜」や「薬師丸ひろこ」の楽曲を手がけられていた来生たかおさんにも企画に参加してほしいとお話をもちかけてくださったり、より新しい要素も加えた楽曲にしたいということで「クラムボン」のミトさんに編曲で参加してもらいたいというアイディアもいただきました。お話をお伺いした時にビッグネームが続くので只々驚きました。他には、「フィロソフィーのダンス」の曲も手がけた宮野弦士さんにもご参加いただいています。

木皿さんの中にはこういうチャレンジしたいという明確なビジョンがあるのだと思います。それは「ラブライブ!」でアニソンは全力でやり切ったので、アイドルコンテンツの音楽のトレンドを再定義したいという思いなのではないかと思っています。今のアイドルソングはライブで乗れることが前提になっています。そのため、コールを入れられる間であったり、乗りやすいビートだったりいくつもの暗黙の制約がある。それを壊して新しいトレンドを作りたいという思いがあるのではないかと思います。

ーー以前の企画が成功すると同じものを求められるということは石原さんもあったのではないですか?

「ラブプラス」みたいなものを作って欲しいという依頼はありました。けれど、僕自身過去やジャンルにはこだわらないゲーム作りを心掛けてきました。

16年前に『Elebits』というゲームを作りました。ファーストパーソンビューのかくれんぼとシューティングを組み合わせたゲームです(今のFPSのようなゲーム)。全てを物理演算制御していて、画面に見えているありとあらゆるオブジェクト(柱など)を持てるゲームでした。今でこそ、PUBGや荒野行動でFPSのゲームは大人気ですが、当時は国内にはファーストパーソンビューのゲームがなかったので、国内外でいくつも賞はいただいたのですが、なかなか売れませんでした。「なんでゲーム画面にキャラクターがいないの?」などとも言われました。それでも、面白いものを実現したいというものにどうしても私は走っちゃうんですよね。

アイドルも市場は大きいけど、既存のコンテンツが市場でまだまだ元気なのでレッドオーシャンで、参入できる市場じゃないと言われました。ですが、アイドルの魅力はまだまだ語れると周囲を説得して今回のプロジェクトも進めています。小説やアニメなどのコンテンツに触れていただいたり、いずれゲームをプレイしていただくと差別化されていることがわかってもらえると思います。

ライブの熱狂を、どうしても再現したい

ーーゲーム中のライブの画面がとてもリアルですね。

僕が実際のライブの会場で観た光景をゲーム中でも再現したかったのです。実際の会場でライブを見る際には、自分の前にいるお客さんの背中を見ながらライブを見ることが多いと思います。まさにその風景を再現する必要があったので、お客さんのキャラクターの描画もポリゴンではない方法で描画しています。なぜなら、従来のポリゴンモデルのお客さんを描画するとスマートフォンの機種によっては処理が追いつかないからです。そのため新しい技術を使ってそれを制御しています。現在は動きの制御もできるお客さんのキャラクターを最大30,000人くらいは画面中に出すことができます。

「シャインポスト Be Your アイドル!」は、私、アイドルになる!と決めた少女たちが、トップアイドルになるまでの物語です。なので、最初はそもそもファンがいません。まずは、ファンを呼んで会場を埋める。次に、会場に来てくれたお客さんが盛り上がってくれる。そのようないくつもの段階を経て、トップアイドルを目指していきます。ゲーム内でも、最初はお客さんがライブに来てくれても盛り上がっていなかったりします。育成がうまく行けばライブで盛り上がってはくれる。でも、サイリウムは振ってくれない。それがさらにファンになってくれると、盛り上がりながらサイリウムを推しの色に変えてくれる。そのような変化をお客さんにさせています。お客さん自体は黒いシルエットで表現されていますが、人格を感じる集団にしたかったのです。

またライブハウスの熱狂は、観客の熱狂とステージ上のパフォーマンスが合わさって実現するものだと思っています。僕もアイドルが小さな会場から、大きなスタジアムクラスの会場でライブをするまでの変化を見ています。そのため、あの時、あの場所で見た景色を再現したいという強い気持ちがあります。なので、「コニファーフォレスト」、「日比谷公園大音楽堂」(日比谷野音)などの会場に作品中の使用許可をもらいに行きました。とある会場さんには、ちゃんと許諾取りに来た人初めてですよと言われました(笑)。既に、15ー16箇所は許諾してもらいました。これからも増やす予定です。その中には、(今は無くなってしまった)新木場の「STUDIO COAST」も入ってますし、(建て替えが予定されている)「中野サンプラザ」も入っています。許諾をいただきに伺ったら「実は、もう無くなってしまうんです」と言われたライブハウスもありましたが、「自分が昔通っていた場所を、ゲームの中に永遠に残したい」とお話したら快く許諾いただけました。

多くの人がアイドルだけでなく、様々なミュージシャンのライブで訪れたライブ会場に忘れられない思い出があるのではいかと思います。それを思い出してくれるだけで、作った甲斐があるなと思います。現在は配信もたくさんあるので、会場に行かなくてもライブは観ることができます。それでも、実際に会場でライブを見るとこれは別物だなと思うのではないでしょうか。何故そう思うのかと言えば、それは会場が持っている歴史だったり、小さな会場からスタートした私達の「推し」が、今、「野音」に来た、「中野サンプラザ」まで来た。それを私たちはずっと見守ってきた。たとえばそんなふうに、そんなライブに参加する個々人が自分だけのドラマを持っているからじゃないでしょうか。

「シャインポスト Be Your アイドル!」ではそんな自分だけのドラマを再現できるゲームシステムを目指しています。だからこれは、音楽ゲームでもないです。やっとここまできた。ここに来るまで紆余曲折があったよね。そんな想いや、何かを目指したけれど上手く行かなかったり、逆にすごく成長したなどの人間ドラマをゲームのデザインにしたかったのです。

—現在放映中の「シャインポスト」のアニメについても教えてください。

TINGS(※注2)マネージャーである日生直輝の「誰かが嘘をつくと輝いて見える」という能力設定は今回のノベライズを手がけている駱駝さんが考えてくださったのですが、最初便利だなと思いました。でも、実際にも人の嘘に気づく人っているじゃないですか。目線や態度などで推理しているのかなと思うのですが。それと同じくらいの、実はそこまで特別ではない能力なのです。何故なら嘘をついていることを分かっても、それだけでは本音は何なのかはわからず、解決出来ないからです。そんなあまり強い能力ではないのですが、物語の謎解きのスイッチを入れることができます。つまり、物語を謎解きのシーンに進めることができる。一見ファンタジーな異能力のように見えますが、実はこの物語のミステリー部分をわかりやすくしてくれる能力なのです。なぜ嘘をついてるかを遠回しに聞いたり、別の質問をして嘘をついているか確かめたり。そんな人間関係をミステリー要素のギミックとして入れています。アニメも見ていただくとわかるのですが問題解決としては、機能してないなと思います(笑)。ただ、この能力のおかげで視聴者とマネージャーが同じ目線になれる。つまり視聴者とマネージャーが嘘だと同じタイミングでわかるのです。そのおかげで物語の展開が早くなりますね。

(※注2・TINGS 「シャインポスト」作中の芸能事務所「ブライテスト」所属のアイドルグループ。)

ーー最後にTV Bros.の読者に伝えたいことはありますか?

私は「シャインポスト」でアイドルを描きたかったのではなくてアイドルの人間ドラマを描きたかったのです。アイドルも、甲子園も、プロレスも、全部一緒だと思うんです。何故なら、ひとりの人間が何者かになりたくて足掻き続けて、そしてその夢を叶えたり、時に叶わなかったりする。その過程の中で描かれるヒューマンドラマだから普遍性があって魅力的だと思うのです。アイドルに興味のない方にもヒューマンドラマとして見て欲しいです。今までありそうでなかった、決してスマートではなく、時代にも逆行したシナリオになっているのですが、その分、心に何か残るテーマ性があるストーリーになっていると思います。ゲームもそのようなシステムになっているのでぜひ楽しみにしてください。アイドル物にあまり興味が無い方にも、ぜひ見てほしいと思っています。小説、アニメ、楽曲などのジャンルからでも構いませんので「シャインポスト」に触れていただけたら嬉しいです!

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