「コーチェラなんて夢みたいな話だけど……」 男女混成8人組になった新生lyrical schoolに涙あり笑いありのキックオフインタビュー

lyrical schoolが男女混成の8人グループとして生まれ変わった。前体制から引き続き活動するのはminanのみ。新メンバーはmalik、ryuya、tmrwの3人のボーイズと、reina、hana、sayo、manaの4人のガールズ。デジタルシングル「NEW WORLD」を皮切りに活動をスタートさせた。今回は初々しい新生リリスクの8人に現在の心境を話してもらった。

取材&文/宮崎敬太 撮影/佐野円香

 

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ファンからメンバーへの転身

 

ーー新体制のlyrical schoolは男女混成ですね。

 

minan:これはプロデューサーのキム(ヤスヒロ)さんが10年くらい前からあたためていたアイデアで。lyrical schoolはこれまでもメンバーの脱退/加入があって、今回は何か目に見えて新しいことしないと、ファンのみんなが付いてきてくれない気がしてたんです。だからキムさんからこのアイデアを聞いた時「めちゃくちゃ面白そう!」と思いました。何より大きかったのは、私自身が「やってみたい!」と思えたことですね。

 

ーー新メンバーの中にはリリスクのファンの方もいらっしゃるとか。

 

malik:もともとリリスクの曲が好きで聴いてました。ある日「ライブ行ってみたいな」と思ってウェブサイトを見たら、オーディションの告知をしてて。しかも性別不問って赤く書いてあったから「これは受けるしかない」と勝手に思ってしまって。

 

ーーファンからメンバーって結構ハードル高くなかったですか?

 

malik:僕の場合はリリスクのクリエイティブワークが好きだったんです。楽曲とかアートワークとか。だから「メンバーになりたい!」という気持ちより、なんらかの形で関わるきっかけを作りたいという気持ちのほうが強かったんです。

 

hana:私もmalikに近いです。ラッパーのvalkneeさんが大好きで、そこからリリスクを知りました。でも最近です。たまたまサイトを見たらオーディションの募集をしてて、自分の好きなことをしてみたくて応募してみました。

 

ryuya:「ファンからメンバー」という意味だと、僕は10年くらい前からリリスクが大好きでライブにも通ってました。前体制最後の野音にももちろん行きました。オーディションの告知を見た時、最初は完全にファン目線で「男の子が入ったリリスクってどんな感じだろうな?」と思ってたんです。でもよくよく考えると僕は応募資格を満たしてた。だんだん「曲も聴いてて、ライブにも通ってた。こんなにリリスクが好きな僕が応募しないのはどうなんだ?」と思うようになりました。迷いに迷って締切直前に意を決して応募しました。

 

mana:私もリリスクの大ファンで、しかも前体制のオーディションにも参加してるんです。前回は落ちてしまいましたが、ライブに通う中で、リリスクへの愛は増しました。前体制はそれくらいかっこよかった。でも、常に「ファンである自分」と同時に「オーディションに落ちた自分」もいて。そういう意味で複雑な5年間でしたね。去年の野音で4人が脱退することを知って、またオーディションがあることを知り、5年間考え続けたものをぶつけようと思いました。

 

minan:manaちゃんはオーディションの書類審査で自作のラップを送ってくれたんです。

 

mana:1曲だけですけどね(笑)。私はC.O.S.A.さんとAwichさんを尊敬しています。

 

reina:私はもともと別のグループで5年間アイドルをやってました。でも解散してしまって。進路に悩んでた時にオーディションのことを知りました。もちろんリリスクのことは知ってました。ラップするヒップホップアイドル。あまりにも自分と掛け離れてるけど、だからやってみたいと思ったんです。

ーーその気持ちが一番ヒップホップだと思います。

 

sayo:私はずっとアイドルを目指してました。でもなかなかうまくいかなくて。そんな時、たまたま友達が誘ってくれたライブがリリスクでした。普段は誘われても一緒に行くタイプではないんですが、その時はなぜか「行こう」と思ったんですよね。そしたらそのライブでものすごい衝撃を受けたんです。実はアイドルになることを諦めかけてたけど、リリスクのステージを見て「こんなかっこいい人たちがいるならもうちょっと頑張ってみよう」とすごく勇気づけられました。その時はメンバー募集はしてなかったけど、時は流れ、今回のオーディション告知を見て私は勝手に「これは運命だ!」と思って応募しました(笑)。

 

ーーリリスクのどこが衝撃だったんですか?

 

sayo:私が今まで見てきたどのアイドルとも違ってたことです。ヒップホップをまったく通ってこなかったけど素直にかっこいいと思いました。すっごいかわいい系の人がラップをしたり、背の高い人がかっこいい歌を歌って。それぞれに個性があったことが一番の衝撃でしたね。

 

tmrw:僕は知人にオーディションを教えてもらったことがきっかけです。僕はこれまでの人生で自分から行動することが皆無でした。アイドルにもヒップホップにも関心なかったし、そもそも誰かと何かすること自体が得意じゃない。友達もそんないない。でも歌や弾き語りは好きで玉置浩二さんに憧れてます。だから話を聞いた時はあまり興味を持てなかった。けど、だんだん「このまま人生で何も新しいことをしないのも面白くないかも」と感じ始めたんです。それに仮に落ちたとしても、今回のチャレンジは自分にとってなんらかのプラスになると思ったのでオーディションに参加しました。

ーーそれはものすごく大きな人生の第一歩目ですね。

 

minan:tmrwは語り口こそ静かなんですけど、最初の書類にも、ものすごく長文の熱量ある文章を送ってくれたんです。

 

初めてのライブでメンバーになったことを実感

 

ーー「NEW WORLD」はものすごく郷愁があると思っていたんですが、それはきっと歌やラップにみなさんそれぞれのストーリーと思いが乗っていたからなんですね。現在はどんな心境ですか?

 

mana:自分がメンバーだと自覚が出てきたのは、2月12日の東京・Spotify O-WESTで開催された初ライブ「lyrical school one man live 2023 NEW WORLD」以降ですね。それ以前はなかなか実感がわかなかった。私はもともとリリスクのファンだったから、観に来てくれる方の気持ちがわかった。約半年間も待たされて、全然知らない人が出てくる。ファンだった時、私はリリスクにものすごいエネルギーをもらってたから、自分が同じことをできているのか本当に不安でした。でもライブの後、ファンの方からSNSにいっぱいメッセージをいただいて……。

 

ryuya:泣いちゃうよね。自分もファンだったからmanaが言ってることはめちゃくちゃわかる。ティッシュどうぞ。

 

mana:……ありがとう。(鼻をかんで)こうして取材を受けたり、新しい活動の準備をする中で徐々にという感じです。

ーーminanさんはファンがメンバーになることについてはどのように思っていたんですか?

 

minan:lyrical schoolはファンとメンバーの距離が近いんですね。だからこそ特にmanaちゃんの加入に関してはすごく悩みました。私自身は2回もオーディションに挑戦してくれた熱意、なによりlyrical schoolを愛してくれてることが嬉しかった。そんな人と一緒にお仕事してみたいと思いました。一方でファンのみんなはどう思うだろうという不安もあって。manaちゃんが素直に応援されない状況が生まれてしまうのは本意じゃない。さんざん悩んだけど、どこかで吹っ切れたんです。「いいじゃん」って。「リリスク大好きな子がメンバーになってくれるなんて最高じゃん」って。これはmanaちゃんに限らずなんですけど、新しいメンバーの存在は全員心強い。私はこれからの活動が楽しみで仕方ないです。

 

ーー初ライブの練習はどのように進めたんですか?

 

minan:それぞれ個別に準備して、定期的にリハスタに集まって調整しました。メンバーが決まったのが開催2ヶ月前だったので、そこから8回くらいリハスタに入って。全然時間がなかったです。ただみんな思ってた以上にいろいろできてびっくりしました(笑)。

 

malik:仮歌をもらった後、カラオケボックスに行って歌い込みました。

 

ryuya:僕も。毎回ボイスメモに録って、定期的に聴き直してました。そうすると良い時と悪い時があって、何が違うのかを考えて修正して、歌って聴き直すの繰り返しでした。

 

hana:あとリハーサルがすごく重要でした。自分では気付けないことを指摘してもらえるから。

 

malik:だね。自主練、リハでの修正、自主練の繰り返しでした。

 

sayo:やっぱりカラオケとリハは全然違うんですよ。カラオケだと自分の歌だけに集中できるけど、グループで歌うリハーサルではみんなの音も聞かなきゃいけない。散々練習したのに、合わせるとズレてたり。あと私はヒップホップを聞いてこなかったから、ヒップホップ特有のレイドバック感が全然わからなくて。

 

tmrw:わかる。かなり難しかった。

ーーノリやグルーヴは言語化できないものだから想像を絶する難しさだったと思います……。ちなみにみなさんは「NEW WORLD」をもらった時、どんな印象でしたか?

 

malik:イントロを聴いた瞬間、めちゃめちゃかっこいいと思いました。「好きだったリリスクじゃん!」って。しかも男の子が歌っても、女の子が歌っても、誰がどのパートやっても良さそうみたいな妄想が膨らみました(笑)。

 

ryuya:イントロを聴いた時、ビジョンが見えたんですよ。スモークがいっぱい焚かれたデカいステージで後ろから照明に照らされて僕らがステージに上がっていくっていう。その時は歌詞も自分たちの声も入ってなくて、自分のヴァースもわからない状態だったけど、実際にレコーディングして、MVの撮影をしていくうちに、なんかちょっとずつピースが埋まって完成していくのを実感できたんですよ。「ああ、これは本当に自分たちの曲なんだ」って。すでに何回かライブで歌っているけど、この先5年後も10年後も……。

 

mana:(ティッシュを差し出す)

 

ryuya:(鼻声で)うう、ありがと。……50年後も変わらず、ずっと歌っていける曲なんだなって実感できました。

 

hana:良し悪し、好き嫌いという意味ではなく、私はマスタリングされた音源を聴くまで全然実感が湧きませんでした。自分のパートもレコーディング直前までわからなくて、制作中も自分の声がどこでどう活きてくるのかまったく想像がつきませんでした。

 

mana:私もhanaちと同じような感覚でした。そもそも仮歌というものを聴いたのも初めてで。当然だけど今まではリリスクとして世に出された音源しか聴いたことがなかった。そのせいか最初は「これが自分たちの曲になるんだろうか」って感覚でした。レコーディングも自分のところを録って、入れ替わり立ち替わりだったし、マスタリングされた音源もMVを撮影する直前だったから、それまではしっくりこないというか、実感が湧かなかったです。

 

 

ーーhanaさんとmanaさんはマスタリングされた音源を聴いてどんな印象でしたか?

 

hana:驚きました。「こんな素敵になるんだ!」って(笑)。

 

mana:ね(笑)。「なんか曲になってる!」「これが『NEW WORLD』って曲なんだ!」みたいな。MV撮影中は何度も聴くから、どんどん自分たちの曲なんだって実感が出てきて大好きになりました。あとリハを重ねていくうちに、歌詞の意味もわかってきて、「これって私たちのために作ってもらった曲なんだ」って気づいたんですよ。ほんと感激しちゃって。……ダメだ、また泣いちゃいそう。

 

ーーティッシュどうぞ。いまお話に出たMVも素敵でした!

 

minan:泊まりがけで2日間撮影しました。その時はメンバー全員揃って会うのが2〜3回目くらいで。

 

reina:撮影の日は早朝6時に集合してバスでロケ地に行ったんですよ。隣の席がmanaちゃんだったんですけど、朝からずっと喋ってて(笑)。

 

一同:(爆笑)

 

reina:たしかハロプロさんの話だったと思います。「BEYOOOOONDSさん、最高だよね」みたいな。そこで打ち解けられた気がします(笑)。

 

tmrw:manaのコミュ力はマジ強力(笑)。

 

hana:私はオーディションの段階で、manaと仲良くなってました。その時もすっごいうるさかった(笑)。実は、ほとんどのメンバーがどっちかというと人見知りなほうなんです。群れるのも得意じゃない。でもこのチームはみんな個性豊かだけど柔らかい。嫌なバイブスを出す人がいない。

 

minan:みんなでいてもそれぞれが自立してるからじゃないかな? 今はもう幼稚園からのツレみたいな感じ。

 

グループとしての目標は武道館と横浜アリーナでの単独公演。夢はコーチェラ(笑)

 

ーー仲間の個性を自然と尊重できるチームって最高ですね。まさに多様性。minanさんはプレイングマネージャーとして新生リリスクをどのように捉えていますか?

 

minan:楽しそうって感じかな。一緒にやってこうって。私はリーダーというニュアンスより、もしみんなに何か困ったことがあった時、私はすでに10年もやってるから何か導けることがあるかも、くらいの気持ちですね。

 

ーーではみなさんの目標を教えてください。

 

tmrw:明確には決まってないんですけど、もっと自分らしい歌い方をしたいですね。今のところできてない実感があるので、そこを突き詰めていきたいです。

 

mana:曲を作ったり、リリックを書くのがすごく好きなので、ソロ名義のアルバムを作りたい。それは自分だけの作品という意味じゃなくて、例えば私がトモ(tmrw)ちゃんの曲を作るとか、グループ内のユニットをやったり、好きなアーティストさんと共演するとか、頭の中に詰まってるアイデアを表現した作品に挑戦したいです。

 

ryuya:僕もソロを作ってみたい。あとリリスクのライブが、お世話になってる人や友達、家族、身近な大切な人たちが会って遊べる場所にしたい。そういう環境をこの先作っていきたいと思っています。

 

sayo:いろんなことに挑戦したいです。ラジオやバラエティ番組にも出てみたいし。ただ今の私は何もできない。だから頑張ります。あとリリスクの中では常に明るい人でいたいんですよね。少しでもいろんな人に元気を与えられる人になりたいと昔から思っていて。いろんなアイドルの方にそういうエネルギーをもらってきたから、私もそういう人になれたらなって思っています。

 

malik:僕は好きなことがたくさんあるから、それを全部やりたい。リリスクならそれができる。僕が僕のままやらせてもらえる。違うジャンルやフィールドのいろんなところに行って、リリスクのヤバさを知ってもらう存在にもなりたいです。

 

reina:そういう意味だと私はグラビアや写真集をフォトグラファーさんやスタイリストさん、編集者さんと一緒に作品を作りたいです。あと驚いているのは、以前いたグループでは一度も言われたことなかったんですけど、リリスクでは「アイドルっぽいね」って言われるんです(笑)。だからこそ私らしい方法でグループに貢献していきたいです。

 

hana:私は写真を撮ったり、文章を書くのが好きなので、ラップのスキルを磨きつつ、リリスクのサブカル担当になりたいです(笑)。

 

minan:私個人の目標はみんながいつまでも健康で楽しく活動を続けられるようにすること。グループとしての目標は武道館と横浜アリーナでの単独公演です。夢はコーチェラ(笑)。お披露目ライブの後、ALI-KICKさんがLINEでプロデューサーのキムさんに、「『NEW WORLD』でコーチェラに連れてってよ」とおっしゃってくださったらしいんです。コーチェラなんて夢みたいな話だけど、目標にしてもいいのかな、いいよね、いや行くでしょ、ってメンバーもスタッフもみんなめちゃくちゃ盛り上がって(笑)。夢を夢で終わらせないためにも、真面目にこつこつ努力していきます。

リリカルスクール●8人組のHIP HOPユニット。初めは2010年に女性6人組のヒップホップアイドルユニットとして結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2023年2月に新メンバー7名が加入し、現在の体制に。

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