【ケビンスのトーク&マンガエッセイ連載「ケビ通」】第6話 ケビンスとアルバイト

ヨシモト∞ホールなどで活躍する人気急上昇中のお笑い芸人・ケビンスのトーク&マンガエッセイ連載。コンビのネタ作りを担い、独創的な視点とイラストセンスを持つ仁木恭平が、快活なキャラクターで何かと注目を集める山口コンボイを主役にマンガを描き下ろし。アルバイトのエピソードには、コンボイを象徴する逸話が満載で…。

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取材・文/釣木文恵
撮影/武石早代

第6話「ケビンスとアルバイト」

山口コンボイを象徴する
“グラス割り隠蔽事件”の真実

コンボイ アルバイトの話なんて、俺もう無限にあるよ! なんたってこれまでバイト10個クビになってるから。

仁木 バイトでの失敗エピソード、山ほどあるもんな。

コンボイ うん。「はさみ持ってきて」って頼まれたのにホチキス持っていっちゃったこととか、「梅干し取って」って言われて「ありません」って答えたら目の前にあって、「あるじゃねえか!」ってビンタ食らって鼓膜が破れたこととか。

仁木 グロいなぁ…。俺が聞いた中で一番好きなエピソードは、喫茶店でグラスを割った話かな。山口コンボイの隠蔽体質を象徴してるから(笑)。

コンボイ 絶対に食洗機にかけちゃいけないって言われてたグラスを食洗機にかけて割れちゃって、全部捨てたんだけど、「あのグラスどこ行った?」って聞かれた時に「わかんないっす」って答えたやつね。

仁木 正直に言うチャンスがあったのに隠すところがヤバいよな。

コンボイ で、閉店時間になってマスターがゴミ袋をまとめたら、底に割れたガラスがあるわけ。

仁木 え、燃えるゴミに捨てたってこと?

コンボイ そうそう。

仁木 うわー、ヤバッ!

コンボイ 「これ何?」って聞かれて、「いや、なんか最初からそうでしたけどね」って言った。

仁木 すごいな。今、自分で話しててどう思うの?

コンボイ いや、怖いよ。

仁木 何が?

コンボイ 自分が。選択肢を全部間違えてるから。でもさ、実はクビになったのはそれが直接の原因じゃないんだよ。そこから半年働いたんだもん。

仁木 めっちゃいいマスターじゃん。コンボイを信じてくれてたんだな。

コンボイ でもある日、肩ポンって叩かれて「ちょっとやめてもらおうかと思って」って。

仁木 なんで?

コンボイ 途中から、西麻布のキャバクラで黒服のバイトを並行して始めたの。そしたら疲れちゃってさ。マスターが「元気がありそうだと思って採用したけど、嫌なギャップがある子だね」って。

仁木 本当だよな! 仕事はできないけどせめて元気なところがいいと思ってくれていたのに、元気もなくてよぉ! 聞いてるだけで腹が立ってくるわ(笑)。

 

スカしてたコンボイ
行列のできる仁木

コンボイ 俺はさぁ、これまでに16個バイトをやってきて、“バイト先で一番面白いヤツ”もやったし、“夢を追ってる少年”としてみんなにライブ見に来てもらうのもやったし…。でも、スカしてたこともあって。それが一番の後悔だな。

仁木 どんなふうにスカしてたの?

コンボイ 黒服と並行して監獄居酒屋のバイトをやってたんだけど、当時22歳でその店のバイトの中では一番年上だったの。

仁木 年下をナメてたんだな。

コンボイ そう。大学生が学校のノリ持ち込んで笑ってるのを見て、「俺は西麻布で大人と接してるのに、この子たちはこんなにつまんないことで笑ってるんだ」って。

仁木 そんなこと考えてるお前が一番しょうもないぞ(笑)。

コンボイ 本当だよね。当時は同期もまだ誰も売れてないから、芸人でもイケてる方だと思ってたし、バイトで大人の世界を知ってると思って調子に乗ってたんだよ~!

仁木 その態度がよくないってことにいつ気付けたの?

コンボイ 俺が料理を運んでたら、バックヤードから「本当なんだって!」って声が聞こえてきてさ。「山口さん、ライブだとちょっと面白いんだよ」「そんなワケねえじゃん!」って。数少ないライブに来てくれた子が嘘つき呼ばわりされてて。

仁木 ハハハ!

コンボイ 俺がスカさずみんなに明るく接してたら、せっかくライブに来てくれた子にこんなことを言わせずに済んだんだと思って、めっちゃ後悔した。

仁木 なるほどな。

コンボイ 仁木くんは何のバイトやってたの?

仁木 俺の初めてのバイトは、地元の小学生が冬休みの時にこぞってやるホタテの穴あけだな。

コンボイ おお~。

仁木 一番寒い時期にあがったホタテに、大人が穴を開けてくの。そのホタテに、返しがついた紐を通すだけの仕事。それを朝5時から夕方まで。

コンボイ うわ、頭おかしくなりそうだな。

仁木 寒いし、においもすごいし、漁師だからみんな言葉遣いが荒いし。しんどくて泣きながら「やめたい」って言ったなぁ。

コンボイ 小学生でそれはきついわ。俺は高校の時、同級生が家族でやってるコンビニで働いたのが最初。そん時は、自分はできるヤツだと思ってたんだけど!

仁木 まだ気付いてなかったんだ(笑)。俺は高校の時は地元で一番大きいスーパーでバイトしてたな。スタッフが変人だらけでさ。声が小さい大男の2人組と、ずっとキレてる早歩きの女性、午前は普通に働いてて午後に「神経が衰弱しました」って置き手紙を残して飛んだ社員…。

コンボイ なにそれ…。

仁木 惣菜の半額シールを貼る係で、毎日俺にすごい行列ができてたわ。芸人になってから物販の行列とかけっこう経験させてもらったけど、あの時の行列が人生で一番長いと思う(笑)。時給は最低賃金の600円台で、週6日働いて月6~7万稼いで。

コンボイ うわー、俺、最低賃金673円だったわ!

仁木 俺はいまだに、金銭感覚がその当時のままなところがあるな。

 

コンボイの才能が開花した
初の仕事・草むしり

コンボイ 俺はね、喫茶店、居酒屋、パチンコ屋、監獄居酒屋とか、22歳まででバイトを5つクビになってる。1日2個クビになったこともあるよ。

仁木 そうなってくると、自信をなくしたりしないの?

コンボイ 全然!

仁木 「俺は何をやってもダメだな」ってならなかった?

コンボイ ならなかったなあ。「かけもちでバイトやってる俺、かっけえ! その傍ら夢も追ってる、そりゃミスもするでしょう」って思ってた!

仁木 俺はさ、バイトも何もしてない時期があって、「さすがにバイトしないと」と思って面接を夜8時に入れてさ。朝起きて、「時間あるしちょっとだけお酒飲もう」って飲んだら寝ちゃって、気付いたら8時半だったことがあって。その時は「俺は面接にも行けないのか」ってさすがに死にたくなった。そういう気持ちになったことなかったの?

コンボイ ないねえ。俺、面接は100パー受かってたし!

仁木 コンボイのバイト先の人たち、本当に大変だったろうな…。アルバイトって、人間関係の練習だと思うんだよ。相手に腹が立った時にどうやり過ごすのかとか、ミスした時の伝え方とか。そこでちゃんと人と関わり合ったほうが、大人になった時に弱点が少なくなる気がする。でもコンボイは、バイト途中リタイアの連続じゃん。

コンボイ 俺、一度も飛んだことないよ?

仁木 でもさんざんクビになってるだろ。バイトの一番最悪な部分を経験する前に辞めてるんじゃないか? だから、本当のツラさを知らない分、大人になった今も怠けちゃうんだよ。

コンボイ ああ~、仕事ができなすぎて、逆に地獄を体験させてもらえてないってのはあるかも。でもさ、円満で辞めたバイトもあるんだよ? 2022年までやってたバイトが一番長く続いたやつで、不動産の工事部でアパートやマンションの壁紙を張り替えたりするの。そこで、ようやくバイトで生きがいを感じられたのが草むしり。これ、すっごいきれいになってるでしょ、見て!(と、写真を見せる)

仁木 これ見せてどう思われたいんだよ!

コンボイ この時「手に職がついた!」と思ってうれしかったんだよ。

仁木 コンボイがもしピン芸人のまま活動してたら、絶対そっちの方向に行ってたんだろうな。リフォーム芸人。

コンボイ リフォーム漫談やって『R-1』の2回戦で落ちてね。

仁木 ちょっとだけYouTubeやって。

コンボイ 「こんな家には引っ越すな!」「引っ越す前にやるべき10のこと!」。うわー、絶対なってたと思う。コンビ組めてよかった!

作:仁木恭平

ケビンス
仁木恭平(1991年6月19日生まれ、北海道出身)、山口コンボイ(1993年5月25日生まれ、新潟県出身)。2021年結成。ヨシモト∞ホールを中心に活躍。ラジオアプリGERAにて「ケビンスの男前放送」配信中。マユリカ、ビスケットブラザーズとのユニット『漫才大家族』第4章の全国ツアーが9月21日(土)に福岡・よしもと福岡 大和証券劇場、11月17日(日)になんばグランド花月にて開催。

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