押井守のサブぃカルチャー70年「YouTubeの巻 その2」【2022年2月号 押井守 連載第37回】

「YouTube」第2回。現代の若者がなぜYouTubeにハマるのか。自分にとっての価値観とは何か。YouTubeからはさまざまな“いま”が見えると押井さんは言います。

取材・構成/渡辺麻紀

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人生に対して意欲的じゃない人は、受動的な娯楽に慣れている

――YouTubeの1回目は、押井さん激オシの『Fラン大学就職チャンネル』です。面白い上にとてもためになる。いまの社会が凝縮されていると絶賛しています。で、前回は、遊び相手はいるのに相談相手はいないいまどきの若者たちの悩みについてでした。そういう悩みを彼らはどうやって解決してるんですか?

悩みがあるときは、ネット上の記事を探すんだけど、そういうときに目に留めるのは、自分にとって都合のいい答えであり発言。「就活は4年生からでも大丈夫」とか「面接では芸を見せればOK」とか「最悪、新卒で就職出来なかったら留年すればいい」とか。自分がほっとできる情報ばかりを探してしまう。

結局は、自分にとってめんどくさいことやシビアなことは避けるので、どんどん思い込みの世界に入り、現実から遠ざかって、当事者意識がますます薄れていっちゃうんだよ。そういうときに相談できるような交友関係を築いていればまた別なんだけど、ないわけだからね。こうなるともう、現実逃避。そして、あるとき気づくと、自分だけが孤立していたことになる。

――その流れを聞いていると、そうなりそうですね。

私の興味の中心は、なぜそんなことになるんだろうということ。そういう人間の思考はどうなっているんだろう? なぜ、自分の人生の当事者になれないのか? そういうところにある。

昔はというか、私たちの若い頃は、高校生くらいで自分の人生と向き合っていたのに、いまはまるで違う。下手をすれば、たとえ働き始めても自分の人生と向き合えない人がたくさんいる。

就職してもすぐに辞めちゃうのもそう。何が自分にとってもっとも大切なのか、それがわからない。つまり、優先順位を付けられないし、そもそも優先順位すらないのかもしれない。優先順位のないところに価値観はない。価値観は優先順位のことだからね、いつも言っているように!

――はい!

優先順位を決めるということは、すなわち自分がどういう人間なのか、表明していることと同じなんだから!

――そういう若者がたくさんいるということを『Fラン』で知ったんですか?

そうなるよね。それまではうっすらと、そういう連中がいることに気づいてはいたんだけど、このチャンネルを見るようになって確信をもったというか、より内実を知ることになったという感じかな。

私の周囲にも、自分の人生に対して当事者意識をもっているのか、疑わしい者はいるよ。価値観自体がなく、人生に対して意欲的じゃない。そして、受動的な娯楽に慣れている。

――「受動的な娯楽」というのは?

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