映画ファンのみなさま、恒例のアカデミー賞の季節がやって来ました! 果たしてどの作品がどんな評価を受けるのか? 毎年、TV Bros.でそれを占っているのは特殊翻訳家の柳下毅一郎さんと、映画ライターの渡辺麻紀さん。今年もこのおふたりにお願いしてオスカーの傾向と対策を、ネタバレありで語っていただきましたよ!
取材・文/グレム倫子
※本記事で取り上げるのは「第94回アカデミー賞」ノミネート作品や関係する人物となり、一部ネタバレとなる箇所もございます。あらかじめご了承の上、お楽しみください。
消えゆく映画館の思い出&『ギャング・オブ・アメリカ』映画星取り【2022年2月号映画コラム】
原発の危機を映画ではどう描いたか&『アダム&アダム』映画星取り【2022年3月号映画コラム】
<記事の前にお知らせ!>
『がんばれ洋画!アカデミー賞授賞式中も大放談!vol.2』生配信決定!
Webの世界でも言いたいことを言いたいだけ言い放つ、TV Bros.ではおなじみの2人の映画対談。TV Bros.WEBでは、本企画で行われる予想の結果を見届けるべく、昨年に続き動画生配信企画を実施します!
アカデミー賞授賞式の模様をどうにかして観ながら、その結果に納得&驚き&恐怖しつつ、そして洋画のあれこれを語らい続ける長丁場。この企画の根底には、コロナ禍にあって邦画の明るい話題が続くことと対照的な状況にある洋画を、アカデミー賞をきっかけに少しでも盛り上げたい! という映画ファンとしての思いが2人にあるから……というわけで、多少の粗相はご容赦願いつつ、ぜひご覧くださいませ~。
配信日:3月28日(月曜)午前10時ごろ~
配信サイト:TV Bros.公式YouTubeチャンネル
<プロフィール>
柳下毅一郎(やなした・きいちろう)●映画評論家・特殊翻訳家。主な著書に、ジョン・スラデック『ロデリック』(河出書房新社)など。Webマガジン『皆殺し映画通信』は随時更新中。
渡辺麻紀(わたなべ・まき)●大分県出身。映画ライター。雑誌やWEB、アプリ等でインタビューやレビューを掲載。押井守監督による『誰も語らなかったジブリを語ろう』『シネマの神は細部に宿る』『人生のツボ』等のインタビュー&執筆を担当した。
「いい映画を作りたい」という意気込みを感じた『ドライブ・マイ・カー』
柳下 今年は作品賞が10本。パワーバランスで分けている印象がないわけでもないけど。
渡辺 何となく地味だよね。コレという映画がない。
柳下 いや、日本人的にはやはり『ドライブ・マイ・カー』でしょう! これを語らないとダメなんじゃないの? 国際映画賞のみならず、作品賞・監督賞・脚色賞でノミネートという快挙だよ。
渡辺 『パラサイト/半地下の家族』が道を拓いてくれたという感じだよね。国際賞だけかと思ったら作品賞から監督賞、脚本賞のメインを取っちゃったから。
柳下 ということは『~マイ・カー』も4部門での受賞がありえるわけだ。ラッキーなことに、今年のほかのノミネート作は少々、決め手に欠けるところがあるから、可能性は高いんじゃない?
渡辺 やなちゃん的にはどうだったの、この映画?
柳下 いやあ、聞かないでくださいよ(笑)。それよりマキさんは?
渡辺 邦画をあまり観ないんだけど、思いのほかよかったよ。北海道に行くまでは。
柳下 あ、オレも。北海道に行った途端に『北の国から』になっちゃう。
渡辺 私は『北の国から』をよく知らないので、連絡船に乗った途端、「津軽海峡冬景色」が鳴り響き、北海道パートは石川さゆりの歌声を脳内で聴いていた感じ。なんで、ああなるの?
柳下 それまでずっと抑えこんでハードボイルドだったのに、津軽海峡を越えてからダダ漏れ状態になる。まさに演歌の世界だよ。オレもあれはちょっとだった。
渡辺 でも、ああいうのもハリウッド的にはOKなのかもね。解釈によってはドラマチックになるから。
柳下 原作は海外でも人気の高い村上春樹だし、劇中にチェーホフとか出てきて、向こうの人にも親しみやすかったのかもしれない。作品の好き嫌いはさておき、監督の才能はちゃんと伝わって来るし。オレはほかの作品も観ているけど、とてもクレバーな監督という印象だよ。
渡辺 「いい映画を作りたい」という意気込みみたいなのを感じるよね。私は、「自分の好きな映画を作りたい」という監督のほうが好きなので、この監督のほかの映画を観たいという気持ちにはならなかったけど。そもそも他の作品もほとんど長いんでしょ?
柳下 まあだいたい長いね(笑)。長回しで芝居を撮るから長くなる。
渡辺 この作品も3時間だからね。でも、退屈はしなかった。
柳下 国際映画賞以外で獲ると思う?
渡辺 いやあ、さすがに作品賞とかはないんじゃないの? これまでのアワードの結果から予想するとジェーン・カンピオンの『パワー・オブ・ザ・ドッグ』?
柳下 予想だとね。でも正直、何であんなに評価が高いのかよくわからない。
渡辺 私も。悪くはないけど、騒ぐほどいいわけでもないって感じ。
柳下 最初の5分くらいはいいと思ったけど、あとは普通。西部劇としての魅力もイマイチだし、あっちの問題としてもそれほどでも。
渡辺 あっちの問題って、知らないほうがいいんでしょ?
柳下 サプライズになってるけど、結構、あちこちに書かれてるからなあ。あとは女性監督? 女性監督で二度、監督賞にノミネートされた人はカンピオンが初めてなんだって。
渡辺 そういうのもあったのかなあ。もし本当に作品賞や監督賞を獲ったら、昨年に続き女性監督になる。それも狙っているの?
柳下 いまのハリウッドならないとは言い切れない。まあ、そういう忖度とかポリコレとかパワーバランスが透けて見えるんだよね。
渡辺 作品にパワーがないから、そういう裏を考えちゃう。
スピルバーグが頭をしぼりまくって作ったことがよくわかる『ウェスト・サイド・ストーリー』
渡辺 じゃあ、やなちゃんが獲ってほしい作品は?
この記事の続きは有料会員限定です。有料会員登録いただけますと続きをお読みいただけます。今なら、初回登録1ヶ月無料もしくは、初回登録30日間は無料キャンペーン実施中!会員登録はコチラ