いわい・ひでと●岩井秀人プロデュース「いきなり本読み!with 宮藤官九郎」2月13日(土)オンライン生配信決定(進行:岩井秀人 演出:宮藤官九郎 出演:中村獅童、平田敦子、富田望生、浅野和之/2月15日(月)23:59までアーカイブ配信あり)。チケットはZAIKO by ローチケにて販売中。
この連載を始めた頃には、まだちくわのイラストをかろうじて描き、その下に「すきなたべもの ちくわ10こ」と記していた我が娘も14歳となり、もはや立派な「女子」である。14歳ともなればちくわの絵もなかなか描かず、「カナヘイ」や『鬼滅の刃』などの絵を延々描いていたりする。学校の宿題をやらない理由を「友達への年賀状それぞれにイラストを描かねばならないから」と言い訳していた。これは父である男岩井も小中学生時代に何度か使った「宿題をできない」言い訳なのだが、全方向的になにも解決しない。
さて、そして我が社にはそんな我が娘をさらに10年、15年ほど成長させたほどの女性がおり、そんな先輩たちに、「反抗期とかなかった?」や「父親嫌いになったこととか、なかった?」と恐る恐る聞くと、やはり「父が汚い」と感じ始める時期があったとのこと。これは恐怖である。「娘に嫌われたくない」というのは、父という生き物全員が持つ本能なのではないだろうか。
しかし、周りの女性に聞いても、一概に「父親は必ず汚物扱いされる」とは限らないようだ。もちろん「洗濯物を一緒に洗われたらもうその服は着れない」まで言っているものもいれば、「臭いは臭かったけど(!)、別に嫌いにはならなかった」という寛容な娘までおる。「え〜、特に何も考えたことない」というのもあり、これはこれで恐怖であった。
思い起こせば最初に娘に「臭い」と言われたのは、かなり初期だった。それこそ「いつか臭いと言われるまでは!」という恐怖心から、大急ぎで4歳だか6歳だかの我が娘にほおずりしていたところ、「パパあぶらくさ~い」と笑顔で言われ、凍りついた。ただの「臭い」でも相当だったが、「あぶら」がついたことで、さらに深みが増した。もう一生近づいてくれないと、尼寺へ入ろうかと思った。が、意外なことにそれは翌日には忘れられ、その後もなんら我が娘は「あぶら臭き父岩井」に、躊躇うことなく抱きつき、「足持ってぶら下げてくれ」「一緒に風呂に入らないともうダメだ」というわがままを言い続けてくれた。
さて、現在はどうだろう。車に乗り込んでくる時は必ず「うぅ~!」と鼻をつまんで入ってくる。タバコの匂いが嫌なのだという。その度に「すまん! 我慢をしてくれ!」と言っている。これは幼少期から変わらないことで、どれだけ寒い冬でも、娘が乗る時は全ての窓を全開にして、妻と3人でギャーギャー言い続けてきた。「あぶら」とも「臭い」とも、あれから言われたこともない。や、言われてる。タバコに関しては会うたびに言われている。でもでも、男岩井のパーカーを、いつの間にか着ている時がある。服の趣味がちょっと近いのかもしれないが、着ようと思っていたパーカーを我が娘が普通に着て過ごしていた場合は、自動的に男岩井は他の服を探さなければならない。これは、弊社女性スタッフズに聞くと、結構珍しいケースのようだ。「間違っても父親の服は着ない」というのは、共通の見解だった。まあでも、時代的にも中学生女子とか、やたらデカいパーカーとか着ていたりするから、なんだかんだでサイズがちょうどいいのかもしれない。確実にタバコ臭いはずだが、それはどこかへ飛んでいってしまうのだろう。
あと最近、仕事部屋にふら~っと現れる。元引きこもりの部屋である。我が娘も片付けは苦手とはいえ、僕の部屋はなかなかに散らかっているし、居心地も悪そうだし、娘の知る限りどこよりもタバコ臭いはずだが、それも特に気にならないようで、なんか色々物色している。
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