おとどちゃん連載・9「Iのままに我ままに」

今月創業91周年を迎えた桂浜水族館。

高知県桂浜にある小さな水族館から、大きな声で、いきものたちの毎日を発信中!

広報担当・マスコットキャラクターのおとどちゃんが綴る好評連載第9回をお届けします!

以前のお話はこちらから。

令和四年四月一日、桂浜水族館は創業九十一周年を迎えた。標本木の開花宣言から二週間ほど経ち、ほろほろと溶けるように桜が舞う。花冷えで澄んだ空気は桂浜の空を優しく滲ませ、藍色を編んだ海はキラキラと煌めいていた。

「九十一周年おめでとう」

祝いの花を持って来館した女性の笑顔が咲く。ツイッターでも祝福のメッセージがたくさん届き、この日も朝からお祭り騒ぎだった。

次の週の土曜日には「ハマスイデー」と題して周年を祝うイベントを開催した。朝から常連客をはじめ多くのファンが駆けつけ、一日を通して約六百名の来館者が集った。

午前十時には、飼育顧問が校長先生に就任している学習施設「さかなの学校」のスタッフも水族館に到着し、館内のテラスにブースをつくってイベントを盛り上げてくれた。「さかなの学校」は神戸のアウトレットモール内にある小さな施設で、桂浜水族館の飼育顧問が校長先生として指揮を執り運営をしている。がっしりと体格が良く、険しい表情を浮かべた時の鋭い眼光、風を切り歩く姿とその独特なオーラに、誰もが緊張感を抱く。彼が水族館業界の人間だと知らない人が見れば、アッチの人だと勘違いしてしまうのではないかと思うほどだ。口が悪く息を吸うように悪態をつくが、根はとても愛のある人で、私は彼の来高をいつも楽しみにしている。

さらにこの日は、実の兄弟であるお笑いコンビ「土佐兄弟」を水族館に招待していて、午前と午後の二回トドプール前で漫才を披露してもらった。「土佐兄弟」というコンビ名だが、ふたりとも高知とは縁もゆかりもなく、マネージャーが高知出身であることから、ロケ経験がない彼らの地方進出の第一弾として、土佐の高知が候補に挙がり、桂浜水族館に連絡があったのだ。漫才といえば、桂浜水族館でも飼育員ふたりがコンビを組み、四カ月前からYouTubeの公式アカウントで生きものに関する漫才動画を定期的に投稿している。イベントを企画する中で、プロとアマチュアの二組のコラボは至極自然に決まった。

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