押井守のサブぃカルチャー70年「YouTubeの巻 その1」【2022年1月号 押井守 連載第36回】

今回から一気に現代の話題「YouTube」に。家から出ずにYouTubeで社会を見るようになった押井さんのオススメのチャンネルとは?
取材・構成/渡辺麻紀

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「社会の窓」としてのYouTubeで、私は家から一歩も出ずに、いまの社会のありさまがわかるようになった

――前回の予告通り、これからは、いま押井さんがもっともハマっているというYouTubeについて語っていただきます。YouTubeは「社会の窓」なので、今の時代の考察が出来るというわけですよね。まずは、ご自分で登録しているという20から30のチャンネルのなかからオススメを教えてください!

間違いなく「Fラン大学就活チャンネル」が今のイチオシです。
就職関係のチャンネルを探しているときに見つけたんだけど、最初に惹かれたのは「Fラン」という言葉だった。YouTubeには、本当にいろんなスラングがあって、それも大きな魅力。私はYouTubeで「ニットウコマセン」や「マーチ」という言葉を知ったからね。
麻紀さん知ってる?

――もちろん、知らないです。私のYouTube偏差値は限りなく低いんですよ。ネコの動画しか見たことがないので。

「ニットウコマセン」というのは「日東駒専」と書いて、「日」は日大、「東」は東海大、「駒」は駒澤大、「専」は専修大のこと。一方「マーチ」の表記は「MARCH」。「M」は明治大学、「A」は青学、「R」は立教、「C」は中央、「H」は法政のことです。
言うまでもなくトップは東大で、その下は早慶、またその下に「MARCH」がある。そういうの、面白いと思ったんですよ。

――ランク付けの呼び方が?

面白いし気が利いてる。だから流行るし、そもそも覚えやすい。

――「Fラン」というのは、そういう大学よりもっと下のランクなんですよね?

そうです。Fランクの大学のことだから。偏差値が低くて誰でも入れる大学のこと。別のチャンネルによると、代数が出来ない、英語も中学生レベルから始めないといけないとか、相当低い。定員割れしているのも、ひとつの特徴と言われているらしい。
そういう大学に入るのは、そもそも勉強をする習慣がない人たちなんだよ。やっと高校を卒業した人たち、もちろんその高校も公立じゃなくて私立。ひとまずやることもないので大学でも行くかという感じで選ばれた大学がFラン。
そんな人たちが大学に入って何をするかというと何もしない。勉強はしないし就活だってやらない。その時点でどんどん落ちこぼれて行くんです。
『Fラン』は、そういう学生たちを面白おかしく、物語形式で解説する。しかもイラスト屋やボイスロイド等の無料の素材を使って、脚本の面白さだけで惹きつける。さらに、それを週二回、新エピソードをアップし続けているんだから感心するしかない。私はすっかりハマって、過去のエピソードもすべて見たからね。

――押井さん、本当にハマってますね。

うん、というのもこのチャンネルだけでもいろんなことがわかるんだよ。就活についてだけじゃなく、社会生活全般について。おそらく、これを見ていれば、社会生活の転落は防げると思う。

――と言うと?

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