共感性の高い歌詞で注目を集めるシンガーソングライター・有華。メジャー1st Full Album『messy bag』を完成させた彼女に、これまでのこと、制作エピソードなどを教えてもらいました!
取材&文/吉田可奈 撮影/米玉利朋子(G.P.FLAG inc)
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まわりにいてくれる人を笑顔にしたいんですよね
――今年、SNSで「Partner」「Baby you」が大ブレイクしたことで、どんな変化がありましたか?
すごく濃い1年を過ごさせていただきました。なにより、アーティスト写真やジャケット写真から、ふわっとした女の子らしい人だと思われがちなのですが、普段は喋るのが大好きで、ずっと前のめりの姿勢なんです。そのせいか、日々ギャップを感じてもらえることが多くて(笑)。
――たしかに、少し話しただけでもわかる、明るくて元気なタイプですよね。
よく言われます(笑)。基本的に、周りにいる人を笑顔にしたいんですよね。なので、最初にみなさんが抱えてくれる第一印象と、素の自分のギャップに戸惑うことも多くて。とはいえ、素の自分を偽ることはできないので、今後もイメージを裏切り続けていきたいと思っています(笑)。
――“周りを楽しませたい”という気持ちは、音楽活動にリンクしているのではないでしょうか。
そうですね。もともと誰に対しても楽しい気持ちで話したい、笑顔にしたいと思う性格なので、音楽活動を通して聴いてくれる人たちをハッピーにしたいという気持ちがすごく強いんです。
――それは、音楽始めたときからですか?
はい。実は、生まれて初めて作った曲が、高校で出来た親友へ向けた『キミへ』という曲なんです。それまで曲作りをしたことがなかったので、何から手を付けていいかわからなかったのですが、まずは身近な人に対して書いてみようと思い、その曲を作り始めました。最初はお手紙を書くように歌詞を書いてみましたが、なかなかうまくいかなくて、ピアノを鳴らし、歌いながら作り始めたら、スムーズに作ることが出来たんです。
――素敵な原点ですね。
それがあるから、自分が体験したことや、“この人に届けたい”という強い想いから曲が生まれることが多いんです。
――そのお友達に曲は聴かせましたか?
もちろん! 初めてのライブも招待して、聴いてもらった時に“良かったよ”と言ってもらえてすごく嬉しかったですね。でも、それよりも自分の気持ちをちゃんと届けられたことがすごく嬉しかったことを覚えています。
失恋をして、自分がどん底で悲しいという時が、一番作業が進むんですよね(笑)
――『messy bag』にも友情を歌った「Bestie」という曲がありますが、もしかしてその親友へ歌った曲ですか?
はい。小学校、中学校と同じ友達だけで過ごしてきた私にとって、高校で新しく出会った彼女は本当に刺激的な存在で、いろんな感情を与えてくれる、大切な存在で。それに、今も私の音楽活動もずっと見守ってくれていて、やっと「Partner」がヒットして、テレビで歌えるとなった時に、自分事のように泣いてくれたんです。そんな彼女に、「今の自分になれたのは、あなたがいたからだよ」という気持ちを書きました。
――そのお友達は、有華さんと性格が似ているんですか?
まったくの真逆です。私は目立ちたがり屋で前に出たいタイプなんですが、彼女は他人にちゃんと寄り添える人、支えられる人。違う観点があるからこそ、相性がいいのかもしれないですね。それに、私が間違えそうになった時は、厳しく指摘もしてくれるんです。なにより、「有華だったらこうするかもしれないけど、こっちの方がいいかもしれないよね」と一度共感してから、諭してくれるんです。ただ、恋愛で私が同じような傷を負いそうな時は、私の性格をわかりきっているので、「どうせ有華が決めるんやろ?」と言ってくれて(笑)。案の定失敗しても、そこを責めることなく、ちゃんと支えてくれる、大事な友達です。
――友達が寄り添ってくれる温かさを知っているからこそ、寄り添えるような曲を作りたいと思うのかもしれないですね。
そう思います。自分で書いた曲はもちろん、共作した曲にしても、私が届けるからには、どう寄り添って、どう伝えるかということはブレずにいたいですね。
――有華さんと言えば、そんな友情ソングのほかに、リアルなラブソングも大きな支持を受けていますが、どのように生み出しているのでしょうか。
私のラブソングって、最初は失恋ソングばかりだったんです。
――ひとつの失恋で、いろんな曲が生まれたのでしょうか。
当時は、いろんな人を好きになっちゃう惚れっぽい時期で(笑)。
――あはは。幼稚園児みたいですね!
そうなんですよ。子どもみたいに、ちょっとでも優しくされたら「好き!」となっていて。とはいえ、一方的に盛り上がって、相手に想いを伝えることもなく“友達と思われているだろうな”と感じたらその心情を曲にしたり、すでに恋人がいる人をいいなと思った時に“タイミングが合わなかったな”という曲を書いたり。まあでも、本当に失恋をして、自分がどん底で悲しいという時が、一番作業が進むんですよね(笑)。
――根っからのクリエイターですね。
そうみたいです(笑)。あとは、悲しい気持ちに浸るだけよりは、この気持ちを曲にして、誰かに評価をしてもらおう、そして慰めてもらおうという気持ちになるんです。そうやって日記のように気持ちを曲にしてSNSにアップしていたら、聴いてくれた方たちが体験談を教えてくれたり、コメントをいただく機会も増えていきました。
自分のことを信じていたから、頑張れている気がします
――有華さんの曲は、共感度がものすごく高いものが多いですからね。
そうだと嬉しいですね。あとは、恋愛をしたとしても、平和な日常が続くことが苦手なタイプなので、どうしても相手にケンカをふっかけちゃうんです。
――……なんで?
「なんで?」ってなりますよね(笑)。深層心理では、曲を作るためなのかなって思うこともあるんですが、ケンカして2人のことでぎゃーぎゃー言い合うことが恋愛の醍醐味だと思っていて。でも、そうすると、当たり前ですが相手は疲れちゃって、長続きはしないんです。“あんなことしなければよかった”とは思うんですが、その反面“よし、これで曲ができるぞ”とも思っちゃうんですよね。……運命の人に出会うのは、時間がかかりそうです(笑)。
――有華さんの楽曲は、中高生にも大きな支持を得ていますが、そういった恋愛観もフィットしているのかもしれないですね。
あはは。「Partner」も、結婚が決まった主人公の人生のパートナーに捧げる歌詞なんですが、中高生の子たちが共感してくれて歌ってくれているのを見ると、年齢は関係がないんだなと思いました。
――SNSで爆発的なヒットとなり、ブレイクするまで、有華さんは時間がかかったタイプだと思うのですが、それまでずっと諦めなかったモチベーションはどこにあったのでしょうか。
私はずっと日記を書いているんですが、 “なかなかうまくいかない”“どうしたらいいんだろう”という弱音もありながら、最後に必ず“有華なら大丈夫”って終えているんです。そうやって自分のことを信じていたからこそ、頑張れている気がします。まあ、根拠のない自信なんですけどね(笑)。もちろん、ずっと見守ってくれていたファンの方たちの期待に応えたいという想いも強いですね。
――その“根拠のない自信”は、昔からありましたか?
ありました。小学生の頃から、絶対に歌手になると信じ切っていたんです。それしかないと思って生きてきたくらいで。なので、大人になるにつれ、オーディションに落ちるとか、チャンスがつかめないということが信じられなくて!
――その気持ちは、絶対に必要ですよね。
そう思います(笑)。ただ、自分ではいいと思っていても、ライブでお客さんが少なかったり、うまくいかなかったりすることが続くと、どうしても揺らぎますよね。そんな時は、“次は違うことをしてみよう”と、いろんなことに挑戦していきました。その中の一つが、SNSだったんです。もし、ライブハウスで見つけてもらえないまま、それでもここで頑張ろうと思い続けていたら、きっと今の私はいないので、柔軟性を持つ大切さを感じています。
――トライアンドエラーをずっと続けていたと。
そうですね。恋愛も、曲作りも、見せ方も(笑)。その中で、今回の『messy bag』では、共作させていただくことも、新たな挑戦だったんです。今までは、自分が全部正解だと思っていたことが、ほかの方と作ることで、新しい正解を見つけることができたんです。
――その共作の相手として、andropの内澤さんを選んだのはどんな理由があったのでしょうか。
いざ誰かと共作をするとなった時に、最初にスタッフさんから内澤さんのお名前が挙がったんです。これまでandropの楽曲ももちろん聴いていましたし、ほかのアーティストさんに楽曲提供されていた曲も聴いていたので、“内澤さんと出来るの⁉”とすごく驚きました。実際に曲作りをするときは、内澤さんが、私にたくさんの質問をしてくださったんです。そこで私のケンカを売りたがる恋愛観なども話していたら、先ほどと同じように「……なんで?」と聞かれましたね(笑)。
――あはは。そうやってディスカッションをする中で生まれていったんですね。
はい。内澤さんが提案してくれた言葉選びも自分にはないものだったのですごく新鮮で、これまで物語性を重視していた私の歌詞の書き方に変革をもたらしてくれて、いい経験になりました。さらに「Partner」ではCHIHIROさんとご一緒させていただいたのですが、恋愛のアドバイスが神のようで、何度も目から鱗が落ちました。でもだからこそ、CHIHIROさんは恋愛している人たちに響く曲を作ることができるんだなって思ったんです。それなら、私の言葉としてどうやって伝えたらいいのかということも一緒に考えてくださったので、また新しい私の引き出しを開けてくれたように思いました。
――様々な方と楽曲制作をすることで、大きな成長があったんですね。
はい。あとは、基本的に喜怒哀楽が大きいので、もっと人間的に成長しなくちゃいけないなって思うんですが、できるなら子どもでいたくて! その気持ちも『ピーターパンシンドローム』という曲にしているくらいなんです(笑)。でも、最近は“大人にならなくちゃいけないな”という側面が増えすぎて、ちょっと悩んでいます。本当は幼稚園児のままでいたいんですよ…(笑)。
――楽しい、嬉しい、悲しい! その気持ちだけで生きたいですよね。
そう! それを母親に言ったら、「いいんじゃない?」ってまさかの肯定をしてくれて(笑)。本当に甘やかされて育ってきているので…。
――自覚はあるんですね。
あります、あります! でも、後輩が出来てきたので、一度スマートに奢るということをやってみたいんです。何度かチャレンジしたんですが、後輩の方がスマートで、いつのまにか払われているようなことも多くて(笑)。根っからの末っ子気質なのかもしれません(笑)。
――あはは。そんな有華さんのワンマンライブが年始に開催されます。
初めての着席ライブなので、MCの時に“ちょっと座って!”って言うのが今から楽しみで!
――やりたいことがピンポイントすぎません(笑)?
ライブハウスで長くやってきた人としては憧れなんです! アルバムの曲をそのまま演奏するものもあれば、アレンジして歌ってみたり、さらにこの『messy bag』が好きになってもらえるようなライブが出来たらいいなと思っています。もちろん、MCは長めになりますので、覚悟して来てもらえたら嬉しいです(笑)。
『messy bag』
NOW ON SALE
【初回盤】¥4,950【通常盤】¥3,300
日本コロムビア
有華(ゆか)●シンガーソングライター。昨年配信した『Partner』はSNS総再生回数13億回、ストリーミング総再生6000万回を突破。今年1月に配信した『Baby you』は世界8か国のバイラルチャートでTOP10入りを果たし、TikTok上半期トレンド対象2023ミュージック部門を受賞。
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