ほかのフランチャイズ作品とは逆の進化を遂げている『ワイルド・スピード MEGA MAX』今石洋之 第3回【連載 アニメ人、オレの映画3本】

人気ゲームのアニメーション化で、自ら監督も務めた『サイバーパンク エッジランナーズ』がNetflixで配信中の今石洋之さん。これまで『ターミネーター』『県警対組織暴力』を挙げて頂きましたが、最後となる3本目は?
取材・文/渡辺麻紀

◆本格的に映画に目覚めた作品『ターミネーター』今石洋之 第1回
◆バッドエンドに色々考えさせられた『県警対組織暴力』今石洋之 第2回
◆過去の連載はこちらから

 

<プロフィール>
今石洋之(いまいし・ひろゆき)●1971年10月4日生まれ。東京都出身。アニメーション監督、アニメーター。多摩美術大学美術学部芸術学科映像専攻卒業後、ガイナックスに入社。『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~1996年/テレビ東京系)の動画から始まり、絵コンテ・作画監督などを経て、『天元突破グレンラガン』(2007年/テレビ東京系)、『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇/螺巌篇』(2008年/2009年)の監督を務める。2011年には共同でTRIGGERを設立。以降『キルラキル』(2013~2014年/MBSほか)、『プロメア』(2019年)などオリジナルアニメーションの監督を務める。最新作は『サイバーパンク エッジランナーズ』(Netflix

 

僕にとって、車もロボットの代わりなんですよ

 

――さてさて今石さん、ついに3本目です!

3本目は誰もが知っている作品にしました。日本にもファンがたくさんいる『ワイルド・スピード』シリーズの第5作目『ワイルド・スピード MEGA MAX』(2011年)です。ドウェイン・ジョンソンが初めて出演したエピソードかな。

――『ワイルド・スピード』シリーズは、スピンオフを除くとこれまで9本作られていますが、そのなかで本作を選んだ理由は?

この5作目で、シリーズを続けて行く上での“正解”がやっと出たという感じだったからです。

『ワイスピ』シリーズはフランチャイズ作品としてはとても奇妙な成長をしていて、実は1作目(『ワイルド・スピード』〈2001年〉)が割と普通、というか(笑)。シリーズ化されるのは、『ターミネーター』を例に挙げるまでもなく、オリジナルの1作目が大ヒットしたり、傑作として認められたりするからじゃないですか? そうやってシリーズ化してどんどん失速して行くというのが普通なのに、このシリーズはむしろ逆で。1作目はそこまで面白くもなかったにもかかわらず、なぜか2作目(『ワイルド・スピード×2』〈2003年〉)が作られ、何と3作目(『ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT』〈2006年〉)まで作られてしまった。僕なんか3作目を観たとき「これはもうダメなのかも」って思いましたから。

――日本が舞台で、すでに珍作の領域に達してましたよね。

そうそう。それにヴィン・ディーゼルも出てなかったから、さすがにこれで終わりだろうと思っていたら、何と4本目の『MAX』(ワイルド・スピード MAX〈2009年〉)が作られ、ヴィンも出演していた。ここでやっと方向性が見えてきて、5作目で確定した。ほかのフランチャイズものとは逆の進化をしているように感じる。

――確かに! 言われてみればそうですね。

始まりは、車好きな不良たちの話だったのに『5』作目から活躍がインターナショナルになり、ヴィンたちチームは世界をまたにかける義賊的な立ち位置になった。アメリカを離れブラジルで、自分たちより悪いヤツから大金を盗む話ですからね。それを成功させるためには『早い車が必要』という理屈になっているけど、本当に必要なのかはよくわからないところも良い(笑)。

――その車も当初は三菱ランサーとかの大衆車だったのに、活躍がインターナショナルになってポルシェとかの高級車になりましたよね。

どうやったら客に受けるのかを試行錯誤し続けているシリーズなんですよ、きっと。普通、そういう試行錯誤する時間は与えられないと思うんですが、なぜかこのシリーズには与えられた。そして『5』以降、どんどんエスカレートして『9』(『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』〈2021年〉)では車に乗ったまま宇宙にまで行ってしまった。すでにSFの領域。僕はいっそ、月面でカーチェイスしてくれたらいいのに、と思ってましたからね(笑)。

――判ります(笑)。

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