今回は、ここ最近気に入っているという台湾のチャンネルをご紹介いただきます。どれも台湾の街の道路事情を紹介しているようなのですが、どのあたりが押井さんの心をつかんだのでしょうか……? 「東京的現実に生きている人には、ぜひとも見てもらいたい」と語る押井さんに、その魅力を伺いました。
取材・構成/渡辺麻紀
撮影/ツダヒロキ
<新刊情報>
加筆&楽しい挿絵をプラスして待望の書籍化!
『押井守のサブぃカルチャー70年』が発売中!
当連載がついに書籍化しました。昭和の白黒テレビから令和のYouTubeまで、押井守がエンタメ人生70年を語りつくす1冊。カバーイラスト・挿絵は『A KITE』(1998年)などを手掛けた梅津泰臣さんが担当し、巻末では押井×梅津対談も収録。ぜひお手に取ってみてください。
押井守/著
『押井守のサブぃカルチャー70年』
発売中
発行:東京ニュース通信社
発売:講談社
カバーイラスト・挿絵:梅津泰臣
文・構成:渡辺麻紀
人を気遣い、世間を気遣って生きている日本的日常と、オレ様状態で街をかっ飛ばしている台北的日常。どっちが楽しそうかと言えば、台北になる。
――押井さん、今回、紹介していただくのはどんなチャンネルでしょうか?
じゃあ、ここ3週間くらいまえから観始めたチャンネルにしようかな。きっかけは覚えてないけど、かなり気に入っていて3つくらい追いかけている。まずは台湾のバイクのチャンネル『chain kung 』と『RIDE χ 三寶』。
――台湾ですか。自慢のバイクの紹介?
いやいや、いわゆるバイカーのチャンネルだよ。バイク好きのおにいさんが、ヘルメットとバイクの前と後ろ、3カ所にカメラを付けて台北なんかの夜を流している映像。早口でいろいろ喋っているけど、もちろん何を言っているのか判らない。でも、めちゃくちゃ楽しそうなの。
――何が映っているんですか?
いろいろだけど、目玉は交通事故かな。
――押井さん、それは結構ヤバくないですか?
ヤバいよ。でも、大らかで楽しそうなんです(笑)。
ほら、私って『ケルベロス』(『ケルベロス-地獄の番犬-』〈1991年〉)のとき、台湾に何度も行ってるじゃない? 撮影中の2カ月は台北に住んでいたくらい馴染みがある。当時、驚いたのは、とても交通事故が多いこと。たまたま事故に遭遇するんじゃなくて、事故のほうから現れる感じって判る? それくらい事故が多いんだよ。まさに“犬も歩けば事故にあたる”だよね。しょっちゅう、ガッチャンガッチャンやっているから。
――そ、そうなんですか? どうしてそうなるの?
誰も交通ルールを守らないからだよ。みんなエネルギッシュで自分の好きなように走っている。信号は守らないし、対向車線にも平気で入って来る。外側から思いっきり右折したり、みなさん自分の都合しか考えていない。
――押井さん、それはもう中華系思考回路なのでは?
100%そうです。そうすると、あっちでガッチャン、こっちでガッチャンになる。ガッチャンだけならまだよくて、ときには人間が宙を舞うこともある。私が目撃したのは、スクーターに乗った兄弟らしきふたりが、後ろからタクシーに追突され、ものの見事にひとりが宙を舞ったからね。しかもそのふたり、小学生くらいなんだよ。
――ということは、無免許?
どうも向こうの人、バイクや車を走らせている人の半分は無免許、これが田舎に行くと90%が無免許らしい。警官に免許を見せる機会があまりないから平気なんだって(笑)。
――何というテキトーさ!
たとえば、1台のスクーターに5人家族全員乗って外食に行くなんてのも普通にある。旦那が運転して、奥さんが後部。ふたりの間に子どもがひとり挟まれていて、旦那の足元にもうひとり。3人目は奥さんの背中という感じで5人がごくごく普通に移動している。ときどき、そこにイヌがプラスされてることもある。要するにスクーターが自家用車なんだよね。
――でも押井さん、それはもう30年以上も前のことでは?
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