ハリウッドザコシショウが語る田村正和さんへの想い「僕は田村さんの演じる古畑が大好きなんです」

2021年4月3日、心不全のためこの世を去った俳優・田村正和さん。生前交流のあった著名人の方々が追悼コメントを発表するなか、田村さんの代表作『古畑任三郎』のモノマネで大ブレイクしたハリウッドザコシショウさんの発言にも注目が集まりました。田村さんの訃報について未だ沈黙を貫くザコシショウさんにその想いを聞くため、TV Bros.編集部はインタビューを申し込み、「古畑」モノマネの今後や田村さんへの想いを語っていただきました。インタビュー後には、渾身の古畑ものまねをグラビア撮影させていただきました。

撮影/ツダヒロキ 取材・文/井上佳子

【プロフィール】
ハリウッドザコシショウ(はりうっどざこししょう)
●1974年生まれ、静岡県清水市(現静岡市清水区)出身。
1992年、大阪NSC11期生として入学。1993年デビュー、G★MENSとして活動。2002年コンビ解散、ピン芸人に。TBS「あらびき団」に2007年初回から出演。関西テレビ「R-1ぐらんぷり2016」にて42歳で優勝、史上最年長の王者となる。

                     

僕は田村さんの演じる
古畑が大好きなんです


──5月に田村正和さんの訃報が報じられた際、ザコシショウさんのコメントに注目が集まりました。

ザコシショウ:エゴサーチが日課なので、田村正和さんの訃報が報じられたときは「ザコシはなぜコメントを出さないんだ」というツイートを見かけて、そういう意見があることは知っています。でも僕なんかが田村さんについて何か書けるわけがない。いまどきは、めでたい話も謝罪も、何でもかんでもSNSで済ます人が多いけど、田村さんと面識さえない、ただモノマネをしているだけの僕が安易にSNSでコメントを出すほうがあかんやろうと思ったんです。

──「ザコシは当分、古畑のモノマネはできないだろう」というツイートも見かけました。

ザコシショウ:僕のモノマネに田村さんを揶揄するような失礼な気持ちがあるなら話は別ですけど、僕は田村さんの演じる古畑が大好きなんです。それなのに、「お亡くなりになられたから、もうモノマネはしない」ということほど残念なことはないと思うんです。だってそれって、ひいては存在を否定することになりかねない。僕の心の中で、古畑任三郎は今も生きているのに。

──田村さんの訃報を受けて、古畑ネタをどうするか、芸人仲間から何か言われましたか?

ザコシショウ:芸人は芸人の意図を察しますから、世間の声については何も言わないですよ。田村さんが亡くなった後に古畑ネタを披露するテレビ収録もありましたが、みんな面白がってくれました。舞台に立つとちょっと失礼な発言をするのがボケになりますけど、本気で失礼なことを思って言うような芸人は誰もいないって、みんな分かってますもん。

──今後もザコシショウさんが古畑モノマネを続けられるとわかって、ホッとしました。

ザコシショウ:ガンガンにやりますよ。封印するなんて、これっぽっちも考えてないです。

「誇張しすぎた古畑任三郎」
モノマネ誕生秘話


──ザコシショウさんにとって田村正和さんの魅力はなんでしょうか?

ザコシショウ:たくさんありますね。『パパはニュースキャスター』(フジテレビ系)や『眠狂四郎』(テレビ朝日系)シリーズといった、おちゃらけ要素ゼロの二枚目役を演じる田村さんは、お芝居の凄ましさは言うまでもなく、とにかくかっこいい。そんな田村さんが『古畑任三郎』(フジテレビ系)みたいなおもしろいキャラを演じる、というのがやはり最大の魅力ですよね。かっこよすぎるとモノマネもしにくいけど、何より古畑はモノマネもしやすい。

──「古畑」が放送されていた当時はモノマネしようとは思わなかったんですか?

ザコシショウ:その頃はとんねるずの石橋貴明さんや木村拓哉さんといった超有名な方がモノマネされてましたから、芸人になりたての僕がやるのは、ベタ過ぎて恥ずかしかったかな。

──では、どういうきっかけから「誇張しすぎた古畑任三郎」が生まれたんでしょうか?

ザコシショウ:毎月新ネタをおろす事務所主催ライブのために『北斗の拳』のキャラ漫談みたいなのを用意して後輩に見せたんですけど、その後輩の彼女に「これ、何のモノマネなの?」と言われて、誰にでも理解できるものでないとダメなんだなと思ったんです。そのときたまたまテレビで古畑の再放送をやっていて、それをオーバーに真似したらみんな笑ってくれたんです。

──運命の出会いですね!

ザコシショウ:それだけじゃないんです。吉本興業に所属していた頃、僕の大喜利の回答にチャンバラトリオの南方英二師匠が無理やりコメントしようとして悩まれてしまったことがあったんですね。「うーんうーん…ハンマーカンマー…」みたいな。なので、僕の中では「悩む=ハンマーカンマー」になって。

──誰も共有できない「イコール」ですね(笑)。

ザコシショウ:いや、その場にいたケンドーコバヤシには共有してましたよ(笑)。「おい、南方師匠、ハンマーカンマー言うとるだけやないか!」って。そこから「ハンマーカンマー」という寝かしていたギャグを「眉間に手を当てながら考える古畑」とミックスさせたんです。

──古畑と南方師匠の、まさかの邂逅ですね。

ザコシショウ:なので古畑ネタは、後輩の彼女が『北斗の拳』モノマネを「面白い!」と言っていたら生まれてなかったかもしれないですね。

ザコシショウが選ぶ
「古畑任三郎 THE BEST」


──『古畑任三郎』シリーズで、ザコシさんの好きな回を教えてください。

ザコシショウ:澤村藤十郎さん演じる骨董商が犯人だった回ですかね。今泉(演:西村雅彦)くんがオークションで「蹲る(うずくまる)」という壺を買ったんですが、それを見て謎解きに閃いた古畑が立ち上がるか何かした勢いで、壺が割れちゃう。それで今泉くんがめちゃくちゃ文句を言うっていう!

──第二シリーズの第七話「動機の鑑定」の回ですね。「蹲る」という言葉自体が大きなヒントになるんですよね。

ザコシショウ:そうそう! あとは、木村拓哉さんの回ですね。木村さん演じる研究者の犯行動機を知った古畑が、木村さんの頬を最後にパーンと殴る。古畑が犯人に手を出すなんて、あの回くらいですよね。

──古畑が怒りを露わにする珍しいシーンです。ではその2つがベスト回ですか?

ザコシショウ:いや、僕にとっての1位は堺正章さんの回かな。追い詰められた堺さんが首の後ろ辺りから声を出してるんですよ。あれがもう、おかしくて。

──堺さん演じる歌舞伎役者と舞台のトリックが印象的でしたね。主に初期から中期頃のシリーズがお好きなんでしょうか?

ザコシショウ:全部好きですよ。田村さんの訃報が報じられてから再放送もあり、久しぶりに見られた方も多いかと思いますが、僕は定期的に見てるんです。陣内孝則さんが数学者を演じた回、SMAPの回など、長編も大好きですし…。ただ全般的に、シーズン1の頃は田村さんもまだ、古畑を完全には自分のものにしてないような、まだちょっと固い感じが漂うのが逆に魅力的で好きかもしれない。田村さんのすごいところは、どんなシーンも“田村正和”の瞬間がないところ。いついかなるときも、すべてが『古畑任三郎』に徹してるんです。

         

僕をきっかけに田村さんが残された
素晴らしい作品に興味を持ってもらえたら


──先ほど、田村さんにはお会いしたことがないとおっしゃっていましたが、番組での共演経験はなくても、例えばテレビ局で「あちらの楽屋に今、田村さんがいらっしゃるからご挨拶してきたら?」というような機会もなかったんですか?

ザコシショウ:全くなかったですね。僕が世に出られるようになってからは、もう古畑自体、放送もしてませんでしたし、そもそも田村さんがバラエティに出られるということもまずなかったですから。仮に「あの楽屋にいらっしゃっていますよ」と言われても、僕なんかとはステージが違い過ぎてドアをノックするのすら失礼な気がして、恐れ多いですね。いつか共演させて頂く機会があったらいいなあ、とは思ってましたけどね。

──最後に、改めて田村正和さん追悼への思いをお聞かせいただけますか。

ザコシショウ:晩年はあまり表舞台に出ていらっしゃる機会が多くなかったのは、元気のない姿をファンに見せたくなかったのかな…。演者としての引き際というか、プライドだったのかもしれないですよね。それがないと、ああいう唯一無二の俳優にはなれないんでしょうし、仕事に対して厳しい人柄が伺えますよね。叶いませんでしたけど、一度ご本人の前で、お会いして古畑のモノマネをしてみたかったですね。それで、一瞬でも僕の芸で笑って頂けたら嬉しかったです。

──ちなみに、このインタビューを企画した担当編集は現在25歳なんですが、『古畑任三郎』シリーズをリアルタイムで見たことがなく、古畑と言ってイメージするのは、ザコシさんのモノマネなんだそうです。

ザコシショウ:ははあ~、なるほど! そうか、そういう人もいるんでしょうね。

──今後、そういう世代も増えてくると思いますが、そのような人たちに対して何か思うところはありますか。

ザコシショウ:「こんなに面白い作品があったんだよ」ということを、若い世代にも伝えていければいいですね。単にドラマのことを伝えるだけなら、ドラマの評論家がやればいいことだけど、それを面白そうに伝えるのが僕の役目だと思うんで。おかしな誤解を招かないようにする責任もありますけど、僕をきっかけに『古畑任三郎』に、そして田村さんが残された素晴らしい作品に興味を持ってもらえたら、それでいいんだと思います。

                     

古畑任三郎追悼グラビア


『古畑任三郎』シリーズと田村正和さんへの深い愛を語っていただいたハリウッドザコシショウさん。
インタビューの後に「誇張しすぎた古畑任三郎モノマネ」の衣装で撮影させていただきました。

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