平成レトロの時代に流行したタレントショップ、そこで生きぬいた加藤茶、そして志村けんのグッズたち

今年、「志村けん大爆笑展」が8月に大阪、10月に東京と行われました。こちらは来年5月まで全国各所で開催される予定となっております。こちらで注目を集めたのが、会場で販売された変なおじさんやバカ殿様などのキャラクターを使ったグッズたちです。今でも一部の商品はオンラインで販売されていますが、「DAFFUNDA」や「DAIJOBUDA」と刺繍された会場限定のNEW ERA キャップなど、斬新なデザインが話題を呼びました。
しかし、今話題となっている平成レトロの頃はタレントショップが全盛だったにも関わらず、志村けんさんよりも、コンビで活動されていた加藤茶さんや、番組で共演されていた田代まさしさんがイメージされます。その頃の「加トケン」は、どんなグッズを売っていたのでしょうか。

 

写真・文/山下メロ

 

◆ザ・ドリフターズから加トケンへ

お笑いテレビ番組『8時だョ!全員集合』や『ドリフ大爆笑』で昭和時代にお茶の間の人気を博した音楽グループ「ザ・ドリフターズ」。その中でも人気者だったのがドラムの加藤茶さん、そして付き人から昇格して加入した志村けんさんでした。
ドリフ時代から人気のコンビであった加藤さんと志村さんは、昭和から平成に改元される時期にコンビで番組をスタートさせます。それが、長く続いた『8時だョ!全員集合』の後番組として1986年に始まった『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』です。
ドリフから離れて、コンビのようにスタートした平成時代でしたが、時はタレントショップブーム、そしてバブルが崩壊してもCDは飛ぶように売れ、携帯電話が普及……そんな平成ヒトケタあたりの2人それぞれのアイテムを振り返ってみたいと思います。

 

◆加トケンで生まれた世界初のコンテンツ

『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』のメインとなっているのは、松田優作の『探偵物語』を想起させるコントドラマ「THE DETECTIVE STORY<探偵物語>」。番組をテーマにしたPCエンジン用ソフト『カトちゃんケンちゃん』も、このコーナーを元にしています。さらに後に始まる志村さんの番組『志村けんのだいじょうぶだぁ』のタイトルの元にもなっている「だいじょうぶだぁ教」。これは「だいじょうぶだぁ~」と言って三つ又になった太鼓を叩くので有名ですね。あまりに人気すぎて、おそらく無許諾で観光地のお土産品になっていました。

招福ダイコと書かれたもの。加藤茶さんも描かれており「加トケン」を意識した商品となっている。バチも付いていて、実際に叩くことができる。

 

小さいキーホルダーだけでもこんなに見つかっている。「HIROSHIMA」というタグが付けられたものもあり、観光地で売られていたことが分かる。あくまで「だいじょうぶだぁ」の文字はあるが「志村けん」の名前はない。

もう一つ、この番組で語らなくてはならない大きな功績があります。今では YouTube で個人が映像を配信することが出来ますが、インターネットもスマホもなく、やっとホームビデオが出回りはじめた時代に、視聴者から投稿されるビデオを紹介する「おもしろビデオコーナー」がありました。当時こういったコーナーは世界初で、後に数々の番組で同様の企画が生まれ、さらには海外にも飛び火したのです。

 

◆タレントショップ群雄割拠

昭和の終わりごろから、原宿の竹下通りにタレントショップが乱立しはじめます。主にテレビタレントやアイドル、ミュージシャンなどのイラストを使ったタレントグッズを売るお店で、ほとんどがそのタレントごとに店を構えていました。その数はどんどん増えていき、竹下通りを飛び出して全国の観光地などにも出店していくほどだったのです。

竹下通りで売られていた山田邦子さん、酒井法子さん、所ジョージさん、元気が出るテレビなどのグッズたち。

そんな中、その象徴ともいえるのが加藤茶さんのお店でした。かなり初期からメインストリート沿いの目立つ場所に出店され、ブーム沈静化後も長くお店が続いていたのを記憶しています。

加トちゃんグッズたち。ライターやキーホルダー。

店頭で目をひいていた顔型のクッション。

店名である「加藤茶の店」が書かれた、ショップ自体のキーホルダー。

当時、タレントグッズは原宿みやげでもあった。こちらはちゃんと「原宿」という地名も描いてあるカンペンケース。

 

志村さんと同じく番組で共演していた田代まさしさんは「マーシーズ」というショップを運営していました。しかし、当の志村さんはタレントショップを運営されなかったようです。おそらく、商品を作らずとも面白い番組を作り、それをテレビでお茶の間に届けることを重要視されていたのではないでしょうか。

田代まさしさんお店、マーシーズの缶バッジとキーホルダー。

 

それでも、以前とんねるずグッズの回でも紹介した通り、あまりに子ども人気が強すぎて、志村けんさんを思わせるような商品が観光地などで売られていました。

左はバカ殿と書かれているものの、勝手に作られたと思われるキーホルダー。ちゃんと時代劇コントに合わせてゲタ型になっている。右は変なおじさんだろうか。

田代まさしさんが柴田恭兵のモノマネをする時の「関係ないね」と、番組名でもある「だいじょうぶだぁ」そして「Daffunダ」などの言葉が並んでいるが、おそらく無許諾と思われる。

人間ルーレットのルーレットマンを勝手に商品化したもの。実際にルーレットとして運勢を占うことができる。

最近の話になりますが、2019年の『志村・所の戦うお正月』という正月特番において、タレントショップで最後まで続いたお店を当てるダービーという企画がありました。そこでなんと志村さんは最長のお店を「加藤茶の店」であると予想し、見事に的中させたのです。筆者はこの特番の資料提供を担当し、竹下通りロケのナビゲーターとして出演もしているのですが、これはとても良いエピソードだなと思って番組を観ていました。

 

◆90年代後半、観光地パロディ商品への影響

サザエボンや、缶コーヒーBOSSを改変した「BOZU」など、清涼飲料水のパッケージをパロディにした商品が観光地で売られはじめる1990年代後半に、2人とも題材にされます。

海外のビールブランド「Heineken」のパッケージをパロディにした「Shimuraken」。多数のネタが詰め込まれている。

缶ジュース「Qoo」のパロディ「Pee」。こちらも、裏の内容表示などにたくさんのネタが。

これらは無許諾品なのですが、いかに1990年代においても加トケン人気が続いていたかを知る手がかりとなります。

 

◆ミリオンヒット時代のふたり

平成のはじめにバブルが崩壊しましたが、1990年代の音楽業界は非常に活況で、ドラマのタイアップに、カラオケ人気などもありミリオンヒットが続出していました。そんな中、2人もそれぞれシングルCDを発売します。
まず加藤さんは1995年に、シングルとミニアルバムを集中的にリリースしました。
ドリフの先輩格バンドであるクレイジーキャッツのフロントマン・植木等さんがクレイジーキャッツ時代の14曲をメドレーにした『スーダラ伝説』を1990年に発売しヒット。すると加藤さんは同様にドリフの曲をメドレーにした『ズンドコ伝説』を1995年に発売。

さらに前年にヒットした「DA.YO.NE.」を受けて、ドリフでカバーした「ミヨちゃん」を、ラップバージョンにして『RAP MIYO-CHAN』としてリリース(Cha!K.A.T.O. with BRAND NEW MONKEYS 名義)。

https://tower.jp/item/511173/ズンドコ伝説

それでもまだ終わらず、さらに同年に日本でブレイクしたスキャットマン・ジョンまでカバーしたほどです(『加トちゃんのスキャットマン』)。
いずれも、時代の流れを呼んだ楽曲で、非常にクオリティも高いのです。

 

対する志村さんは自分だけのシングルは発売せず、主に『だいじょうぶだぁ』関連で田代まさしさんとのシングルを発売したり、「バカ殿様とミニモニ姫。」名義で『アイ~ン体操/アイ~ン!ダンスの唄』を発売するなど、あくまで番組主体でした。
志村さんは、ご自身のバラエティ番組を大事にして、そこを中心に活動されていたということがよく分かります。

 

◆携帯電話からご当地グッズへ

1990年代末期、活況だったCDの売り上げが少しずつ下降していきました。当時その原因として挙がっていたのが、若者がお小遣いのほとんどを携帯電話の料金に使ってしまっているという話。
そうです、1990年代末期には携帯電話が普及していきました。そこで携帯電話にまつわる商品も色々と発売されるようになり、そこでも2人が活躍することになります。

着信があると光るアンテナが流行しましたが、アンテナが伸びなくなったり、アンテナがなくなった影響もあり、こういった着信がくると光るキーホルダーが販売された。これは「志村けんのバカ殿様」のキャラクター商品。

こちらはご当地加トちゃんの元祖と言われる静岡限定・茶摘み娘バージョンの携帯ストラップ。

ここでも加藤さんは独自のキャラクター。そして志村さんは番組のキャラクター「バカ殿」という位置づけですね。もちろん加藤さんのイラストも『8時だョ!全員集合』から来ているのですが、完全に加藤さん本人のイメージとして独り歩きしています。

そして、その携帯ストラップの文化は、1998年から観光地ではじまった「ご当地キティ」のシリーズの主力商品でした。人気となり、類似した商品が次々に誕生していったのですが、ワンピースにキューピーなどアニメやキャラクターが主流の中で、タレントとして商品展開していたのが、加藤さんと志村さんだったのです。

四国限定・坊っちゃん加トちゃんキーチェーンと、大阪限定・バカ殿様タコ焼きでアイ~ン!ファスナーマスコット。iPhoneをはじめ、スマートフォンからストラップホールが消えていき、こういった商品にも変化が起こっていった。

これまでは、グッズの商品展開においても2人はそれぞれの道というような印象でしたが、ここへ来て同じ土俵でそれぞれの商品を展開したというのが平成中盤の出来事でした。

 

◆最後に

商品展開という意味では、常に加藤さんがリードしていた印象が強いです。これはひとえに、ハゲヅラにチョビヒゲ、牛乳瓶底の丸メガネというキャラクターが、加藤さんと同一視されるくらい定着したということが大きいでしょう。サングラスが所ジョージさんのイラストで重要であるように、タレントグッズは簡略化した似顔絵が特徴的かどうかというのが大事です。

そして、その反面、自身のテレビ番組に関連したCDやグッズの多い志村さんは、まさに番組を大切にしていたということがよく分かります。

そんな歴史を踏まえて、是非これから開催される「志村けんの大爆笑展」のショップや、フジテレビのオンラインショップ、そして年末に放送されるドラマ『志村けんとドリフの大爆笑物語』を見てみてください。

 

山下メロ●庶民風俗の研究家。バブル時代の観光地みやげ「ファンシー絵みやげ」と平成初期の文化「平成レトロ」を主に研究。著書に『ファンシー絵みやげ大百科 失われたバブル時代の観光地みやげ』(イースト・プレス刊)がある。
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