押井守のサブぃカルチャー70年「キャプテン・スカーレットの巻」【2021年8月号 押井守 連載第26回】

今回は押井さんが萌えたという『キャプテン・スカーレット』がテーマ。和製のSFやメカニックがまだまだ少ない中、おねえさんたちが戦闘機で戦うという当時はぶっ飛んだ設定に歓喜したそうですが、肝心の主人公・スカーレットの記憶は薄く…。

取材・構成/渡辺麻紀

当時の私がさほど好きでもない怪獣ものを観続けていたのも、SFに飢えていたからですよ

――前回はジェリー・アンダーソンの代表作『サンダーバード』(1965年)でした。「インターナショナル・レスキューで武装していないから萌えなかった」とおっしゃっていましたが、今回は「萌えた」とおっしゃる『キャプテン・スカーレット』(1967年)です。

なぜ萌えたかと言うと、空中空母だったから。戦闘機隊も登場して、ジェット戦闘機に乗っているんだけど、このパイロットが全員おねえさんなんですよ。エンジェル隊という名前で5人くらいいた。

――押井さん、そこなんですか?

そうだよ。だから河森正治の世界だっていってるじゃない。彼の原点、『マクロス』(『超時空要塞マクロス』<1982年>)の原点は『キャプテン・スカーレット』なんですよ。空中空母、そしていまでいう美少女戦隊のはしり。まあ、こっちはもっと色っぽいおねえさんたちだけど。

――押井さん、河森さんの話、本当ですか? 想像で言ってません?

まあ、想像だけど……いや、少し話したこともあって、そのとき『~スカーレット』の話をした記憶がある。だから、間違ってないと思うよ。

――ということは、スカーレットの部下は女性ばかり? だったらもうハーレムじゃないですか!

そうです。当時としてはぶっ飛んだ設定だったんですよ。色っぽいおねえさんたちが空中空母から発進するジェット戦闘機に乗って戦うんだから、かなり斬新。スカーレットはあまり印象がないけど、このエンジェルのおねえさんたちは強烈に憶えている。それに戦闘機もめちゃくちゃかっこよかったからね。

――主人公のスカーレットは憶えてないんですか……。

私は敵であるブラック大尉のほうが好きだったから、主人公が一番印象が薄くなっちゃうの。

――押井さん、調べてみると男性の隊員もいますよ。

いたかもしれないけど、まるで憶えていません(笑)。やっぱり空中空母と戦闘機、そしておねえさんだけ。

というのも、何度も言うけど、そういうSFやメカが日本製の映画やドラマじゃ少なかったし、あったとしてもかっこ悪かったからだよ。私がさほど好きでもない怪獣ものを観続けていたのもSFに飢えていたからですよ。ほんと、何度も言うけど。

東宝の特撮映画に登場するロケットや戦闘機はろくなもんじゃない。唯一いいと思ったのは『地球防衛軍』(1957年)の続編になる『宇宙大戦争』(1959年)の敵の円盤。今でもそのイラストを描けるくらい好きだったしかっこよかった。『地球防衛軍』に登場するロボットのモゲラも悪くない。もうひとつは『サンダ対ガイラ』(『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』<1966年>)に出てくるメーサー殺獣光線車。それくらいですからね。私が空中空母に燃えるのは当然なんです。

空中空母というのは実写映画にも登場する。『ウィンター・ソルジャー』(『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』<2014年>)とか、アンジェリーナ・ジョリーがアイパッチで出て来た映画……何だっけ?

――『スカイキャプテン』(『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』<2004年>)ですか?

そうそう。ハリウッドは空中空母というコンセプトがお気に入りなんですよ。彼らは基本的に空母人間だから、でっかい空母が空中でブンブンしているのは大好きなはずなんです。

日本にもかつて空中空母というアイデアはあった。少年少女空想冒険小説のたぐいにはよく、その手の兵器が登場していたから。

――昔の少年漫画誌にはだいたい、読み物としてそういう空想科学系の短編小説が掲載されていましたもんね。今みたいに漫画オンリーじゃなかった。私もよく読んでいました。『消えた細菌』とかいう短編、憶えてますよ。

科学的な要素に軍事的な要素を加えたような子供向け小説。私が読んだのは、空中空母からジェット化されたゼロ戦が発進し空中戦を展開するというものや、潜水艦に戦艦大和の砲塔をまんま乗っけるとか。「こんなのくっ付けたら浮き上がれないだろう」なんてツッコミながら読んでいた。

――で、押井さん、『~スカーレット』はどんなお話だったんですか?

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