若者と交流する多世代型アパートの暮らしとは? 高齢者向け住居の新時代【TV Bros.2023年10月号】

65歳以上が人口の4 人に1人を占めている現在の日本。これからさらに高齢化が進むと言われている中で、高齢者の住居の新しい形として注目を集めているのが、神奈川県藤沢市にあるアパート「ノビシロハウス亀井野」だ。若者は「ソーシャルワーカー」として、日常的に声かけやお茶会など通して高齢者をサポートし、高齢者は若者との交流があることで安心して生活することができる。そんな多世代交流型の住居「ノビシロハウス亀井野」を運営する株式会社ノビシロの代表取締役・鮎川沙代さんに取り組みについて聞いた。

取材・文/依知川亜希子 写真提供/株式会社ノビシロ


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「ノビシロハウス亀井野」とは?
神奈川県藤沢市、六会日大前駅から徒歩7分ほどの場所にあるアパート。住居棟の1階には高齢者が住み、2階の入居者は家賃が半額になる代わりに、「声かけ」や月に1回の「お茶会」などを通して、ソーシャルワーカーとして高齢者のサポートを行う。

お話を聞いたのは…
株式会社ノビシロ 代表取締役 鮎川沙代さん 
1982年佐賀生まれ。東日本大震災を契機に上京し、2012 年に株式会社エドボンド代表取締役に就任。10 年以上不動産仲介業に取り組む。その後、「高齢になるとお金があっても家が借りられない」という社会課題を解決すべく、2019 年に株式会社ノビシロを創業。2021 年、「ノビシロハウス亀井野」をオープン。

入居を断わられる高齢者
一人暮らしをしやすい社会に

――高齢者と若者が交流し、支え合いながら暮らす多世代交流型アパート「ノビシロハウス亀井野」を手がけるに至った経緯は?
  
 私は2012年に賃貸仲介の会社を創業して、賃貸をメインに、お部屋を探して紹介する仕事をしていました。私の会社ではご高齢の方だけでなく、外国籍や特殊な職業に就かれているの方々がさまざまな理由で部屋を貸してもらいにくいところを、工夫をして、ご希望に沿うようなお部屋をご紹介していたんですね。そうしてマイノリティの方々の案件に対応させていただくことが増えていく中で、特にご高齢の方が年齢で断られてしまうことに仲介業者としての最適解が見つからないなと感じていました。一人暮らしをしたい高齢者は多いのに、賃貸業界が断っている現状なんですね。これからもっと少子高齢社会になっていく中で、高齢者が一人暮らしをしやすい社会を作りたいと思ったのがきっかけです。

 ―― 高齢者が賃貸住宅を借りるのは大変なんですね。  

 孤独死されると困るとか、認知症や重い病気になってしまうと周りに迷惑がかかるとか、実際にそういう出来事があって嫌な思いをしたとか……高齢者を断る理由がオーナーさんにはあって、それが業界に根付いているんです。それでも私は、原因が明確であれば新サービスでより良い仕組みが作れそうな気がしていました。だけど、実際に高齢者の方がどんな暮らしをしたいのか、認知症が進んで介護が必要になった時に一人暮らしが続けられるのか、どんな人生の最期を迎えたいのか。私の中で全くイメージがついていなかったので、その状態で「ここを終の棲家にしてください」なんて絶対に言えない。まずはそこを知ろうと思って、介護事業所「あおいけあ」の代表であり、後に弊社の役員になる加藤忠相に会いに行ったんです。

社会実験的とも言える
“若者は半額”の家賃設定

――「あおいけあ」の加藤さんは、これまでの常識を覆す介護を実践して、海外からも注目されていますね。どんなことを学びましたか?
  
 人はどう亡くなるのか、その過程で介護事業所は何をやるのかということや、家に暮らしながら施設を利用している高齢者のことなどを質問しました。さらに私の思いを伝えたら、「できることは協力するよ」と言ってもらえたんです。せっかく協力してもらえるなら、他にもいろんなことを知った上で新サービス等の形にするのが良いと思い、国の政策や、介護・医療、保険の制度を学びました。そして2019年に「ノビシロ」という会社を設立、そこから1 年も経たないうちにノビシロハウスの構想ができて、ご縁があって建物も見つかり、2021年の3月にオープンしました。

――高齢者は7万円、若者は半額の3万5千円、という家賃設定も理に適っているなと思いました。
        

 若者だから安くするということじゃなくて、“ソーシャルワーカー”としてのお仕事をやってもらうことが前提なんですね。高齢者への声かけを定期的にすること、月に1回お茶会を主催すること、この2つの役割を担ってもらっています。家賃設定の仕組みを作る際には、頭をひねりました。当初は「これで本当に成り立つの?」という意見も内部で出たりしたんですが、とにかくやってみないとわからない。そういう意味でも社会実験的だと思います。ノビシロハウス亀井野は、ノビシロが作りたい社会のいちモデルケースと位置付けていて、これがベストだとは思っていないんですね。こういう暮らしの方法を誰もがイメージしやすいように作りました。

――オープンから約2年半、実際に運営して気付いたことは?

 良かったと思うのは、思いのほか世間からの反応があったことです。高齢者の他に、「こういう生活がいいなと思っていた」という50代・60代の方からのお問い合わせもあるんですよ。みなさんが老後の生活としてイメージするのは、老人ホームなどの施設だと思うんです。「施設に入るためにお金を貯めなきゃ」ということが頭にあると思うのですが、そうじゃない生き方があるということを伝えたいですね。コストもそういった施設の3分の1くらいだし、ご近所付き合いをして地域と関わりながら過ごせるという、今までになかった選択肢が意外と受けがよかったんだなと思います。

――逆に、見えてきた課題はありますか?

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