誰がなんと言おうとM−1優勝が目標! 勢いに乗るオズワルド【2021年8月「これからの芸人百景」第2回オズワルド】

7月に開催された『第42回ABCお笑いグランプリ』(ABC系)で見事優勝に輝いたオズワルド。取材を行ったのは決勝の約1週間前。この時点では「まだネタが決まっていない」と漏らしていたが、「優勝します」という言葉を実現させた。佇まいや芸風からは意外な気もするが、「今年M−1優勝できなかったら気が狂う」と話す野望を持つに至るまでの試行錯誤やライバルだと思っている芸人について語ってもらった。

企画・構成/竹村真奈 取材・文/村上由恵 撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

 

■おくりびとからチャンピオンへ

 

——2年連続ファイナリストを経験され、もはや『M−1グランプリ』(テレビ朝日系)の常連組ですが、M-1に対する意識はどう変わっていきましたか?

 

畠中 2019年は「決勝に行けた」っていう喜びだけで、やってやった感があったんです。でも結局7位。夢物語だと思っていた優勝が、少しだけ現実味を帯びてきた2020年は「優勝したい」という気持ちで臨みました。結局負けてしまったので、今年も「優勝したい」という気持ちはさらに強くなっています。

 

伊藤 人間というのは強欲なもので、やっぱり優勝したくなりますよね。テレビの前じゃなくて、目の前でチャンピオンが誕生するのを見て、「こんなにも悔しいんだ」と思いました。1回目より2回目が悔しいですし、今年負けたら、もう気が狂うと思います。

 

——自ら「(優勝者)おくりびと」と仰るように、2019年はミルクボーイさん、2020年はマヂカルラブリーさんのあとに、オズワルドさんというネタ順でしたよね。

 

伊藤 そうですね。これぐらいウケないと優勝できないんだということを体感しました。ウケ方でいったらミルクさんもマヂラブさんも、どっちもそんなに変わらないと思うんですけど、優勝する人のウケ方はこれ!と見せつけられましたね。

 

——歴代の優勝者で共通していることがあるとすればウケ方ということになるんでしょうか?

 

伊藤 そうですね。M-1って正直1stラウンドで優勝は決まると思うんです。でも去年は誰が優勝するかわからなかった。だからこそ、マヂラブさんはすごいんですよ。2本目のネタが始まった段階で「あぁ、マヂラブさん優勝するんだろうな」って思いました。

 

——M−1に向き合う姿勢は、NSCのひとつ先輩である川瀬名人(ゆにばーす)の影響とよくお話されていますが、最初に相談したのはいつですか?

 

畠中 そもそも最初は嫌われスタートなんです。

 

伊藤 『U−16(アンダー16)』という作家の山田ナビスコさんがやっている若手育成のためのユニットライブがあって、6年前ぐらいにナビスコさんが「オズワルドっていうのがいるから入れてやってよ」と川瀬さんに言ってくださったのをきっかけに、お誘いのLINEをもらったんですけど、俺と畠中はなんにもわかってなくて。

 

畠中 仲がいい先輩がまったくいなくて、ライブの情報として深夜に10日間ぐらい練習するっていう噂だけ聞いていたんです。

 

伊藤 それで「お断りさせていただきます」って長いメールを送ったら、いまだに言われています。

 

——それが昨年、川瀬さんが「note」に投稿された『オズワルドに死ぬほどムカついた話し』なんですね。

 

伊藤 そうです。何年も前の話を、昨日の怒りのように書くっておかしいですよね。でも、そこから徐々に仲よくなって、M-1の戦い方を教えてもらいました。

 

畠中 姿勢というか戦う背中を見させてもらってるという感じですね。「とにかくライブに出る」というアドバイスもありました。

 

■ネタをがんばるしかない東京よしもと若手のあるある

 

畠中 5年前ぐらいに『全国大会』という投票制でランキングが出るライブに初めて出たんです。結果は20組中ほぼ最下位。そのとき2位がカミナリさんで、優勝したのが錦鯉さん。こんなにすごい人たちがいっぱいいるんだって気づけました。

 

伊藤 これは、恐ろしく華のないネタでがんばるしかない僕らみたいなタイプのあるあるだと思うんですけど。少し前までのヨシモト∞ホールには、テンポがよくて、わかりやすいネタで、かっこよかったらランキングの上位にいけるという時代があったんです。だから、ウケなくても、ちゃんとお笑いをわかってる人の前ならウケると思ってたんです。でもそのライブに出て、全然歯が立たなかった。

 

畠中 ∞ホールのランキングももちろん大事ですから、どのライブでもウケるように試行錯誤していきましたね。特にM-1って2回戦、3回戦は熱いお笑いファンが観に来てるんで、ウケるときもあるんですけど、準々決勝、準決勝と進むにつれ、急にウケなくなるんです。そこの塩梅も絶妙ですよね。一般的なお笑いが好きな方と、本当に深いところまでお笑いが好きな方のバランスというか。

 

——やっぱりどこでもウケるネタが大事なんですね。

 

伊藤 それでも偏りがあるときはありますけどね。

 

畠中 全然女性にウケないとかね。和牛さんとか、こんな感じのお客さんならこのネタで行こうとかネタを変えてますもんね。

 

伊藤 それをやってる兄さん方は多いですね。早く優勝してそっちに行きたいですね。10分ネタをのびのびやりたいです。

 

——昨年M−1直後の『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)では、オズワルドさんに対して「声を張るな。優勝を狙うな」と言われていました。それを聞いたときはどう思いましたか?

 

伊藤 おぎやはぎさんが、どういうつもりで言ってるかわからないですけど、同じカテゴリーじゃないと思うんですよね。同じ括りにされることがイヤということではもちろんなくて、おぎやはぎさんの漫才はおぎやはぎさんにしかできないですし。実際、昔はおぎやはぎさんやポイズン(POISON GIRL BAND)さんに似てるとよく言われていました。ポイズンさんならまだわかるんですけど、おぎやはぎさんとの共通点って背が小さいほうがツッコミでメガネをかけているという点ぐらいだと思うんですよ(笑)。

 

畠中 ローテンションで東京の漫才師っていうイメージがあるから仰ったんだと思うんですけど、優勝は狙わせていただきます。

■「癒される」「面白い」と話題のラジオ番組

 

——現在ラジオ番組のレギュラーが、オズワルドのニューラジオ(YouTubeチャンネル『オズワルドのおずWORLD』)、ラジオ番組『ほら!ここがオズワルドさんち』(TBSラジオ『マイナビLaughter Night』内)、『エビ中☆なんやねん』(MBS系)、『レバレジーズpresents MUSIC COUNTDOWN 10&10』(Lucky FM 茨城放送)と4本もありますが、どのように話題を考えていらっしゃいますか?

 

畠中 近況を話すのは、YouTubeとTBSラジオだけなので、そんなに大変じゃないです。

 

伊藤 あと余裕で話題はカブってますね。

 

畠中 最近YouTubeは、好きな家具の話とかなんにも考えずに話してます。

 

伊藤 ラジオのいいところはそういうところですよね。普段のライブで10分ウケずに喋ってたら頭おかしいと思われますけど。

 

——聴く側もそれぐらいがちょうどいいですよね。7月からradikoでも聴けるようになった『レバレジーズpresents MUSIC COUNTDOWN 10&10』は、ランキングを使った音楽大喜利が新鮮でした。

 

伊藤 ある意味、一番お笑い色が強いラジオかもしれないですね。

 

畠中 音楽好きな人にとってはムカつくことをやってるかもしれないです。邦楽でやったらヤバイですけど、洋楽なら大丈夫かなと。

 

伊藤 洋楽も怒られるときは怒られるし、邦楽もやってるよ(笑)。

 

■M−1で戦いたくない芸人、ライバルだと思っている芸人

 

——この連載は、TV Bros.別冊『OWARAI Bros.』出張編企画でして、『OWARAI Bros.』は芸人同士の対談が軸となった雑誌なんですが、今後どなたと対談してみたいですか?

 

伊藤 カナメストーンさんです(即答)。

 

——ライバル視されてるんですか?

 

伊藤 いや、絶対に勝てないです。

 

畠中 M−1の決勝で戦いたくない相手ですね。一緒に出られたら嬉しいですけど、イヤですね。

 

伊藤 こういうことを聞かれたときに名前を挙げたい人はいっぱいいるんですよ。兄さんより、後輩の名前を出したほうがいいかなとか。いろいろ考えて、カナメストーンさんだったら誰も文句言わないと思うんです。「周りで一番面白い人誰ですか?」って聞かれたら「カナメストーンさん」って答えるし、みんな面白さを認めているので「なんで俺の名前じゃなくてカナメストーンなんだ」って思う人はいないでしょうね。

 

——では、おふたりのライバルは誰でしょう?

 

伊藤 真空ジェシカですね。他事務所ですけど同期なので。あと、お客さんとして見たときに面白いと思いますね。

 

畠中 ライブでバカみたいにウケるし、芸人が見ても面白い芸人です。

 

——ラジオの枠(『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』/TBSラジオ)を奪ってしまわれましたよね。

 

伊藤 奪ったわけじゃないです! ライバルを聞かれたら真空ジェシカの名前を出してますね。

 

(オズワルドと真空ジェシカのバチバチなやりとりは『ほら!ここがオズワルドさんち』2021年5月29日放送回でも確認できる)

 

伊藤 あとは空気階段です。

 

畠中 NSCからの同期ですからね。

 

伊藤 自分たちは漫才、空気階段はコントなんで、なかなか戦う機会がないですけど、もうすぐ『ABCお笑いグランプリ』があるので、同じ土俵で戦うのは最初で最後だと思います。蛙亭もさや香も、みんな同期でラストイヤーですけど、ここは負けられない。優勝したいですね。

 

オズワルド●ボケ担当・畠中 悠(1987年12月7日生まれ、北海道出身)とツッコミ担当・伊藤俊介(1989年8月8日生まれ、千葉県出身)によるコンビ。2014年結成。東京NSCで出会い、2019年『M−1グランプリ』決勝進出を皮切りに。2020年『マイナビLaughterNight』(TBSラジオ)第6回チャンピオン、2021年『ABCお笑いグランプリ』優勝と大活躍中。『ほら!ここがオズワルドさんち』(TBSラジオ 毎週金曜24:30〜)放送中。

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