今回も押井さんがよく見ているというVチューバーチャンネル「あおぎり高校」について。ごくごく自然にメタしちゃったところが面白い「あおぎり高校」のお話にはじまり、「メタ」をテーマに、『新世紀エヴァンゲリオン』~『うる星やつら』へと、お話は広がっていき……。
取材・構成/渡辺麻紀
<新刊情報>
加筆&楽しい挿絵をプラスして待望の書籍化!
『押井守のサブぃカルチャー70年』が発売中!
当連載がついに書籍化しました。昭和の白黒テレビから令和のYouTubeまで、押井守がエンタメ人生70年を語りつくす1冊。カバーイラスト・挿絵は『A KITE』(1998年)などを手掛けた梅津泰臣さんが担当し、巻末では押井×梅津対談も収録。ぜひお手に取ってみてください。
押井守/著
『押井守のサブぃカルチャー70年』
発売中
発行:東京ニュース通信社
発売:講談社
カバーイラスト・挿絵:梅津泰臣
文・構成:渡辺麻紀
『うる星やつら』というシリーズに対する自己言及が『ビューティフル・ドリーマー』だよ。
――Vチューバ―についての3回目です。前回、押井さんの推しチャンネルとして「あおぎり高校」をあげて頂きました。そのメンバーのなかでも大代真白がイチオシ。彼女がやっているメタなノリが素晴らしいとおっしゃっています。
学校形式なので、新入生もいれば転校生もいて、卒業だってある。チャンネル自体は存続して、イベントや生徒を変えることが出来る。しかも、生徒を複数抱えることで競争意識も芽生えるから刺激にもなる。そういうところも上手いなと思ったんだよね。
――確かに新鮮さを保つことが出来そうな構成ですね。
見ているうちに、大代真白の中身に興味がわいてきて、そうか、こうやってみんなキャラにハマっていくんだなあと実感したんですよ。編集した映像だと、どこまでがホントでどこまでがウソか判らない。スプーンに一瞬、素顔が映っているように見えることもあるけど、それがホントだという保証はどこにもない。だから、そのキャラに興味をもった人はライブを見る。ライブのときにもいろいろとやらかすのでギリギリ感があって面白いし、大代の中身を垣間見たような気持ちになれるからですよ。
――そういうメタなチャンネルってほかにはないんですか?
どうなんだろう? あるのかもしれないけど、私は知らないなあ。ゲーム系のVチューバーは結構いても、明らかに演じているのが判ってしまうし。ここまでやっているのは、やはり珍しいんじゃない?
この大代が面白いのは、メタを狙ってるふうじゃないところ。やっているうちにそうなってしまったという感じ。やってみたらそっちのほうがウケたので、じゃあそうしようかってノリですよ。これ見よがしにメタ構造にしているわけじゃなく、ごくごく自然な流れのなかでキャラクターから中身の人に変わってみせる。なぜそう思うかというと、そういうのって計画的には出来ないだろうから。つまり、それくらい自然なわけですよ。
「あおぎり高校」は、いまのVチューバーの究極の在り方だと思う。これ以上は考えにくい。ただ、そうやってスレスレでやっているところが刺激的で面白いんで、身バレ、顔バレした段階で終わっちゃうだろうけどね。
――それって押井さん、私が腐女子漫画や小説で、ふたりが寝ちゃったら興味が失せるというのと同じですかね?
(笑)まあ、似たようなもんじゃない。虚実のドキドキ感を楽しんでいるからそうなるんですよ。もしかしたら、それがエンタメの本質かもしれない。
私は昔から、自己言及的な構造をもった小説や映画が大好きだったけど、それはそれ以上に興味をそそるものがなかったからなんだよ。あとはお話が面白いかどうか、あるいはキャラクターが魅力的かどうか。やはり私は、映画と小説という形式がもっている面白さはメタフィクションにつきると思っている。ただ、残念なことに、お客さんはそうは思ってないみたいでさ。
――虚構と現実の境界線があやふやなのが、押井流に言うとメタフィクション?
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