自分を身体検査してみる【大根仁 8月号 連載】

先日、第7回大山勝美賞をいただいた。と、書いても一般の方には「大山勝美? 誰?」であろう。大山勝美さんとは……【元TBSのドラマプロデューサー・演出家であり、1957年の入社以来、ドラマ畑一筋を歩み、『ムー』『岸辺のアルバム』『ふぞろいの林檎たち』『想い出づくり』を手掛け“ドラマのTBS”の全盛期を支えた(Wikipediaより、一部編集)】という、言ってしまえば伝説のドラマプロデューサー・演出家である。

残念ながら2014年に死去されたのだが、その翌年に一般社団法人「放送人の会」が大山さんの功績や意思を継いでゆきたいという思いから「大山勝美賞」を設立、その対象は【ドラマの若いクリエイターを個人で表彰します。個々の作品ではなく、長い期間の仕事の仕方を総合的に判断します(放送人の会HPより)】とある。以来、毎年プロデューサーが1人、ディレクターが1人ずつ賞に選ばれてきたのだが、過去の受賞者は皆、ヒット作や話題作、もしくは高クオリティーなドラマを作ってきた人ばかりである。

数ヶ月前、放送人の会の理事・八木康夫さん(元TBSドラマプロデューサー)から受賞の電話をいただいた時、まず言ったのは「え? 僕でいいんですか?」だった。これは自虐でも謙遜でもなんでもなく、そりゃ深夜ドラマではそこそこ功績を残してきた自負はあるが、こんな立派な賞をいただくほどのヒットドラマや話題作を作ったことはない。さらに大山勝美さんのようにドラマ畑一筋の道を歩んできたわけでもなく、映画・CM・ミュージックビデオ・ドキュメンタリー・クイズ番組・旅番組etc.と、「映像」と名の付くものなら、なんでもやってきた悪食野郎だ。こんなオレがこの賞をいただいたら、大山勝美さんの名前を汚すことになりかねない。

だが悪食の悪食たる所以は、食えるものはなんでも食うし、貰えるものは貰っちゃうことである。もちろんありがたくいただくことにした。「選考理由をメールしますので、確認してください」。後日、八木さんから送られてきた選考理由には、【大根仁氏はテレビ東京を中心にして、『まほろ駅前番外地』などの深夜ドラマを手がけてきた。脚本・演出を兼ねることが多い。2010年には『モテキ』をヒットさせ、この映画化で監督デビューも果たした。都会的な映像感覚とともにギャグのセンスも併せ持ち、若い世代に強く支持されてきた。2019年のNHK大河ドラマ『いだてん』では外部から初めて演出陣に招かれ、2020年には異色のラブコメディ『共演NG』(テレビ東京)が話題を集めた。視聴者層を広げたこうした活躍ぶりを評価したい】とあった。

うーむ……こうやって書かれると、間違いではないし、確かにそれなりの功績のようにも感じる……どうにもこそばゆい。それに、こう見えてオレは叩けばホコリが出る男だ。過去のいじめや差別ネタなどは記憶の限り無いが、こんな時代だから何かを掘り返されて炎上、賞を辞退するなんてこともあり得なくは無い。大山勝美さんの名を汚さぬためにも、今一度選考理由に沿って、過去作品を身体検査してみよう。

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