90歳の脚本家、「呪術迴戦0」を観に行く。

日本のアニメ史で記憶に残る名作として語り継がれ、また1979年の邦画配給収入で1位を記録した劇場版『銀河鉄道999』。脚本を手掛けたのが石森史郎だ。90歳を迎えて、超ベテランの域に入っているが、今なお精力的に執筆を続ける現役の脚本家でもある。後進の指導にも力を注ぎ、脚本家の伴一彦は石森の弟子で、孫弟子に野島伸司がいる脚本界の重鎮でもある。そんなベテラン脚本家に、現在快進撃を続ける『劇場版 呪術廻戦 0』を観てもらおうと思い立った。

『呪術廻戦』は、単行本の累積発行部数が6,000万部を超えた週刊少年ジャンプの看板連載マンガだ。テレビアニメ化もされ、同じジャンプ作品である『鬼滅の刃』に続き、メガヒットを記録。『劇場版 呪術廻戦 0』は、原作者の芥見下々が連載前に描いた前日譚を原作とするアニメ映画となる。主人公は、テレビアニメの方ではほとんど姿を見せなかった乙骨憂太。最も愛する呪われた幼馴染との関係を縦軸に物語は進む。また『新世紀エヴァンゲリオン』のシンジ役であった、緒方恵美が乙骨を演じるのも話題である。
興行収入も100億円を突破した令和の大ヒット作は、はたして名脚本家の目にはどう映ったのだろうか?

<プロフィール>
石森史郎(いしもり・ふみお)●1931年(昭和6年)北海道生まれ。脚本家。テレビ『ママちょっと来て』で脚本家デビュー。日活では、石原裕次郎や吉永小百合の主演映画などを手掛け、松竹でも『約束』『旅の重さ』などの色褪せない名作も執筆。『銀河鉄道999』『ボビーに首ったけ』といったアニメ映画から、特撮『仮面ライダー』『ウルトラマンA』など幅広く活動。大林宣彦監督とも『青春デンデケデケデケ』をはじめ、5作品の脚本を担当した。平均視聴率40.1%を獲得した大竹しのぶ主演の連続テレビ小説『水色の時』は、昭和天皇が大変気に入り、アメリカへ訪問するときに録画を侍従に頼んだエピソードも。これまで手掛けたテレビ脚本は1,000本。映画は100本。舞台は50本。

取材・文/高達 俊之

『呪術廻戦 0』は飛んでいる

──映画をご覧になっていかがでしたか?

素直に率直に裏読みもしないで感動した。それが偽らざる僕の感想。

完璧な青春映画だったよね。自分の歩く道を信じてまっすぐに歩く。ときには、よそ見をすることもある。でも、これも人間。ちゃんと人間が描かれている映画だった。

内容も、すごい飛んでいたね。一緒に僕も飛びながら観ていましたよ(笑)。勢いもあるし、映画というのはテンポが滞ると底が見えてしまうんだよ。今回のスタッフは、そこをじゅうぶん分かっている感じがしました。だから、無条件に映画に乗って観ていられるんだ。理詰めになってしまうと、説明しなくちゃいけない。テンポも崩れるし、しかも説明してしまうと先が分かってしまう。今回の映画は、絶対に先を分からせない作りになっていて、勢いのある今どきの代表的な作品になっているよね。

主人公である乙骨憂太は、最初は自分ひとりで何もできなかったのが、仲間との出会いや出来事を通して成長していく。その意味で乙骨憂太は『銀河鉄道999』の鉄郎だった。男女が離れよう離れようとすると、くっついてしまうという展開も劇場版『銀河鉄道999』(※注釈1)を思い出したよ。ただ、僕の作品と違うのは、青春の典型である恋愛。恋愛をきっちり絡めている。あれが良かった。2時間程度の尺の中でうまくまとまるのかな? と心配しながら観ていたんだけど、納得の行く結末になっていたし。

<注釈1>
●劇場版『銀河鉄道999』
1979年公開。松本零士原作のSFアニメ『銀河鉄道999』を映画化。監督のりんたろうを始め、新規に精鋭スタッフが集められ、装いも新たに公開された劇場版はアニメ史に残る名作となる。ハーロックやトチロー、エメラルダスなどの作品の壁を超えたキャラクターも登場。機械の身体を貰える星を目指し、鉄郎とメーテルを乗せた銀河超特急999号の旅は続く。ゴタイゴの主題歌も大ヒットした。

大島渚に『呪術廻戦 0』を見せたかった。


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