桂浜水族館おとどちゃん連載・6「青と赤と、オレンジと」

高知県桂浜にある小さな水族館から大きな声でいきものたちの毎日を発信!

桂浜水族館の広報担当・マスコットキャラクターのおとどちゃんが綴る、好評連載第六回!

以前のお話はこちらから。

写真&文/おとどちゃん
編集/西村依莉

昭和六年に開館した桂浜水族館は、令和三年に創業九十周年を迎え、前年の冬には、館長の夢のひとつだったミナミアメリカオットセイが仲間入りした。雄と雌の二頭は、京都水族館からやって来た。二頭とも京都にいた頃にすでに名前がついていたが、この水族館に来たことにより、「創業九十周年記念」を背負う新しい名前を纏った。雌が「クオ」、雄が「キネン」。しかし、二頭の改名については賛否が分かれ、私は、ツイッターのダイレクトメッセージで、雄のオットセイが京都にいた頃の名づけ親であるという女性から、「改名はしないでほしい」と苦しい胸の内を明かされた。生まれて初めて向き合うことになった「改名」という問題に狼狽えたのを憶えている。彼女との出会いは、あまり良いものではなかったかもしれない。改名はしないでほしいという悲痛な叫びに心が痛んだ。

キネンは、ここに来る前「あおば」という名前だった。名づけ親の彼女は身体的な病を抱えていて、大きな手術を受けた。あおばが生まれたのは彼女が手術を受けた年の六月のことで、もともとオットセイが好きだったこともあり、名づけ親に選ばれ、名前が採用された時は自分が産んだ子のことのように嬉しかったという。あおばの存在は、彼女にとってなにものにも代えがたい心の支えだった。名づけ親になってからも、半年に一度は車を飛ばし、半日かけてあおばに会いに行った。身体的事情を持っていなくとも、気軽に行ける距離ではない街で暮らす彼女。高知というさらに遠い場所へあおばが引っ越すことになったと知った時、心臓が飛び出るほど驚き、大きなショックを受けたそうだ。そして、彼女の心を痛めたのはそれだけではなかった。引っ越し先で名前が変わる。ひたすらに悲しみに暮れ、きっと藁にも縋るような思いで私にメッセージを送ってくれたのだろう。画面に表示された「改名はしないでほしい」というメッセージから、抑えきれない程の悲しみと苦しみが溢れ出ていた。

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