着実にステップアップを図っているビスケットブラザーズの挑戦【2022年4月連載「これから芸人百景」第10回ビスケットブラザーズ】

成長が止まらない! ニッポンの社長が見据えるこれからのビジョン【2022年3月連載「これから芸人百景」第9回ニッポンの社長】

 

注目のお笑いコンビを紹介する『OWARAI Bros.出張版これからの芸人百景』第10回は、ファンタジックな世界観に満ちたコントが魅力的なビスケットブラザーズ。4月10日(日)に香川・丸亀市猪熊弦一郎現代美術館にて初めての地方公演『ク西遊記 ~丸亀へ~』、5月20日(金)には大阪・なんばグランド花月にて初の単独ライブ『街のクチビル代理店』を開催するふたりに単独ライブへの意気込みやファンタジックさのひかるネタについて、個性派揃いの同期についても語ってもらった。

企画・構成/竹村真奈 村上由恵(タイムマシンラボ)

取材・文/高本亜紀 撮影/大槻志穂

 

■ウケ方がほかと違うNGKで初の単独

――香川で初の地方公演と初のNGK単独が決定しました。香川はきんさんの地元ですね。

原田 そうなんです。きんがツッコんだら、「よっ、日本一!」とか「けったいな格好してー!」とか「しょうちゃーん!」っていう声援が起こるかもしれないなって。

きん 本名で呼ばれてるやん(笑)。

原田 僕だけ、完全アウェイになるんじゃないかと恐れてます。ただ、香川は以前、ネタをやらせてもらったときも温かく観てくれましたし、僕らもその頃よりパワーアップしてるはずなので楽しんでいただけるんじゃないかなと。まあ、もしかしたら伝わらへん方向にどんどんレベルアップしてるかもしれないんですけど。

きん キモい方向へ突っ走ってるかもしれないですけど、たくさんの方が観に来てくれたら嬉しいですね。

――NGKという憧れの劇場での単独ライブも、楽しみですよね。

きん そうですね。ニッポンの社長がNGKで単独をやったとき、観に行ったんですけど、とんでもないくらいふたりがかっこよく見えました。

原田 なんせデカいからなあ。

きん そう! デカい会場にお客さんいっぱい呼べてるってやっぱりすごいですよね。ガラガラやったら寂しい気持ちになるので、なんとしてもみなさんに来ていただきたいですけど。

原田 しかも、NGKってウケ方がちょっと変わってるっていうか。客席に反響板が付いてるらしくて、破壊光線みたいに“ちゅん……ぼわーん!”っていう感じで笑い声が響くんですよ。

きん 笑いの柱が上がるというかね。僕らも1回、体感したことがあって。

原田 くっ……!(と頭を抱える)

 

――いつのことですか、それは。

きん 昨年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の予選で。僕らの漫才って、最初に原田がお客さんひとりに喋りかけるっていうつかみが毎回あるんです。そのときも出て行ってすぐ、原田がお客さんに喋りかけたんですけど、全部噛んじゃって(笑)。で、「めちゃくちゃになりましたわ」って言うたら、笑いの柱がどーーんって上がったんですよ。

原田 俺がカリスマを辞めた日のことな?「めちゃくちゃになりましたわ」でウケてたらまだカリスマ説が残るんですけど、噛んだ時点でボカーンとウケまして。

きん 噛んだあと、もう1回がんばろうと続けたんですよ。そこも噛んで、どかーん!

原田 あの瞬間、俺はカリスマじゃないんやなとわかった。

きん そう思いながら、4分間やりきったんや(笑)。舞台袖にいた芸人も、僕らが出て2~3秒でとんでもない拍手笑いが起きたから驚いたらしくて。出番終わりでインタビュー受けてた芸人もみんな、(舞台のほうを)振り返ったっていう伝説が残ってます。まあ、ただ噛んだだけなんですけどね。

■ビスブラの味方をどんどん増やしたい

――次は単独で、そしてネタで、その笑い声が起こせるといいですね。今年1月には、ルミネでの初単独も開催しました。その経験を活かして、今回やってみたいことはありますか?

原田 ほんまにやりたいことでいうと、巨大なセットをちゃんと組んでみたいっていうのがあります。ここが開くと居酒屋みたいになるとか、ここを登るとコントができる場所があるとか、なんにでも使えるようなセットを立ててみたいですね。

きん それを叶えるためには、全国ツアーのように大きい規模で開催できるようにならんとダメなんかもしれないですけど。

――ルミネの単独では照明で時間軸を表すコントもありましたけど、演出面もこだわってみたいですか?

原田 ほんまはもっと凝ってみたいです。けど、やるには新たに成長せなあかん部分が多すぎて。

きん 僕らより上の(コントをやってる)人らはみんなチームでやっているので、そういうことが早くできるようになりたいです。ルミネ単独は、昔、大阪で知り合った照明さんがすごく張り切ってやってくれて。

原田 あれもいるんじゃないか、これもいるんじゃないかって用意してくれたんです。

きん そういう(味方になってくれるような)人がもっと増えたらいいですね。

 

■ふたりの人間性が強く出てきた

――――特に、ビスブラさんのコントはファンタジックなものが多いので、演出による相乗効果は大きくなりそうですよね。ああいうコントは、昔からやっているものなんですか?

きん 最初は擬人化コントみたいなんばっかりやってたので、今よりも世界観が強かった感じはします。

原田 当時は笑かし方もイマイチわかってなかったので、ただ物語をやっているだけやったというか。僕、ひとりっ子で妄想するのが好きやったからなのか、みんなの日常あるあるの面白さがわからんときがあって。大人になってからだんだんわかるようになったんですけど、昔やってたコントは今観ると(ネタを作った)自分でも笑わんなと思うようなものが多かったですね。

――例えば、どんなところが変わりましたか?

原田 どうやって笑かすかみたいなことに、きんや僕の人間性が出るようになった気はします。

きん 1年目のときにゴミを擬人化するコントをやって、めっちゃちっちゃい大会の敗者復活戦みたいなのに選んでもらったんですけど、その会場が駅の人通りの多い1階にある吹き抜けになる特設ステージやったんです。そこでシュールなコントをやっても、誰も観てくれなかった。こういうネタは場所を選ぶんやと学んだような経験が、今のネタに活かされてる気はしますね。

原田 あと、最近思うのは、漫才のボケてツッコんでみたいな笑かし方をコントに混ぜられたらなっていうこと。ビスケットブラザーズとして漫才をやると、ここはえらいウケるなっていうところがあるんですよ。でも、そのポイントをコントに入れてもウケへんし、コントでウケる哲学的なセリフを漫才にパーンと入れても全くウケへん。その辺りのバランスがもっとわかれば、漫才もコントももっとよさが出る気がします。ちょっと汚い例えですけど、漫才は屁えこきそう過ぎて、コントはオシッコを漏らしそうみたいな。

きん ……で、それを統一して?

原田 舞台上でウ○コできるふたりになれたらええなって。

きん 誰が観たいねん、そんなもん(笑)。たぶん、すべての人を巻き込めるようにしたいっていうニュアンスやと思います。

原田 そうですね。(それぞれのよさが)グッと混ざったら、サーカス団みたいなふたりになれそうな気がして。その辺も挑戦してみたいですね。

■各々が活躍している大阪NSC33期の同期

――また、ビスブラさんの同期って霜降り明星さん、コロコロチキチキペッパーズさん、男性ブランコさん、ZAZYさんなど個性的な人が多いですよね。同期はどんな存在ですか?

原田 同期はみんな、お笑いケンカ屋っていうかストリートがめっちゃ強いヤツっていうイメージですね。平場でもめっちゃ前に出るし、自分がいちばんボケたいって思ってるし、パワー系のギャガー気質なタイプが意外と多い気がします。

きん ほんまにすごい人ばっかりですよ、同期は。

――ほかにもニッポンの社長・ケツさん、滝音・秋定さん、マユリカさん、kento fukayaさん……と個性派揃い。みなさんで全国区の番組に出られるようになったら面白そうですね。

原田 コロチキって早くに『キングオブコント』で優勝してしまったから、誰も仲間がおらん状態でずっと走ってたんですよ。そのあと、『M-1グランプリ』で霜降り明星が優勝するんですけど、僕らが『キングオブコント』決勝に行った2019年。西野に会うたら、「お前ら、ええ感じやな。あと一歩、出てきてくれ。あと一歩来てくれたら、同期全員でガッと出られる」って言われたんです。やから、追い付きたいなと。仲間が多いのって、めっちゃいいことばっかりで。

きん 例えばマユリカとテレビの仕事で一緒やったら、それだけで楽しいし、お互いのよさも伝わるし、いいことしかないんです。

原田 まあ、ZAZYだけちょっとあかんけど(笑)。

きん いやいや、ZAZYにこそ同期が必要やと思う。ほかの人らには“なんや、こいつ”って思われることでも、僕らやったら「はいはい、また出た」とかイジれますから。

――そういう絡みもライブだけじゃなく、テレビでできるようになるといいですよね。

原田 そのためには、僕らががんばるだけですね。

きん 霜降りはずっと(前線に)いてくれるはずなので、僕らが売れれば一緒に行けるんじゃないかなって。ふたりとも同期愛が強いんで、めっちゃ引っ張り上げようとしてくれてるので。

原田 今は霜降りとそれ以外っていう感じで分かれてる気がするんですけど、そうやって先頭を走ってくれてるあいつらと同じラインに立てるようにならないと、ですね。

きん そうやな。で、僕らも一緒に引っ張っていけたらっていう気持ちはもちろんあるんですけど、マユリカとかも勝手にガンガン(世に出て)来てるし、気い付いたら置いていかれてる状態になるかもしれないんで気が抜けないです。

原田 ほんまにそう。まあ、そうなったとしても、僕らはデブなんで「待ってよ~!」ってどたどた走りながら付いていきますけど。

きん 途中でオープンカーに乗ったりしてね?

原田 後ろ走ってたのに、いつの間にか追い抜いてたりして。そうやって同期全員で、いろんな個性が全種類揃ってる、アベンジャーズみたいになれたらいいですね。

ビスケットブラザーズ●きん(1991年4月27日生まれ、香川県生まれ)と原田泰雅(1992年1月10日生まれ、大阪府出身)が、大阪NSCで出会い2011年にコンビ結成。2019年『キングオブコント』(TBS系)決勝に初進出を皮切りに、2020年上方漫才協会大賞 文芸部門賞受賞。2021年にNHK上方漫才コンテスト優勝。平日24時から放送中の『Cheeky’s Cast 3』(BSよしもと)火曜MCを担当。

 

▼ライブ情報

ビスケットブラザーズ  ベストネタライブ『ク西遊記 ~丸亀へ~』

日時:2022年4月10日(日)15:00開場 15:30開演

場所:香川・丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 2F ミュージアムホール

料金:前売3000円 当日3300円

ビスケットブラザーズ なんばグランド花月初単独ライブ『街のクチビル代理店』

日時:2022年5月20日(金)19:15開場 20:00開演

場所:大阪_なんばグランド花月

料金:前売3000円 当日3500円

成長が止まらない! ニッポンの社長が見据えるこれからのビジョン【2022年3月連載「これから芸人百景」第9回ニッポンの社長】

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