2020年、オレがチェックしたあれやこれやTOP10(前編)【大根仁 2020年12月号 連載】

年末なので、【2020年、オレがチェックしたあれやこれやTOP10】みたいなのを書こうと、過去のインスタやツイッターを辿ってみたら、新コロによる緊急事態宣言以前の1〜3月に観たり聴いたり読んだりしたものが「え!? これ今年だっけ?」ってカンジで記憶が薄く【トンネルの向こう化】していた。まあ本当に変な年でしたね。

宮本浩次『ハレルヤ』MV

2020年、最初の仕事はエレカシ宮本浩次ソロデビューアルバムのリード曲『ハレルヤ』のMVだった。デビュー以来30年以上エレカシファンのオレとしては感慨もひとしおだったが、仕事は仕事!と割り切れるわけもなく、なんだかずっとフワフワしていた。今どき『傷だらけの天使』サンプリングなんぞ、いくらなんでも古いと思ったが、何故だかこの曲のデモを聴いた時に浮かんだのが、あの映像だった。宮本浩次が持つ危うさと色気の共存は、ショーケンに通ずるところがある。時々、俳優業もやる宮本浩次だが、オレは演技をする宮本には興味がない。でも探偵役は似合うような気がしていた。そんな思いが混ざったのと、さらに曲のイメージが“晴れているのになぜか土砂降りの朝”だったので、あんな内容のMVになりました。宮本本人もいたく気に入ってくれたようで、アルバムリリース後の取材では、このMVのことをよく話していた。「監督の大根さんの顔が良いんだよ。福々しいんだよね、あの人の顔」とか言ってて、石野卓球といい宮本浩次といい、オレの顔にはあるタイプのミュージシャンを惹きつける何かがあるのかな。

『パラサイト 半地下の家族』

え?これって今年だっけ!?の筆頭的作品。昨年末に試写で観た時は「こりゃ楽勝でカンヌパルムドール獲るだろうな」とは思ったが、オスカー受賞はマジで驚いた。格差社会と2つの家族を掛け合わせた見事な脚本だが、個人的には現代映画やドラマに欠かせない、脚本における“ツイスト”=“ストーリーが突然別方向に転換し、観客の予定調和を覆す手法”の技術が、異常なほど秀でていたと思う。あと、あまり語られないがポン・ジュノ監督のフェチズムというか変態性が、特に前半〜中盤のあちこちに散りばめられていて、それが女中が戻ってきてから始まる怒涛のツイスト展開に上手く反射されていた。

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