注目のお笑いコンビを紹介する『OWARAI Bros.出張版これからの芸人百景』第6回は、『キングオブコント2021』(TBS系)で準優勝し、『M-1グランプリ2021』(テレビ朝日系)の準決勝進出も果たした男性ブランコ。漫才とコントの作り方の違いや、周りの芸人から“ヤバい”と言われている平井と“元祖ゲキヤバ”と言われる浦井のキャラクターについて語ってもらった。
企画・構成/竹村真奈、村上由恵(タイムマシンラボ)
取材・文/佐藤ろまん 撮影/大槻志穂
■『KOC』のおかげでお客さんの見る姿勢が変わった
――準優勝した2021年の『キングオブコント(KOC)』で披露した「ボトルメール」と「袋」という2本のコントを選んだ決め手は?
浦井 2本とも今年作ったネタですが、「ボトルメール」は、いいのができたので核にしようと思って、もう1本が決まらなくて。
平井 ふたつ候補があったんですね。
浦井 「袋」じゃないほうはいろいろ変えてもうまくいかず、賞レース向きじゃないとなり、最終的に「袋」にしました。
――ちなみにもう1本の候補は?
平井 「ぶどう」というネタです。
――どんな反応だったか気になりますね。後半の展開も含めて。
平井 テイストがまったく違いますからね。
――(11月22日取材時点で)2021年の『M-1』では準決勝まで勝ち進んでいますが、手応えは?
平井 自己紹介+ツカミみたいのをしていますけど、お客さんが最初から見る姿勢を持ってくれているのが、ありがたい環境ではありますね。
――漫才とコント、取り組み方の違いは?
平井 ネタの作り方が違います。コントはわりかし台本っぽくなっているんですけど、漫才は台本がなくて、だいたいの流れが僕の頭の中にあり、それを口頭で浦井に伝えます。
浦井 僕がツッコミを考えて、その場で返すっていう感じですね。
平井 なるべくコントではできない、漫才でしかできないコント漫才にしたいなと思います。
浦井 大学時代の演劇サークルではコントしていたんです。でも、大阪のNSC(吉本興業の養成所)に入ったんだから、漫才をやろうとなり、半年くらい経っても上手くいかない感じなので、「一旦コントに切り替えてみるか」と。
平井 2010年の『M-1』は1回戦で落ちて、再エントリーでさらにまた落ちて。
浦井 1年で2回落ちたっていうのは、NSC生にはショックすぎました(笑)。
■一緒にユニットライブをやっていた芸人が結果を出すジンクス
――NSCの同期には、コロコロチキチキペッパーズさん、霜降り明星さんらが先に賞レースで結果を出しましたね。
平井 コロチキの『KOC』優勝は本当ショックで、「おめでとう」はいまだに言っていません(笑)。霜降りは大阪時代にユニットライブとかやっていたけど、今はもう、現実味がないくらい売れちゃって。
浦井 最近ありがたいことに、タクシー移動が増えたんですけど、どのタクシーに乗っても霜降りのCMが流れてます。
平井 あれも慣れたよな(笑)。2021年の『KOC』で、霜降りは準決勝で落ちたんですが、2、3日後にせいやから「悔しくて送られへんかったけど、おめでとうな」ってLINEがきて。まだ悔しいって、あれだけ売れてる人は、それくらいの魂を持っているんですね。
――他事務所ですが、ハナコさんとも同期ですね。親しくなったのは『笑けずり』(2016年放送『笑けずりシーズン2〜コント編〜』NHK BSプレミアム)からですか?
浦井 そうですね。そこで一緒になって、ユニットライブを2回くらいやった直後に、『KOC』(2018年)でハナコが優勝しました。ユニットライブをやると、相手がどんどん売れていくんですよ。
平井 本当にそう。
浦井 『有吉の壁』(日本テレビ系)でハナコと会ったとき、『KOC』準優勝を喜んでくれたんですが、菊田(竜大)は「面白かったよ、1本目。2本目は見ずに寝ちゃったけど」って(笑)。
平井 菊田らしい(笑)。
浦井 『KOC』決勝前にテレビ局で会ったときの菊田には「お前らのネタ1本も観たことないけど、絶対面白いと思うから」って言われました。
■平井はヤバい人? 一方浦井は……
――目に浮かびます(笑)。ところで最近の平井さんは芸人仲間から“ゲキヤバ”としてフィーチャーされていますね。
平井 これは『TV Bros.』さんからも広めてほしいんですけど、全然ヤバくないです。
浦井 そういう人ほど否定するんですよね。先輩に囲まれて、ガーッと1時間ヤバいエピソード言われるっていうライブを2回(『いかにして平井はヤバいと言われるようになったのか』と『ガチヤバ〜いかなる理由から平井はまだヤバいと言われてしまうのか』)やりましたから。
平井 アイロンヘッドの辻井(亮平)さんが言い始めたんですけど、米粒くらい小さなものをホットドッグくらい大きく粒立てるんですよ。
浦井 米が小麦に変わりましたよ(笑)。
平井 サイズ感ね(笑)。それからロジャーさん(大自然)やタイ(やさしいズ)、浦井がちっちゃい粒を大きくし始めて……。本当に愉快な方々です。
――浦井さんから平井さんのヤバいエピソードを教えていただけますか?
浦井 いっぱいありますが、作家のワクサカ(ソウヘイ)さんとZOOMで打ち合わせをしたとき、夜9時くらいだったんです。ワクサカさんの画面が、真っ昼間の多摩動物公園のバーチャル背景で、それを見た平井が「今、外ってそんなに明るいんですか?」って。そんなわけないわ(笑)。
平井 むっちゃ背景がキレイにハマってたんですよ。
浦井 あと、妖精大図鑑さんっていう知り合いの劇団があって、アフタートークのゲストにふたりで呼んでいただいたとき……。
平井 何? 知らんやつや。
浦井 午後6時半開演なので、6時半ちょっと前に行けばちょうどよかったんです。僕ら有楽町から飛び出しだったんですが、平井は開場もしていない、みんながまだ準備している5時半に着いて。早く着きすぎたら、近所の喫茶店とかで時間潰すじゃないですか。平井は受付のパーティションの隙間みたいなところで、待機していたんです。
――(笑)。まだゲキヤバエピソードが増えそうですか?
浦井 先輩がいっぱい拾っているんで、また貯まっていると思います。
平井 アンテナ張りすぎなんですよ、お笑いさんは。
――一方の浦井さんも、ザ・マミィさんのラジオ『カラフルオセロ』(文化放送)にゲスト出演した際、“睡眠欲のクズ”とも言われていましたね。
平井 “元祖ゲキヤバ”とも言われてましたね(笑)。
浦井 大阪時代に滝音の秋定(遼太郎)たちと一緒に住んでいて、上京してサンシャインののぶきよ、バビロンの千葉(ストロガノフ)と一緒に住んでたんですけど、みんなから「お前が一番寝ている」って言われました。
平井 いつ見ても寝ている怠惰の怪物ですね(笑)。あと僕ら6年前に上京するってとき、浦井とルームシェアしている秋定に、1カ月前になっても上京するって伝えてなかったんです。秋定がどっかから聞いて「東京行くの?」って(笑)。
浦井 「聞いていないぞ」って状況でした。
平井 のぶきよと住んでいたときも、プレイステーション4を買ったのに、3カ月くらい黙っていたし(笑)。
浦井 コントローラ1個のままイヤホンして、ひとりでゲームしていました(笑)。「買ったよ」「ワー!」ってなるのが、ちょっと面倒くさくて。
平井 あと浦井は帽子をかぶるんですけど、かぶっている姿を見た者はいないんですよ。誰かが置いてある帽子に気づいて、実はかぶっているところを見られたくないから、部屋に入る前に脱ぐんですって。
浦井 いろんな面倒くさいが重なっているんですね。「帽子かぶってるやん」って言われたら、それをさばくのも面倒くさいし、出入りの挨拶で脱いだりかぶったりも面倒くさい。外に出てだいぶ過ぎてから、サッとかぶって帰ります。
――秘密主義ということでしょうか?
浦井 積極的に自分のことを話そうとはしないですね。手の内というか、こういう人間だと確定されたくないというか……。
平井 誰に?
浦井 わからない。誰に言うてるのかもわからないけれど(笑)。
平井 怠惰って言われる浦井ですが、結構前からめちゃめちゃやってくれるんですよ。最近、提出物が多くててんやわんやなんですけど、全部受け持ってくれて、タクシーの精算やマネージャーのやりとりも全部やってくれるんで、ありがたいですね。
浦井 それは2年前にブチギレられて、本当に反省しました。
男性ブランコ●浦井のりひろ(1987年12月3日生まれ、京都府出身)と平井まさあき(1987年8月1日生まれ、兵庫県出身)が別々の大学の演劇サークルで出会い、その後そろって大阪NSCに入学。2011年にコンビ結成。2021年、『キングオブコント』準優勝。2021年12月25日(土)赤坂草月ホールにて、男性ブランコのコントライブ『てんどん記』開催。現在オンライン配信チケットのみ発売中。
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