俳優として輝かしいキャリアを歩みながら、メガホンをとった長編映画『ある船頭の話』がベネチア国際映画祭で高く評価されるなど、映画監督としても注目を集めるオダギリジョーが連続ドラマを手がける。
2021年9月17日放送の連続ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK総合)は一匹の警察犬と正義感を持て余した一人の警察官が事件解決に奮闘する警察ドラマ。池松壮亮、麻生久美子、本田翼、永瀬正敏、永山瑛太、染谷将太、佐藤浩市、松重豊、細野晴臣など豪華キャストが名を連ねる今作は、3週に渡って放送される。今作で脚本・演出・出演を務めたオダギリジョーにインタビュー。
写真提供/NHK
取材・文/編集部
【Profile】
オダギリジョー
●1976年生まれ。岡山県出身。2019年に長編映画監督作品『ある船頭の話』が第76回ヴェネツィア国際映画祭のヴェニス・デイズ部門に選出され、トルコで開催された第56回アンタルヤ映画祭、インドで開催されたケララ映画祭で国際コンペティション部門で最優秀作品賞を受賞。
「自分で言うのもおこがましいですが自分が監督しているときはめちゃめちゃ丁寧だと思います(笑)」
ヘアメイク/シラトリユウキ
スタイリスト/西村哲也
■衣装情報
ジャケット/90,200 シャツ/30,800 パンツ/62,700
(すべてVivienne Westwood MAN/ヴィヴィアン・ウエストウッドインフォメーション)
ブーツ/68,200(LAD MUSICIAN/ラッドミュージシャン原宿 (※すべて税込み)
【衣装問合せ】
・ヴィヴィアン・ウエストウッドインフォメーション
Tel: 03-5791-0058
・ラッドミュージシャン原宿
Tel: 03-3470-6760
──今作は「警察犬」が物語において重要な役割を担いますね。どのような経緯で、このような作品が生まれたのでしょうか。
オダギリジョー(以下、オダギリ):構想は10年以上前なので正直なところ、あまり覚えていませんが、警察ドラマというジャンルは、毎クール必ず数作品は放送されています。その中でも個性の差をつけることは、それぞれのドラマが試行錯誤しているわけで、新しい警察ドラマのあり方を自分なりに模索した結果、「警察犬」という動物の目線を入れることで、人間のエゴや悪徳を客観的に指摘できるのではないか、と考えるに至りました。
──演出するにあたり、意識したのはどのような部分ですか?
オダギリ:僕にとって作品を創るということはとても重要なことで、創るなら日本だけでなく、世界に観てもらう作品にしたいと常に思っています。海外の方々が見ても日本のカルチャーや面白さを楽しんでいただけるように心がけていて、今作でも色んなフックを詰め込んでいるつもりです。
──コロナ禍の時期に脚本を執筆されていたとのことですが、執筆するにあたり影響はありましたか?
オダギリ:新型コロナウイルスが蔓延する前に第1話の台本は書き上げていましたが、第2話・第3話はコロナ禍の中で書いていました。世界が過酷な状況にある中で、「自分はエンターテインメントの作品を書いていていいのだろうか?」という自己嫌悪のような気持ちもありましたが、エンターテインメントやアートがいつも以上に力を発揮し、多くの人々が必要としている安らぎや楽しみを作るべきだと感じるようになりました。コロナの影響で辛い生活を送る中で、少しでも気が楽になるエンターテイメント作品を書かなければならない、という想いは強くなりました。
──警察犬のオリバーに振り回される警察犬係・青葉一平を演じる、主演の池松壮亮さんとは映画『アジアの天使』で兄弟役として共演されていましたね。その作品のインタビューで池松さんの撮影現場での振る舞いや作品に臨む姿勢を称賛されていましたが、今作で演出する立場として池松さんと接してみて、改めて印象はいかがでしたか?
オダギリ:池松くんに関しては、ほとんど演出する必要がなかったですね。自分がイメージした台本の流れやシーンの意図やテンションを、ほぼ間違いなく理解してくれて、実際に現場でも芝居をしてくれていました。この作品は全3話ありますが、数えるくらいしか僕から演出することはなかったと思います。つまり、それくらい池松くんが台本を読みこんで、池松くんなりのイメージを持って現場に来てくれたということだと思います。そういうところが、やはり信頼できる俳優だと思いました。
この作品の出演者は池松壮亮をはじめ、『時効警察』シリーズ(テレビ朝日系)で共演した麻生久美子、『午前3時の無法地帯』で共演した本田翼など、オダギリが過去に出演した作品で共演した俳優が多いのも注目ポイントだ。
──今作で演出として俳優の方々とコミュニケーションをとる際、以前のように共演者として接していた時と接し方を変えた部分、もしくはコミュニケーションにおいて意識した部分はありますか?
オダギリ:俳優の時は、麻生さんとは待ち時間の間、ほとんどの時間をくだらない会話をしていますが、監督と俳優という立場のときは、やはり接し方は異なりました。基本的に、俳優には撮影を楽しく過ごして欲しいし、「この作品に参加してよかったな」と思って欲しい。自分が俳優だから「こういう言い方されると嫌だな」といった気持ちもわかるので、俳優の皆さんへの演出はすごく気を遣って接していました。自分で言うのもおこがましいですが、自分が監督しているときは、めちゃめちゃ丁寧だと思います(笑)。
──今回の出演者の方々は、過去にオダギリさんと共演した方々も多いですが、かつての共演者の方々がオダギリさんに対してフランクに接してくるということはなかったのでしょうか?
オダギリ:いや、フランクに接してくれて良いんですよ(笑)。ただ、やはり俳優同士の関係性と、監督と俳優の関係性は違うんですよね。僕が今まで俳優として関わったときの監督という存在は、尊敬する対象でもあるし、戦う対象でもあったし、一緒に作品を作り上げていく仲間でもあって、俳優と監督の関係って、すごく独特なんです。だから今作でも出演者の皆さんも、僕を監督のオダギリジョーとして向き合ってくれていたと思います。特に僕の場合は、自分で脚本を書いているので、どんな質問にも大体答えられるじゃないですか。悩んだり、ブレたりする事が少ないから不安が生まれにくいのかもしれませんね。
──9月17日の第1話の放送まで来週に迫りました。
オダギリ:自分が作る作品は必ず賛否分かれるものになると自覚しています。今回の作品をご覧になられた方から、どういう反応をいただけるか楽しみです。その上で、今までの映画やドラマの固定概念に一石を投じることにつながれば嬉しいですね。
【番組情報】
©︎NHK
ドラマ10「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」
【放送予定】 2021年9月17日、24日、10月1日<全3回>
【放送局】NHK総合
【放送日時】毎週金曜 午後10時~10時45分
【脚本・演出】オダギリジョー
【音楽】森雅樹
【主題歌】「The Hunter」(EGO-WRAPPIN’)
【オープニング】 「サイコアナルシス」(EGO-WRAPPIN’)
【出演】 池松壮亮、オダギリジョー、永瀬正敏、麻生久美子、本田翼、岡山天音、玉城ティナ、くっきー!(野性爆弾)/永山瑛太/川島鈴遥、佐藤緋美、浅川梨奈、佐久本宝、髙橋里恩、森優作、緒形敦、別府由来、奈良原大泰、中本大賀、芳村宗治郎、山田浩、今泉力哉、前川正行、沖原一生、金井浩人、朝比奈知樹、岡本智礼、菅原健、宮本幸太、フィリップ(犬)、ナオト(犬)、パール(犬)、ペトラ(犬)、レックス(犬)/染谷将太、仲野太賀、佐久間由衣、坂井真紀、葛山信吾、火野正平/國村隼/細野晴臣、香椎由宇、渋川清彦、我修院達也、宇野祥平/草村礼子、箭内道彦、芹澤興人、竹内都子、柳ゆり菜、奈月セナ、天木じゅん、結城貴史、DOTAMA、大江健次(こりゃめでてーな)、中村無何有、千うらら、出口亜梨沙、浦郷絵梨佳、柴田紗帆、真下有紀、金剛地武志、福岡みなみ、木下瑠音、草地稜之、坂口雄斗、ヒラノショウダイ、関根洋一/村上淳、嶋田久作、甲本雅裕、鈴木慶一/松重豊、柄本明、橋爪功、佐藤浩市 ほか ※葛山信吾さんの「葛」の下の「人」は正式には「ヒ」です
【制作統括】柴田直之(NHK編成局コンテンツ開発センター)坂部康二(NHKエンタープライズ) 山本喜彦(MMJ)
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