【2022年10月号 爆笑問題 連載】『バカ兄弟』『デジタルマンタロウ』天下御免の向こう見ず

 

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<文・太田光>
バカ兄弟

 赤いツナギを来た兄が、ドンドンドンと戸を叩くと中から弟の声がする。
「誰だ?」
「お前のあんちゃんだよ」
「あんちゃん? 本当か?」
「本当だよ。あんちゃんだ」
「じゃあ、答えてみろ」
「何だ?」
「俺達何でテレビに出られなくなったんだ?」
「……大人の事情だ」
「大人の事情って何だ?」
「子供の事情の反対だ」
「あんちゃんだ!」
 と叫んで黄色いツナギの弟が引き戸を開ける。兄は中に入ってくる。
「ははは! 何やってたんだ?」と兄。
「うん。いろいろ考えごとしてたんだよ。ねぇ、あんちゃん。子供の事情の反対ってどういうこと?」
「ははは、子供が楽しくないことだよ」
「何でテレビは子供が楽しくないことするんだよ?」
「それはな、子供が楽しいことは大人が楽しくないからだ」
「あんちゃん?」
「何だ?」
「何で俺達がテレビに出ると大人が楽しくないんだ?」
「バカだなぁ。お前。いいか。俺とお前のやりとりを、子供が見て笑うだろ? そしたらどうなると思う?」
「どうなるの?」
「子供達に大人がバカだってバレちゃうだろ」
「そうか! だから俺達テレビに出られなくなったんだね! やっぱりすげぇなあんちゃんは!」
「ハハハ! 当たり前だろ!」
「ケケケケ!」
「ん?」
「ん?」
 兄弟が奥を見る。そこには奇っ怪な白い小さな動物がいた。耳が長くてウサギのようだが顔は完全にネコのウサギネコだ。
「あんちゃん! あれ何だ?」
「あれは……ネコだ」
「失礼ニャ! おれはネコじゃニャイ!」
「あんちゃん、ネコじゃないって言ってるよ?」
「お前はバカだな」
「うん! 俺はバカだ。あんちゃんもバカだろ?」
「そうだ。俺もバカだ。俺達は2人ともバカだ。バカだからバカだって自分で認めてる。でも本当のバカは、バカって言われるとバカじゃない!って言うだろ? 自分のことバカじゃないっていうやつほどバカなんだ。あのネコも同じだ。ネコじゃないっていうのはネコだからだ」
「そうか!」
「違う! おれはウサギだニャ!」
「あんちゃん、あいつウサギだって言ってるよ?」
「バカだなお前は」
「うん。俺はバカだ」
「いいか。本当のウサギは自分のことウサギだなんて言わない。言う必要がないくらいウサギだからだ。自分をウサギっていうやつは、大抵ネコだ。自分をネコっていうやつがウサギなんだ。だから、あいつはネコだ」
「そうか!」
「そうかじゃニャイ! どういう理屈だニャ!」
「ねえ、あんちゃん。質問があるんだ」
「何だ?」
「神様っているの?」
 兄は笑う。
「バカだなお前は」
「うん。俺はバカだ」
「お前の前にいるのは誰だ?」
「あんちゃんだ」
「確かにあんちゃんだ。でも俺はいつからあんちゃんだと思う?」
「え?……あんちゃんは、ずっとあんちゃんじゃないの?」
「お前が生まれる前はあんちゃんじゃなかったんだぞ」
「え? 嘘だ!」
「本当だ。お前があんちゃんをあんちゃんって呼んでからあんちゃんはあんちゃんになったんだ」
「じゃあ、それまでは誰だったの?」

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