映画星取り:北野武監督、待望の最新作 『首』【2023年11月号映画コラム】

今月の星取りは、北野武監督最新作『首』をピックアップ。「今月の推し」では、星取りレビュー担当のお三方がおすすめする作品をご紹介いたします。
(星の数は0~5で、☆☆☆☆☆~★★★★★で表記、0.5は「半」で表記)

◆そのほかの映画特集はこちら

◆柳下毅一郎さんと、渡辺麻紀さんによるYouTube生配信『月刊 映画言いたい放題大放談!(仮)』は好評配信中!
※次回は11月29日(水)19時ごろ~の生配信を予定しています。詳しくはTwitter(@tvbros) で告知していきます。

<今月の評者>
渡辺麻紀
わたなべ・まき●大分県出身。映画ライター。雑誌やWEB、アプリ等でインタビューやレビューを掲載。ぴあでは『海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔』を連載中。また、押井守監督による『誰も語らなかったジブリを語ろう』『シネマの神は細部に宿る』『サブぃカルチャー70年』等のインタビュー&執筆を担当。最新刊は『押井守の人生のツボ 2.0』。
近況:中国系では『宇宙探索編集部』が素晴らしかった。こういうふうにSFの命題に迫られるとSFファンは感動しかない。中国SF、侮りがたしです!

 

折田千鶴子
おりた・ちづこ●栃木県生まれ。映画ライター、映画評論家。「TV Bros.」のほか、雑誌、ウェブ、映画パンフレットなどで映画レビュー、インタビュー記事、コラムを執筆。TV Bros.とは全くテイストの違う女性誌LEEのWeb版で「折田千鶴子のカルチャーナビ・アネックス」を不定期連載中。
近況:『おしょりん』パンフで監督・キャストインタビューを。是非劇場で。ってかAI巡るストの影響じゃないけど、この仕事もどうなるのか本気で不安な今日この頃。

 

森直人
もり・なおと●和歌山県生まれ。映画ライター、映画評論家。各種雑誌などで映画コラム、インタビュー記事を執筆。YouTubeチャンネルで配信中の、映画ファンと映画製作者による、映画ファンと映画製作者のための映画トーク番組『活弁シネマ倶楽部』ではMCを担当。
近況:『悪い子バビー』『愛にイナズマ』『こいびとのみつけかた』『サタデー・フィクション』などの劇場パンフレットに寄稿しております。


『首』

原作・監督・脚本・編集/北野武 出演/ビートたけし 西島秀俊 加瀬亮 中村獅童 木村祐一 遠藤憲一 勝村政信 寺島進 桐谷健太 浅野忠信 大森南朋 小林薫 岸部一徳ほか(131分/23年日本)

●織田信長は毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と戦いを繰り広げていたが、その最中、家臣の荒木村重が反乱を起こし姿を消す。信長は羽柴秀吉、明智光秀ら家臣を集め、自身の跡目相続を餌に村重を捜索させる。秀吉の弟・秀長、黒田官兵衛の策で捕われた村重は光秀に引き渡されるが、光秀はなぜか村重を匿い……。北野監督自らビートたけし名義で羽柴秀吉を務め、明智光秀を西島秀俊、織田信長を加瀬亮が演じた。

11月23日(木・祝)全国公開

配給:東宝 KADOKAWA 製作:KADOKAWA
©2023 KADOKAWA ©T.N GON Co.,Ltd

 

渡辺麻紀

面白くない。
→裏戦国武将といったノリでみんなが知っている英雄たちのアザーサイドをえぐり出し、独自の戦国時代映画を作ろうとしている。この発想もチャレンジも悪くないんだが、いかんせん面白くない。そもそも筆者がこの時代に興味がないという問題もあるんだろうが、それにしても面白くない。男色関係が時代を動かしていたというところまで振り切ってないし。北野武といえば暴力描写の特異性があげられるものの、暴力だらけの戦国時代だとそれも活かされず、物語を前に進めるドライブ感もない。腐女子目線でもまるでダメでした。
★★☆☆☆

 

折田千鶴子

軽い気持ちで観れば……
→これだけの役者が揃えば、それだけで観飽きないのは間違いないが、少々ファミリー感が強すぎるかも。武将同士の愛憎関係に踏み込んだり、ギャグ系笑いをまぶしたり、“らしさ”と言えなくもないが、それって求める“北野武”というより“ビートたけし”節に近いような。シリアスなドラマ性とお笑い、どっちにも振り切れていないため、観ながら微妙な心持ちに。勝手な想像だが、現場で俳優陣も戸惑ったのでは!? まだ外連味とキレ味をたっぷり感じられた『座頭市』が懐かしいくらい。とはいえ北野武作品に対する期待値は下げたくないので、次なる一作に期待!

★★★☆☆

 

森直人

冗談じゃないよ……(涙)
→本当は感想を聞かれたくない。「怪作」という便利な言葉を使うのも躊躇われ、「老害」という紋切り型の批判が綺麗にハマってしまう事態に愕然。いろんな意味でジャニーズ問題と重なって見えるのは是如何に。昭和式の毒ガス攻撃の過剰さより、的確な批評性を喪失しただらしなさのほうが目につく。加瀬亮など単体では素晴らしいのだが、現場では誰も殿に意見することなどできないだろう。初期のキタノ映画に衝撃を受けて人生を変えられたと言っても過言ではない自分が、こういう辛辣な言葉を並べざるを得ない日が来るとは、正直なかなかに辛い。

★★☆☆☆


【今月の推し】

渡辺麻紀…『三体』

まずは制覇でしょう!
  劉慈欣の大河SF『三体』をまず中国がドラマ化した。はてさてどうなっているのかと観てみたら、これが意外な(笑)ことに面白い! なぜなら日本語版と異なりミステリ仕立てになっているから。この差は日本版が英語版の翻訳のせいらしいが、それが幸いして原作を読んでいても新鮮だ。役者に華がないとかデジタルのセンスがイマイチとかはあるものの、丁寧に作られていて好感度は高い。ちなみに全30話だけど、来年配信予定のNetflix版と比べるためにも制覇するつもり。

監督:ヤン・レイ 脚本:ティエン・リャンリャンほか 出演:チャン・ルーイーほか(各50分/23年中国) ●2007年、ナノ素材の研究者汪淼(ワン・ミャオ)は、突然訪ねてきた史強(シー・チアン)によって、正体不明の秘密会議に召集される。

11月は、11~20話を5話ずつ放送
※WOWOWオンデマンド配信あり

Ⓒ TENCENT TECHNOLOGY BEIJING CO., LTD.

 

折田千鶴子…『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』

異色のサバイバル・スリラー
 これは掘り出し物! 『ハンナ』『キック・アス』など“闘う少女系”が好きな方に是非おススメ。何と言ってもヒロインの“人を操る特殊能力”がミソ。拘束されてた精神病院から抜け出し、人生を切り拓こうとする彼女の前に立ちはだかる敵(善良な警官もいるが、とりあえず権威側や悪人)を倒していくのが実に痛快! 自分で自分を殺傷させられる驚愕は、本人のみならず我々も同様。映像に宿る空気や音楽使いも抜群で、この監督すぐ大ブレイク必至。
『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』
監督・脚本:アナ・リリ・アミリプール 出演:ケイト・ハドソンほか(106分/22年アメリカ)●12年もの間、精神病院に隔離されていた少女モナ・リザ。突如、“他人を操る”特殊能力に目覚めた少女は、施設を抜け出し、ニューオーリンズへと辿り着く。

ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかにて公開中

配給:キノフィルムズ
© Institution of Production, LLC

 

森直人…『悪い子バビー』

墓から甦ったような衝撃
 こちらは真の「怪作」にして「傑作」。1993年の伝説のオーストラリア映画で、かつては『アブノーマル』という身も蓋もない邦題でVHSが発売されていた。スラムの一室に母親から監禁されたまま育った35歳の青年バビーの冒険譚。ヴェネチア国際映画祭審査員特別大賞ほか5部門受賞という立派な
栄誉を持っているのが不思議なほど、あらゆるタブーを踏み越えていく驚愕の展開に眩暈がする。なぜかいま奇跡の日本初ロードショー公開だ。

『悪い子バビー』
監督・脚本:ロルフ・デ・ヒーア 出演:ニコラス・ホープほか(114分/93年豪=伊合作)●⺟親の教えを信じ、35年間部屋に閉じ込められていたバビー。だが、“⽗親”を名乗る男が帰ってきたことで、⼈⽣が動き出す。

新宿武蔵野館ほか全国順次上映中

© 1993 [AFFC/Bubby Productions/Fandango]
配給 コピアポア・フィルム

 

0
Spread the love