<文/太田光> 舟 京都。 沈黙の男を乗せた小さな舟が、黒い水の面をすべっていく。その日は風も止み、空一面を覆った薄い雲が月を霞ませ、そろそろ近づいてくる真夏の暑さが川床の土からもやになって立ち上がってくるようだった… Read more »
- REGULAR
<文/太田光> 舟 京都。 沈黙の男を乗せた小さな舟が、黒い水の面をすべっていく。その日は風も止み、空一面を覆った薄い雲が月を霞ませ、そろそろ近づいてくる真夏の暑さが川床の土からもやになって立ち上がってくるようだった… Read more »
<文/太田光> 不夜城 その部屋の窓からは大東京の夜景が広く見渡せた。ばらまかれたような光の粒が宝石のように美しい。 女性は一日の激務の終わりにこうして窓際に立ち、世界有数の大都市を見下ろす時間が好きだった。昼間は嫌… Read more »
<文/太田光> 外へ 『ステイホーム、家にいましょう。不要不急の外出は避けてください。命を守りましょう』 テレビから連日呼びかけられるようになって、もう何十日経ったのだろう。 『自分だけは大丈夫と思っている人達がいます。… Read more »