西野七瀬が「最高!」を使うようになったきっかけとは「今までは距離をとっていた言葉だったんですけど…」【映画『イチケイのカラス』インタビュー】

裁判所が必要と認めたときは、裁判所がその職権を行使し、当事者が収集してきた証拠を調べることができる。2021年4月クールに放送された『イチケイのカラス』(フジテレビ系)は、竹野内豊が演じるマイペースな裁判官・入間みちおが公判中に「職権を発動します!」と高らかに叫び、裁判所が主導して現場検証などの独自調査を行い、事件を解明していくドラマ。

裁判を舞台にしたドラマはこれまで数多くあれど、裁判官を主人公にした作品は非常に珍しく、そんな独自性が高く評価されたドラマ版を経て映画『イチケイのカラス』が2023年1月13日から劇場公開される。

(C)浅見理都/講談社
(C)2023 フジテレビジョン 東宝 研音 講談社 FNS27社 

あらすじ・・・入間みちお(演:竹野内豊)が、東京地方裁判所第3支部第1刑事部(通称:イチケイ)を去って2年。異動先の熊本で多くの「みちおの犠牲者 」を出したみちおは、岡山県瀬戸内の長閑な町に再び異動になっていた。異動早々、みちおの手元に上がってきた起訴状は、平凡な主婦が史上最年少防衛大臣・(演:向井理)に包丁を突きつけたという傷害事件。事件の背景には、近海で起きたイージス艦と貨物船の衝突事故が関係していた。不審点だらけの衝突事故だったが、裁判では貨物船に非があるという判決が下され幕引きとされていた。みちおは傷害事件に正しい判決を下すために、背景にある海難事故をもう一度調べようと動き出す。だが、イージス艦の航海内容は全て国家機密。みちおの伝家の宝刀「職権発動」が通用しない難敵であり、さらに防衛大臣が立ちはだかる…!!一方、坂間千鶴(演:黒木華)は、「裁判官は必ず他職を 2 年経験しなくてはいけない」 という慣習から、弁護士として活動を始めていた。配属先は……奇しくもみちおの隣町。やるからには素晴らしい弁護士になる!と燃える坂間は、そこで出会った人権派弁護士と新たにバディを組み、小さな事件にも全力投球していく。そんな中、町を支える地元大企業のある疑惑が浮かび上がり……。

みちおの異動先の岡山地方裁判所秋名支部の裁判官で、型破りなみちおに振り回されながらも正義感に目覚めていく赤城公子を演じる西野七瀬にインタビュー。今作の撮影エピソードのほか、2022年の活動やお気に入りカルチャーのほか、年末年始の反省と目標について語ってくれた。

取材・文/編集部
撮影/玉井美世子

西野 七瀬(にしの・ななせ)
●1994年5月25日生まれ、大阪府出身。『孤狼の血 LEVEL2』(21/白石和彌監督)では、日本アカデミー賞の優秀助演女優賞および新人俳優賞を受賞した。『恋は光』(22/小林啓一監督)でヨコハマ映画祭の最優秀新人賞受賞。NHK正月時代劇 『いちげき』(NHK総合・NHK BS4K)が2023年1月3日に、土曜プレミアム・映画公開記念『イチケイのカラス スペシャル』(フジテレビ系)が1月14日に放送される。

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作品に入る前に監督から「竹野内さんはすごいよ!」と聞いていたんです(笑)。


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━━映画『イチケイのカラス』に出演されます。連続ドラマで放送されていた作品ですが、既に出来上がっているチームに映画版から参加することに不安はありませんでしたか?

少しありましたが、(柄本)時生くんや(田中)みな実さんも映画版からの参加だったので、心強かったです。一人だけの参加だったら、また違ったと思いますが、実際に作品に入っても、すごく温かい現場だったので安心してお芝居に臨むことができました。

━━田中みな実さんとはトークバラエティ番組『グータンヌーボ2』(フジテレビ系)で共演されていますね。今回のお芝居での共演はいかがでしたか?

お互いに真剣にお芝居をしている姿を見るのが初めてだったので、不思議な感覚でした(笑)。法廷でのシーンですし、みな実さんが演じるのは裁判の被告人ということもあり、役柄も重めだったのですが、前室に戻ると普段通りのみな実さんでした。撮影の合間に私が買ってきた漢字ドリルをみんなで解いていたのですが、みな実さんは満点だったので、やっぱりすごかったですね。

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━━今作で西野さんが演じるのは主人公・入間みちおが赴任した地方裁判所の裁判官・赤城公子。演じるにあたり、どんなことを意識されましたか?

私が演じる赤城公子は入間みちお裁判長と行動を共にすることが多く、みちおの突拍子もない行動に驚く役柄なのですが、私もみちおの不思議な行動に「ありえない!」と驚いていたので、そのままのリアクションでお芝居することができました。実は、この作品に入る前に監督から「竹野内さん、すごいよ!」と聞いていたんです。

━━それはどんな意味での「すごい」ということだったのでしょうか?

監督が「いい意味で、竹野内さんは自由な方だから。近くでその様子を見れるのは良いことだと思うよ!」とお話しされていて。実際に撮影に入って、その言葉の意味がすごく分かりました(笑)。

━━例えばどんなことがあったのですか?

例えば、スタッフさんから「撮影始めますよ〜」と声をかけられているときに、竹野内さんが小部屋に入って「カチャン!」と鍵をかけちゃったんです(笑)。みんな慌てて「ちょ、ちょっと開けてください(笑)」と言ったらすぐに鍵を開けて出てきて(笑)。すごく面白かったです。竹野内さんが演じるみちおさんも自由だけど、竹野内さんご本人もふわふわ〜とされていて(笑)。話しかけてくださるし、私も話しかけやすくて。テレビで見ていた時に感じていたイメージよりもずっと気さくな方でした。

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━━撮影現場では、竹野内さんとはどんな会話をされましたか?

漁港のシーンの撮影中に、海にクラゲが泳いでいるのを見つけて「クラゲだ!」と言ったら、竹野内さんも来て、一緒に見ました。その時に竹野内さんは「泳ぎ早いな〜」と言ってらして。

ほかには「アリクイの威嚇、知ってる?」と急に聞かれたこともあって「知ってますよ〜、万歳するんですよね!」という会話をしました(笑)。セリフも大変そうなものが多く、私が邪魔しないように静かにしていたんですけど、竹野内さんから急にそういう質問をしていただくことが多かったです。嬉しかったけど、やっぱり掴めない方だな〜と思いました(笑)。

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━━独特な座長ですね。西野さんは主演作品での撮影現場での振る舞いにおいて、どんなことを意識されていますか?

私はまだまだ経験もないのですが、いっぱいいっぱいになることが多くて…。色んなところに気を配りたいと思っているけど、なかなかできていないなと思います。

━━現場ではどんなコミュニケーションの取り方をされるのでしょうか?

今思えば、私も共演者の方々によく分からない質問をすることがあるかもしれません(笑)。今回の現場でも、柄本さんに「お金って、何に多く使ってますか?」と聞いたことがあって。皆さんがどんなことに使っているのかが気になって聞いたのですが、柄本さんはびっくりされていて。あまり良くない質問だったのかな?と反省しました(笑)。

━━ちなみに西野さんは何にお金を使いますか?

趣味に使うことが多いですね。謎解きや旅行が好きなのですが、旅行に行く時は後悔したくないからホテルにもご飯にも、惜しまずに使うようにしています。今年は夏に北海道や静岡に行ったのですが「飛行機代って高いんだな〜」と久しぶりに感じました(笑)。

                      

2022年を振り返って
「最高だった!」


━━2022年はヒロイン・北代を演じた映画『恋は光』がヨコハマ映画祭で日本映画ベストテンで第一位に輝き、西野さんも最優秀新人賞を受賞しました。公開前の今年5月に実施したインタビューで「手応え」について聞いたところ「手応えは分からないけど…この映画が好きです」とお答えされていましたが、改めて手応えはいかがですか?

嬉しかったけど、驚きが強かったです。賞のために作品を作っていたわけではないからこそ、賞として評価していただけたことが嬉しいです。

━━西野さんはお芝居をしている時に「手応え」を感じる瞬間はどんな時ですか?

手応えは…お芝居という面では、分からないかもしれません。自分では良かれと思っていても自分以外は別に良くないという時もあるし、その逆もあって。これはもう永遠に分からないものかもな、と感じています。でも自分が感じた良い・悪いではなくて、作品を観た方が言ってくれた言葉は刺さりますね。良いことも、悪いことも。

━━もうまもなく2023年ですが、西野さんは新年になると毎年目標を立てられますか?

全くです。普段から目標もあまり決めない人間なので、毎年こういう質問をしていただくんですけど、その度に何もないから申し訳なくなるんです…(笑)。

━━逆に私は「もう今年が終わるけど何もやってない…」と感じることもあって。西野さんは年末になるとその一年の“反省”はされますか?

反省は今は、しないです! 「楽しかった〜、最高だった!」で毎年終わってます(笑)。

━━かっこいい。

絶対その方がいいんですよね〜(笑)。「あ〜、アレあったな…」みたいに考えてしまうような細かいことはもう忘れて「最高だった!」で終わるように毎年やってます(笑)。

━━その考え方に励まされます。

「最高」という言葉がすごく好きなんです。今までは「最高」という言葉からは距離をとっていて「簡単には言わないぞ!」と、ずっと思っていたんです。でも使ってみたらすごく良くて(笑)! それからはよく使うようになりました(笑)。

━━例えばどんな時に「最高」を使われますか?

褒める時とか流れが良かった時とかに使います。趣味で謎解きをするのですが、仲間が良い手柄を挙げてくれた時に「最高!」と褒めあったり(笑)。口にも出すし、メールでも使います。言っても嬉しいし、言われても嬉しい言葉だから「いっぱい言おう〜」と思いました。

                        

2022年に聴いた「音楽」


━━西野さんには去年2021年10月に“漫画”をテーマにインタビューさせていただきましたが、その際に教えていただいた『御手洗家、炎上する』が非常に面白かったです。

面白いですよね〜。実写化されますね!

━━今年2022年7月に実写化されることが発表されたので、西野さんの漫画セレクトセンスがやっぱりすごい!と思いました。

いやいや、作品自体が実写化向きだったのかと(笑)。私もこれは実写化しそうだなと思って読んでいました。

━━2022年に触れたカルチャーを教えていただきたいのですが…例えば「音楽」ではどんなお気に入りがありますか?

音楽で言えば、私は昔の曲を漁っていく傾向があるんです。何かのきっかけで知ったものを「いいな〜」と思ったらその曲を調べて聴くことが多いです。最近は、岡本真夜さんの『サヨナラ』という曲を聴いています。母がカラオケで歌っていて「めっちゃいい曲だな〜」と思って聴くようになったんです。すごく良いんです、ぜひ(笑)!


【作品情報】


 

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映画『イチケイのカラス』

2023年1月13日(金)公開


出演:竹野内豊 黒木華 
作:浅見理都「イチケイのカラス」
(講談社モーニングKC刊)
監督:田中亮
脚本:浜田秀哉
製作:フジテレビジョン 東宝 研音 講談社
配給:東宝
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予告動画

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