「猪木問答」に見た「アントニオ猪木=明石家さんま」説【連載『神田伯山の“真”日本プロレス』延長戦!2022年7月号】

講談師・神田伯山&実況アナウンサー・清野茂樹が創立50周年を迎えた新日本プロレスを語りつくすCSテレ朝チャンネル2『神田伯山の“真”日本プロレス シーズン2』。第4回の歴史コーナーは、 PRIDEやK-1といった格闘技の人気に押され、苦しい状況に追い込まれた2000年代初頭がテーマでした。延長戦では、当時の新日本でぼっ発したアントニオ猪木による完全アドリブの公開討論、マイクを使ったシュートマッチ(真剣勝負)ともいえる「猪木問答」(注1)について深掘りしてもらいました。猪木の永遠のライバル、ジャイアント馬場は「シュートを超えたものがプロレスである」と語ったが、PRIDEやK-1では絶対に味わえない、プロレスのロマンあふれる世界を二人と一緒にとことん味わいましょう!
取材・文/K.Shimbo(2001~2003年の印象的な試合は、三沢光晴VS蝶野正洋。「猪木問答」を経て蝶野が三沢にオファーしたと知り、この一戦にさらに奥行きを感じるようになった)
撮影/ツダヒロキ(同じく、2002年の新春ニュージャパンランボー。中西学のキレ方が異常)

注1・「猪木問答」 2002年2月1日、北海道立総合体育センター。猪木の格闘技路線に対する反発から、武藤敬司らが退団し、全日本へ移籍。そんな中、蝶野正洋が猪木をリングに呼び込み、公開の場で永田裕志、棚橋弘至らと意見をぶつけ合った。「誰に怒っているのか?」という問いに「全日に行った武藤です」と答えた中西学を「お前はそれでいいや」と切り捨てたり、「明るい未来が見えません!」と謎の返答をした鈴木健想を「見つけろ、テメエで!」と突き放したりと、猪木の言語センスが爆発。棚橋の「オレは新日本のリングでプロレスをやります」という今思えば一番正解だった熱い思いを、「まあ、それぞれの思いがあるから…」と軽く受け流すのも猪木ならでは。「新日本プロレスワールド」で配信されているので、この映像を観るためだけにも課金すべき。

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<プロフィール>
神田伯山(かんだ・はくざん)●1983年東京都生まれ。日本講談協会、落語芸術協会所属。2007年、三代目神田松鯉に入門し、「松之丞」に。2012年、二ツ目昇進。2020年、真打昇進と同時に六代目神田伯山を襲名。講談師としてもさることながら、講談の魅力を多方に伝えるべく、SNSでの発信やメディア出演など様々な活動を行っている。現在は『問わず語りの神田伯山』(TBSラジオ)などに出演している。
清野茂樹(きよの・しげき)●1973年兵庫県生まれ。広島エフエム放送(現・HFM)でアナウンサーとして活躍。『ワールドプロレスリング』(テレビ朝日系)で数々の名実況・名言を生み出した古舘伊知郎アナウンサー(当時)に憧れ、宿願だったプロレス実況の夢を実現すべく、2006年フリーに。2015年には新日本プロレス、WWE、UFCの実況を行い、前人未到のプロレス格闘技世界3大メジャー団体を実況した唯一のアナウンサーになる。『真夜中のハーリー&レイス』(ラジオ日本)のパーソナリティーとしても活躍。

『神田伯山の“真”日本プロレス』
CSテレ朝チャンネル2 毎月第3土曜午後10・00~(8月回は8/20土曜午後10・00~)

出演 神田伯山 清野茂樹(実況アナウンサー)
●“最もチケットの取れない講談師”の神田伯山と、プロレスに魅せられた実況アナウンサーの清野茂樹が、テレビ朝日に残された貴重な映像を観ながら、プロレスの歴史をマニアックに語り尽くす。そのほか、当事者を招いて真相を探る「真のプロレス人に訊け!」や、現役プロレスラーの魅力を深掘りする「最“真”日本プロレス」といったコーナーも。
番組HP:https://www.tv-asahi.co.jp/ch/recommend/hakuzan/

 

猪木問答、あれは大喜利なんですよ(伯山)

――2000年頃のPRIDEやK-1の勢いは本当にすごかったですよね。

伯山 選手もキャラがそろっていましたよね。(アントニオ・ホドリゴ)ノゲイラとかミルコ(・クロコップ)とか、みんな個性的で。

清野 テレビの放送時間もプロレスに比べると良かったじゃないですか。

伯山 “煽りV”(注2)も洗練されていたし、ナレーションもカッコいいし。

清野 “煽りV”という文化は格闘技発ですね。

伯山 試合の奥行きを短時間で説明して、観客も視聴者もひきつけちゃう。あれはテレビの技術ですよね。

――そんな中、新日本では「猪木問答」がありました。もし、伯山さんがレスラーとしてあの場にいたら、猪木さんの問いかけにうまく対応できたと思いますか?

清野 伯山さんは得意なんじゃないですか?

伯山 全然できないです! あれは大喜利なんですよ。

清野 ガチンコの「笑点」みたいな。

伯山 猪木さんがシュートを仕掛けてきたというか。レスラーとしては引退したけど、マイクパフォーマンスはまだできるから、ここまでこれるやつはいるのかっていう。すっごい怖いですよね。普通、あの歳になると後輩に優しくなると思うんです。数回しか共演していないので名前を出すのも恐縮ですが、ダウンタウンの松本人志さんも番組で一緒になると、僕がしくじってもフォローして笑いに変えて、番組全体を盛り上げようとしてくれる。でも、猪木さんは一切ないですから。俺に勝てるかどうかっていうのをまだやっていたんですよ。

清野 そこは明石家さんまさん的かもしれないですね。

伯山 そうかもしれない。

清野 俺が一番だ、みたいな。

伯山 歯が出ているか、あごが出ているか、ですね(笑)。月並みですけど、猪木さんはレスラーを引退してもレスラーだったんです。全部張り合っちゃう。譲らないですよね。

――清野さんは「猪木問答」をどうご覧になりましたか?

清野 言いにくいですけど、現役レスラーが猪木さんに歯が立たなかった。チャンスをふいにしたなって思いました。最大のチャンスだったんです。猪木さんを超えることを言っていれば立場をひっくり返せたのに、結果、言えなかった。もったいないですね。そうそうない公開討論の場じゃないですか。

伯山 なるほど。「真剣10代しゃべり場」(注3)って昔ありましたよね、NHKで。あれもすごい番組だったじゃないですか。10代の子供たちが本気で議論をするっていう。あれに近いものがありますね。

清野 これは、新日本の文化なんですよ。他の団体にはこういうのはないです。

伯山 新日本特有のものだと。

清野 引き合いに出して申し訳ないですが、全日本にはないですよ。馬場さんがマイクで何かを仕掛けてくるとか。

伯山 馬場さん問答はないですもんね(笑)。

清野 ないですよ。言葉のパフォーマンスで相手のレスラーを圧倒するみたいな。今風に言うと、フリースタイルバトルですよね。そんなことをするのは、新日本だけです。それはやっぱり猪木さんが作った土壌で、今も続いているんです。内藤哲也選手とオカダ・カズチカ選手が向き合ったら、マイクでお互いに何を言うのかって。

注2・“煽りV” 試合前に流れるVTR。当時フジテレビ社員だった佐藤大輔氏が手掛けた「PRIDE」の“煽りV”は、単なる見どころ紹介や選手のインタビューではなく、ひとつの映像作品として完成されたクオリティーで、マット界に革命を起こした。
注3・「真剣10代しゃべり場」 10代の少年少女10~15人が話し合うテーマを持ち寄り、台本なし、司会者なしのフリートークを繰り広げる番組。

 

今考えれば、本当にどうかしている(清野)

――最後に今後の番組の見どころですが、次回は2004年からとなります。

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