オタク女子同士でのルームシェア生活を描いたエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎)【現在コミカライズ版1巻が幻冬舎コミックスより発売中】も話題の、フリーライター藤谷千明さん。
藤谷さんご本人も、ヴィジュアル系に精通したプロフェッショナルとして『マツコの知らない世界』(TBSほか)に出演するなど、オタク道を邁進しておられます。
そんな藤谷さんが、近年の「推し」「推し活」ブームから感じた疑問や違和感を、いろんなジャンルに「推し」を持つ現役オタクの方に話を伺いながら、「推し」ブームの正体を多角的に探ってみようという連載がスタート。その名も「推し問答! 〜あなたにとって推し活ってなんですか?〜」です。
今後ご出演いただく現役オタクの方々は、メンズ地下アイドル、ジャニーズ、ヴィジュアル系、仮面推し活経験者など、多岐にわたる予定!2月より始まる「推し問答! 〜あなたにとって推し活ってなんですか?〜」ぜひご期待ください。
今回は2月の本格スタートに向けて、藤谷千明氏による連載のステートメントを公開いたします。
あなたにとって「推し活」ってなんですか?
文/藤谷千明
題字イラスト/えるたま
「推し」って一体なんなんでしょうね……。急にそんなことを訊ねられても「知らんがな」ってなるかもしれませんが。ここ10年くらいで「推し」という言葉を目にすることが増えました。アイドルソングだったりマンガだったり、近年では芥川賞受賞作の小説、あるいは朝の情報番組まで「推し」「推し活」をテーマにしているものが出てきました。
「推し」は元々(今でも?)はアイドルオタク用語です。「推し」「推し活」というが市民権を獲得していったように、「オタク」も前世紀ほどネガティヴな意味を持つ言葉ではなくなったように思います。
言葉が流行り、拡散し、浸透していくと意味も変化していきます。「推し」の対象は2次元、2.5次元、3次元の人間だけではなく、グルメからコスメまで様々なモノにも使用されますし、最近では「バイト先の“推し”が~」という表現もあるそうです。それはもう「片思い」では?
もはや1億総推し活時代。ここまでくると、わたしの口にする「推し」と、これを読んでいるあなたの「推し」という言葉が、同じものであるのかどうかすら自信がなくなってきます。同じ「推し」を対象にしていても、「テレビ出演をチェックしてSNSや雑誌を通した“推し”を見ることで生きていける」という人と、「毎回コンサート最前列で“推し”を肉眼で確認しないと生きた心地がしない」という人、ふたりが見ている「推し」は同じなのでしょうか?
この連載の担当であるK氏(notオタク)は「オタクの皆さんが楽しそうでうらやましい。私も“推し”をみつけて、“オタク”になりたいです」とおっしゃっていました。業の深いオタクの人からすると「そんな甘いものじゃないんだよ」と言いたくなるかもしれません(わたしは一瞬そう思いました)。ではアイドルやバンドの応援にせよ、マンガやゲームのキャラクターを愛でることにせよ、本来は「ただの趣味」であるはずのものが、「そんな甘いものじゃな」くなってしまうのは、なぜなのでしょう?
先日、書店で「推しがしんどい」「推しがいないのもしんどい」という表紙コピーの雑誌を見つけました。なぜ、しんどい思いをしてまで「推す」のでしょうか。当然、それぞれに理由があると思います。「推し」がいるのが当たり前とされる(かもしれない)時代、あらためて訊いてみたい。それがこの連載のテーマです。
あなたにとって「推し活」ってなんですか?
藤谷千明(ふじたに・ちあき)●1981年、山口県生まれ。フリーランスのライター。
高校を卒業後、自衛隊に入隊。その後多くの職を転々とし、フリーランスのライターに。ヴィジュアル系バンドを始めとした、国内のポップ・カルチャーに造詣が深い。さまざまなサイトやメディアで、数多くの記事を執筆している。近年はYoutubeやTV番組出演など、活動は多岐にわたる。著書に 『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎)。共著に 『アーバンギャルド・クロニクル「水玉自伝」』(ロフトブックス)、 『すべての道はV系へ通ず。』(シンコーミュージック)などがある。 Twitter→@fjtn_c
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