第13回 どちらを選んでも最初っから正解なんて準備されていない2択の連続、それが人生。

ということで!
先月のマンガ業界全キャラでのMVPは、何といっても『コーポ・ア・コーポ』3巻でのカズオくんなんですが、皆さん読みましたか?

岩浪れんじ『コーポ・ア・コーポ(3)』(ジーオーティー)

カズくん最高なんですよ。身の周りに「理」で生きてる人間が少なすぎたまま大人になってしまったので、思考や行動を冷静に見ると完全なるクズなんだけど、その場の空気を読み取って半径5メートル以内だったら「人懐っこくていいところもある」形に収まるのがうまいし、妙なところに気を利かせることで第一印象だけは100点を取る能力が高い。そして「クズとしての思考の瞬発力」も高くて、自分をかわいがる決断に迷いがない。
カズくんだけじゃなく、この作品は本当にリアルな大阪の「マンガのネタになるほどではないクラスの低い人」がいっぱい出てきます。
自分も昼間は東大阪の町工場で働いているのですが、このタイプの人と毎日楽しく接していて、先週楽しかったのは、会社の備品を盗んで転売することで有名なくせに一向にクビにならないおじさんが新入社員に「あの梱包材を毎日1つずつ持って帰って、10個たまったら売るんや。元手がかからんし、3000円くらいになるで」とサラッと指導していて、素直に聞いていた新入社員が「元手が0円なのに3000円になったら、3000倍ですね!」と感心していたのが面白かったです。3000倍じゃないし会社のものを盗むな。
ちなみに社長は東大阪のマイルドヤンキーが暮らしやすいように尽力している人格者で、シングルマザーを口コミで集めて託児所を紹介しつつフレックスで働かせる部署を作ったりなど人間が最高なんだけど、コロナを除菌するネックレスを首から下げているし、毎日しゃべるパートのおばちゃんは「コロナには熱いお茶がいいらしいので毎日飲んでいる。ただ、猫舌なので少し冷まして飲んでいる」というパーフェクト免疫力対策をしているし、配送ドライバーのおじさんはソーシャルディスタンスの意味を全く理解できてなくて「テレビでもやってるから、俺も普通より車間距離を大きく空けて運転するように気を付けてる」らしく、安全運転でいいことだし、昨年末には「業務時間中の社内ダブル不倫セックスによる発覚即解雇」が出ました。この件については、また来月以降強引にねじ込もうかと思います。
『コーポ・ア・コーポ』、本当に説得力ある大阪描写なのでぜひ読みましょう。

あと、『あの人は血を求めてしまう』が全2巻で最高の完結を見せたので、こちらも一気読み必須です。

浦部はいむ『あの人は血を求めてしまう(2)』

(ジーオーティー)※2巻完結

リアルもフィクションも、何も悪いことをしてない人が「なぜこんなことになってしまったんだろう」と考える瞬間が一番キラキラしている。サクッと読める美しい物語なので是非。どちらを選んでも最初っから正解なんて準備されていない2択の連続、それが人生ですね(なんとなく意味があるっぽいことを言っただけで特に何も考えていません)。

話は完全に変わりますが、シエラレオネの巨大チンパンジー・ブルーノくん脱走事件が発生して10数年、とにかく「類人猿の戦闘能力と狡猾性とんでもねー!」と思い続けて今に至るわけですが、出ましたね、『ダーウィン事変』2巻!

うめざわしゅん『ダーウィン事変(2)』(講談社)

人間とチンパンジーのハーフであるチャーリーくんの学園生活、アニマルライツ・テロ集団、ヴィーガン、色々な問題が同時進行しながらも、この巻でもチャーリーくんの身体能力の高さ、特に人間の目から見た野生動物の「ワープ感」の描写はこの巻でもエキサイティングに発揮されていますので是非ご確認ください。ブルーノ君を知らない人はぜひ調べてみてください。知能の高い動物の巻き起こした、度を越したアニマルパニック大好き! 

劇画狼(げきが・うるふ)●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。もうすぐ、やまだ紫先生の、猫が出てくる未収録短編をまとめた本が出せると思います。超文化事業!

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『劇画狼の獣次元新刊漫画ガイド』

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TV Bros.編集部
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