オースティン・バトラー「とても超越的な、スピリチュアルなことが起きている、そんな感じがした」映画『エルヴィス』主演インタビュー【2022年6月映画特集】

ロックンロールの神様とも言われるエルヴィス・プレスリー。その類まれな才能で今なお語り継がれる不世出のミュージシャンだ。今夏、公開されるその名もズバリの映画『エルヴィス』は、そんなプレスリーのデビューから死ぬまでを追いかけたバズ・ラーマンによる音楽伝記映画。きらびやかなステージと人気の影で、彼はどんな人生を送ったのか、その真実に迫る! 
というわけで今回は、エルヴィス・プレスリーを演じた大注目の新鋭オースティン・バトラーの声をお届けしますよ!
取材・文/渡辺麻紀

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<プロフィール>
オースティン・バトラー●1991年アメリカ生まれ。主な出演作に映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)、テレビドラマ『マンハッタンに恋をして 〜キャリーの日記〜』(2013~2014年)、『シャナラ・クロニクルズ』(2016~2017年)などがある。

<作品情報>
『エルヴィス』
監督/バズ・ラーマン 出演/オースティン・バトラー トム・ハンクス オリヴィア・デヨングほか
7月1日(金)全国公開
配給/ワーナー・ブラザース映画
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物まねだけは絶対にやりたくなかった

オースティン・バトラーが映画ファンに注目されるようになったのはクウェンティン・タランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』あたりからだろう。このときの彼はマンソン・ファミリーのひとりを演じ、続く『デッド・ドント・ダイ』ではゾンビ騒動真っ最中の町を訪れたよそ者。さほど目立つ役ではなかったのだが、ここにきてついにメジャー映画の主演を果たしたことになる。しかもそれがエルヴィス・プレスリー役である。相当の努力と覚悟が必要だったはずなのだが。

「そう、本当に大変だった。言うまでもなくエルヴィスは神のように君臨し、とんでもなくアイコニックな存在だったからだ。僕はそんな彼を具体的に、きめ細かく演じたかった。物まねだけは絶対にやりたくなかったし、彼の人生における重要なモーメント、それをとても自然に表現出来ればいいと思っていた。そのためのリサーチや役作りは出来る限り、徹底的にやったつもりだよ」

そういう努力の甲斐があったのか、素顔はまるでエルヴィスではないのに、スクリーンのなかではちゃんとエルヴィスに見える! というよりエルヴィスにしか見えない!

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「エルヴィスの身体的な特徴を再現するにあたり、ポーリー・ベネットという最高のムーブメント・コーチについたんだ。彼女は『ボヘミアン・ラプソディ』で(フレディ・マーキュリーを演じた)ラミ(・マレック)を指導した人物なんだ。彼女は単に目視できる部分を似せるんじゃなく、内側から外側へと向けて“エルヴィス”を創り上げて行くための手助けをしてくれた」

もちろん、歌も重要だ。本作の場合は当時の録音の都合もあって、エルヴィス自身の歌とオースティン自身による歌、それを組み合わせることでクリアしている。

「最初の撮影シーンは、1968年のNBC(米国のTV局)カムバック・スペシャルのエピソードで、そこで僕自身も初めて歌った。自分の恐怖心と闘い、それを乗り越えなくてはいけない瞬間だったんだけど、ただセットで映画を撮影しているということを超えた何か、とても超越的な何かを感じた瞬間でもあった。スピリチュアルなことが起きている、そんな感じがしたんだよ。なぜなら、そのシーンが本当の出来事のように感じられ、『オースティンがエルヴィスのふりをしている』なんてまったく思わなかったからだ。そのとき、『僕はこの試練を絶対に乗り越えられる』と確信したんだ」

そうやってオースティンが創り上げたエルヴィスの人生には欠かせない人物がいる。パーカー大佐と呼ばれる彼のマネージャーだ。カントリー歌手の前座を務めていたエルヴィスの才能に目を付け大スターに育て上げると同時に、彼から莫大な金と自由を摂取しまくった、いわばヴィランである。

「ふたりの関係はとても複雑だ。大佐がいなければエルヴィスは、僕たちの知る存在になれなかったかもしれない。彼は、早くに亡くなってしまったエルヴィスの母親に代わる役割を果たし、彼の心の隙間を埋めてくれることもした。でも、その一方でエルヴィスから自由を奪い檻に閉じ込めてしまったことも事実なんだよ。エルヴィスは日本にツアーに行きたがったのに、それをやめさせたのも大佐だからね!」

そんな邪悪なパーカー大佐をバリバリの特殊メイクで演じているのはあのトム・ハンクス。彼にとっては珍しい悪役だ。

「そんな複雑な関係性を演じられたのはトムのおかげだよ。彼は本当に驚くほど魅力的な人で、初めて会ったときは大きなハグで迎えてくれて、ナーバスになっていた僕を安心させてくれた。しかも、そのときから僕をまるで同僚のように扱ってくれたんだ。
僕はずっとトムという役者が大好きだったし、とても尊敬していた。そんな彼が突然、僕をパートナーにしてくれたんだ。この興奮、わかってもらえるかな?」

ちなみに、日本における今どきの若い世代でのエルヴィス・プレスリーの知名度は高くはないようだが、それはアメリカでも同じようなのだ。

「若い人たちとエルヴィスについて話したことがあるんだけど、彼の歌のタイトルを一曲だけしか知らない人が多く、なかには一曲も知らない者もいた。僕は凄く驚いちゃったよ。なぜって、僕の近くにはいつもエルヴィスがいたから。祖母がファンで、子供の頃からいつも彼の曲を聴いていたせいもあるんだけど、それでもやはり、知らない人がいるなんて信じられなかったんだ。
ということは、もしかしたらこの映画でエルヴィスを知る人がいるかもしれない。そんな人が彼に興味をもってくれると、本当に嬉しいよ」

 

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