芸能生活20周年を迎えた「しょこたん」こと、中川翔子。歌手としてはもちろん、タレント、声優、女優、イラストレーターなど、ジャンルレスに活躍している。今YouTube登録者数95万人越え、10年ぶりの写真集はミラクル大ヒットと、20年を経てもなお飛ぶ鳥を落とす勢いの彼女が、これまでの音楽活動を網羅したベストアルバムをリリースするということで直撃インタビュー! TV Bros.では、新作への思いを語る【前編】と、しょこたんの魅力に迫る20の質問をぶつけた【後編】(明日2月18日配信)にわけてお届けします!
構成・取材・文/かわむらあみり 撮影/土佐麻理子
歌は“目に見えない魔法”みたいなもの
――2023年2月22日に、デビュー曲から最新曲までが収録されたベストアルバム『超!しょこたん☆べすと――(°∀°)――!!』をリリースされますね。
デビューしてから、ずっと生きた証を残すことを目標にしてきたんですが、歌のおかげでたくさんの方と出会えました。最初の頃に応援してくださっていたファンの方同士で結婚して、今はお子さんを連れてライブに来てくれるようになった方もいて、みんなで一緒に時を重ねてきた証がこのベストアルバムに凝縮されています。
2月22日という「猫の日」にリリースするのも猫が大好きだからうれしいし、父がデビューをした日も2月22日だったらしいので、不思議な気持ちに。最初は先のことを考える余裕もなく、怖くて自信がなくて、自己肯定感が低くて大変だったのに、ここまでくることができました。こんなふうに歌える人生で本当に良かったなって、すごく幸せを噛み締めていて。今ようやく立ち止まって、深呼吸をすることができたように感じます。
――最初の頃は自信がないときもあったとおっしゃっていましたが、CDデビュー作となった、2006年の1stシングル「Brilliant Dream」をあらためて今聴いてみると、また響き方も違うのではないでしょうか。
そうですね。声も全然違います。この頃は「私なんかがステージに立つなんて恐ろしい!」と、ライブの出番の直前まで泣いていました。でも、ステージで衣装を脱ぎ捨てて猫に変身する演出があったことを覚えているんですが、歌い出すと“変身する”感じがして楽しかったんです、スイッチが入るんですよね。歌っている時は生きていることを強く実感できるから。この曲は当時「え、トランスの曲なの?」とびっくりしたこともあったけど(笑)、今歌うと、エモいんですよね。
でも、私のことを認識してくださった方って、きっと歌よりもブログやテレビのバラエティ番組だったり、最近はYouTubeだったり、いろいろなところから知ってくださる方が多いのかなと。歌は“目に見えない魔法”みたいなものだと思っていて、見えないけど確かにそこにあって、息遣いや声はその瞬間しか作れないものですし。今回のベストアルバムがいいきっかけになって、私が歌を歌っていることも知ってもらえたらうれしいです。
――収録曲の中で、とくに印象に残っている楽曲はありますか。
7枚目のシングル「綺麗ア•ラ•モード」ですね。作詞を松本隆さん、作曲を筒美京平さんに作っていただいて、レコーディングのときは緊張して萎縮してしまって。松本先生に「へたくそ」と言われて、あきれられちゃったんですよ。でも、時を重ねて武道館公演でこの曲を歌ったときに「すごく良かったよ」と声をかけていただけるようになったんです。人生が進んでいくと、歌が意義深く響いてくれるようになりました。
たくさんの方のエールに「生きていて良かった」と実感
――ベストアルバムは「DISC1」と「DISC2」、完全盤には「DISC3」もありますね。
「DISC1」にはずっと憧れていた夢を叶えていく瞬間の楽曲が収録されていて、「DISC2」には子どもたちに夢を託して届けたいという思いに変わっていった時期と重なる楽曲が収録されています。私はバラエティ番組に出ているだけの存在だったらもう消えていたと思いますし、歌が好きで歌があったから活動を続けてこられて。もともとコロナ禍に入って仕事がほとんどなくなってしまったときに、仕事がないなら自分から発信しようと思ったことがきっかけでYouTubeを始めたら、今ではそれがすごく楽しくなりました。
――そういった意味では、まだSNS黎明期の2004年から、いち早く「しょこたん☆ぶろぐ」を始めていますが、始めた理由はなんでしたか。
当時は仕事もなく、それは「学校でもうまくやれなかった自分は仕事もうまくいくわけない」と、世界を呪うぐらいの勢いでいたんです。でも、「逆に怖いものなんてないんだから、やりたいことを言って、やってから仕事をやめよう」と思い直して、まだブログという言葉がない頃ぐらいに始めました。学生時代に学校で言えなかった「アニメが好き」という気持ちも全部ブログに書いたんです。すると、「私も好きです」と言ってくれる人にたくさん出会えて。
それまでは自分の夢が叶ったことがなかったのに、ブログで言ったことがどんどん形として叶っていって。「歌を歌いたい」「アニソンを歌いたい」という夢も叶いました。代表曲の「空色デイズ」はブログから引き寄せがあったのかもと思っていますし、この曲があったおかげで、海外でもたくさんライブができました。最近は若い世代の方が私のことを歌から知ってくれる方もいて、うれしいですね。それだけ、歌はずっと残るものだから。
これまでにいっぱいピンチもありましたが、気づくと大きな波に助けてもらったなって。最近では今年の1月に手術のために入院して、先日退院したばかりなんですが、たくさんの方にエールをいただいて、本当にファンの方の声が元気玉になるんですよね。無事退院できて「また歌えるんだ」と思うと、涙が出てくるぐらいうれしかった。
昔は自分のことが好きになれなかったけど、今はたくさんの方のエールのおかげで「生きていて良かった」と思います。だから、今までだったら、療養中もぼーっとしていたかもしれないんですが、せっかく時間があるんだからと『機動戦士ガンダム』を全話観て、他にもいろいろなアニメを観てヲタ活をして(笑)。生きるのが楽しいんですよね。
――「生きるのが楽しい」とは、いい言葉です。
昔の自分に、このベストアルバムを渡しても、信じないと思うんですよね。いろんなことがありましたし、さまざまな場所に行けて、たくさんの人に出会えて、すごく幸せです。
――今の時代は、「推し活」という言葉も出てきたぐらい、ライトに好きなものを掘り下げる方も結構多くなっています。20年前からブログをやって、深掘りした活動をされてきた翔子さんは、この時代の移り変わりをどんなふうに感じてきましたか?
同級生の友人とも話すんですが、私たちは「いい時代に生まれたよね」って。アナログも味わって、そのあとにネットが入ってきて、今は思いっきり好きなように好きだと叫べるっていうことも全部味わえているから。もともとネットがある世代はZ世代ですが、昭和も知っているし、平成の初期も知っているし、変わっていった最中と令和と今を駆け抜けて、私はすっかり大人になりました(笑)。この移り変わる時代の中で、一番いいとこ取りができているんじゃないかなと感じます。
歌詞を手がけた新曲は“TikTokっぽさ”を意識
――今回、翔子さんが作詞を手がけた新曲もありますね。完全盤の「DISC2」のみに収録されたスピード感のあるおしゃれな新曲「ヌマルアクマ」についてもお聞かせください。
新曲は最初「平和をテーマに作詞して」と言われていたのに、なんかこうなっちゃったんですけど(笑)。今までのシングルを一覧で見ると、真面目な印象なんですよね。逆にカップリング曲やアルバム曲で、ダンス曲とか元気な曲をやることが多かったんです。今までは曲によって声が変わることが悩みでもあり、でも一発で私だとわかる曲も欲しいと悩んだり。そんなとき、ヒャダインさんに以前「今の子どもたちにとってはアニソンのお姉さんなんだから、気にしないで歌ってみて。あなたの個性があるよ」って言ってもらえて、すごく気持ちよくレコーディングできたことを覚えていて。
でも、アニメ曲のレコーディングをするときに、いつもタレントの方の顔が浮かぶのは嫌なんです、ヲタクマインドとして。だから、自分の“しょこたん感”を消して「え? しょこたんだったの?」となったら勝ちと思って歌うことが多くて。いろいろなことを考えて、今回は“TikTokっぽさ”を意識して、力を抜いた感じで、あえて引き算して歌いました。「悪魔と恋はイヤ?」というサビの部分が耳に残ってくれたらいいなと。ちょうどその頃アニメ『チェンソーマン』にハマっていて、可愛い女の子が出てくるのにグロテスクでいいなと、影響されて、こうなりました(笑)。
――好きな人には悪魔になるという、恋する女の子の気持ちを表現している歌詞ですね。
はい、頭の中だけなら、何を考えても自由だから、女の子の本音といいますか。結局、清楚っぽい人が一番えぐいじゃん、と思っていて。本当は頭の中でいろいろ考えるよねっていうことでこの歌詞になりました。でも、もしかすると原点回帰かも。私はすごくホラー漫画が大好きで、美少女も好きで、そういうイメージで好きな世界をそのまま書いています。女の子の恋心を振り切って書いたほうが楽しいから、けっこうスラスラと歌詞が浮かんで書き上がりました。
――でんぱ組とコラボした「しょこたん🖤でんぱ組」名義の「PUNCH LINE!」や、小林幸子さんとコラボした「しょこたん🖤さっちゃん」名義の「無限∞ブランノワール」や、同じく小林幸子さんといっしょに歌った「風といっしょに」なども収録されています。
でんぱ組さんとコラボしたのも懐かしいですねぇ。今はメンバーが変わっていますが、いまだに近所に住むメンバーの子はうちに遊びに来ることもあって、交流は続いています。私は一人っ子なので、ずっと一人で育って活動してきたから、みんなで頑張るという概念がわからなかったんです。でも、でんぱ組のみんなとの時間はとても楽しくて、「グループで活動するのもいいかもな」なんて思ったりしました。
小林幸子様とのコラボは、一曲目のリリース時に一人で全国のリリースイベントで歌うことも多かったのですが、中野サンプラザの前でイベントをしたときは、幸子様も来てくださって。そのご縁がここで終わらなくて、これがあったから「風といっしょに」というポケットモンスターの映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』の主題歌をいっしょに歌わせていただくという、白羽の矢が飛んできて、びっくりしました。私の人生を変えてくれた映画のリブート作品の主題歌を自分で歌うことになるとは、人生は何があるかわからないなって。
――完全盤に収録された「DISC3」は、セルフカバー曲集なんですよね。
そうです。1日に2曲ずつぐらい録っていって大変だったんですが、リリース当時と今は全然声が違っているのも聴き比べてみてほしいですね。ファンの方の投票で選ばれた楽曲をセルフカバーしていて、とくに「calling location」という、私自身も大好きな曲も収録されています。歌っていると、ライブで歌った景色や光が蘇ってきたので、すごく楽しく録ることができました。「空色デイズ」は、何百回歌っても、空の色みたいに新しい発見があるので、歌いあきることは絶対ない曲。だからこそ、セルフカバーも難しかったですね。
――今後、ベストアルバムのツアーは考えているのでしょうか。
やりたいですね。こうやってベストアルバムという形になったからこそ、ライブハウスとかでガンガン歌いたいな。東名阪ツアーとかはやってみたいですね。
【information】
中川翔子
『超!しょこたん☆べすと――(°∀°)――!!』
2023年2月22日発売
(通常盤)
SRCL-12366〜67(2CD)
3,980円(税込)
(収録曲)
【DISC1】
- Brilliant Dream
- ストロベリmelody
- 空色デイズ
- snow tears
- Shiny GATE
- 続く世界
- 綺麗ア・ラ・モード
- 涙の種、笑顔の花
- 心のアンテナ
- 「ありがとうの笑顔」
- RAY OF LIGHT
- フライングヒューマノイド
- 桜色
- つよがり
- ホロスコープ
【DISC2】
- 続 混沌
- さかさま世界
- Once Upon a Time -キボウノウタ-
- PUNCH LINE!
- 無限∞ブランノワール
- ドリドリ
- blue moon
- 風といっしょに
- タイプ:ワイルド
- フレフレ
- 君のまんまが いいんだよ
- ヌマルアクマ(新曲)
※ Disc1〜2は全形態共通。
(初回生産限定盤 A)
SRCL-12357〜59(2CD+Blu-ray)
5,980円(税込)
(初回生産限定盤B)
SRCL-12360〜62(2CD+Blu-ray)
5,980円(税込)
(初回生産限定盤C)
SRCL-12363〜65(2CD+Blu-ray)
5,980円(税込)
(超!完全生産限定盤)
SRCL-12352〜56(3CD+Blu-ray+フォトブック+グッズ)
19,800円(税込)
【DISC3】
1.空色デイズ
2.pretty please chocolate on top
3.涙の種、笑顔の花
4.午前六時
5.綺麗ア・ラ・モード
6.Brilliant Dream
7.calling location
8.みつばちのささやき
9.ストロベリmelody
10.RAY OF LIGHT
※ Disc3は完全盤のみ収録。
(PROFILE)
中川翔子(なかがわしょうこ)
1985年生まれ、東京都出身。歌手・タレント・声優・女優・イ ラストレーターなど、ジャンルレスに活動し、多数のバラエティ番組にも出演中。音楽活動も精力的に行っており、人気アニメや映画の主題歌も担当。海外でのコンサートも数年にわたり行い、人気・知名度は世界にも広がっている。2023年に100周年を迎える東京・日比谷野外音楽堂の100周年記念事業実行委員に選任された。自身のYouTubeチャンネル「中川翔子の『ヲ』」は登録者数95万人を超え大盛況。。
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