星5つが続出!『RRR』映画星取り【2022年10月号映画コラム】

TV Bros.WEBで毎月恒例の映画の星取りコーナー。今回は、あの『バーフバリ』シリーズのS.S.ラージャマウリ監督が贈る最新作『RRR』を取り上げます。

『ブロス映画自論』では、ジョン・ウォーターズのサマーキャンプ、先月最終回を迎えた『ちむどんどん』脚本・羽原大介のオススメ過去作、韓国ドラマシリーズで活躍する映画監督たちなどさまざまにご紹介します。

(星の数は0~5で、☆☆☆☆☆~★★★★★で表記、0.5は「半」で表記)

『マイ・ブロークン・マリコ』映画星取り& 衝撃的過ぎた巨匠の死 【2022年9月号映画コラム】
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<今回の評者>
柳下毅一郎(やなした・きいちろう)●映画評論家・特殊翻訳家。主な著書に、ジョン・スラデック『ロデリック』(河出書房新社)など。Webマガジン『皆殺し映画通信』は随時更新中。
近況:年内刊行予定の翻訳書の仕事に追われています(詳細は追って)。

ミルクマン斉藤(みるくまん・さいとう)●京都市出身・大阪在住の映画評論家。京都「三三屋」でほぼ月イチのトークショウ「ミルクマン斉藤のすごい映画めんどくさい映画」を開催中。6月からは大阪CLUB NOONからの月評ライヴ配信「CINEMA NOON」を開始

地畑寧子(ちばた・やすこ)●東京都出身。ライター。TV Bros.、劇場用パンフレット、「パーフェクト・タイムービー・ガイド」「韓国ドラマで学ぶ韓国の歴史」「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」「韓国テレビドラマコレクション」などに寄稿。
近況:『俺がハマーだ!』がまさか!?のブルーレイ化。ということで、思わず予約開始お知らせメール、登録しちゃいました。

『RRR』

監督・脚本/S.S.ラージャマウリ 出演/NTR Jr.  ラーム・チャランほか
(2021年/インド/188分)

●舞台は1920年、英国植民地時代のインド。英国軍に捕らわれた幼い少女を奪還するため立ち上がるビームと、大義のため英国政府の警察となったラーマ。敵対する立場にあった2人だったが、ひょんなことから出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、友情か使命か究極の選択を迫られることになるのだった。

10月21日(金)全国公開

©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.
配給:TWIN

 

柳下毅一郎
これが映画だ!

『バーフバリ』のS・S・ラージャマウリ待望の新作にしてあまりにも面白すぎる一大娯楽作。全編見せ場、全編クライマックス、全編外連の視覚の満漢全席だ! 見ないという選択はありえないからまず見ろ!
★★★★★

 

ミルクマン斉藤
超弩級なカロリーの高さ

ひと昔前まではボリウッド…つまりヒンディー語映画、そして南部のタミル語映画がインドのエンタメ映画の主流だったが、『バーフバリ』シリーズのS.S.ラージャマウリの出現によって今やテルグ語映画界が席巻してるのか? 英国支配からの脱出を試みた二人の実在運動家をフィクションの上で合体させたらしい伝奇的物語だけど、見せ場に次ぐ見せ場だらけ、スーパーアクションの連続で、ナショナリズム満開ながらも3時間飽きさせない超弩級なカロリーの高さ。長丁場ならではの休憩時間を挟んだ視点の転換も効果的。
★★★★★

 

地畑寧子
熱い男たちが奏でる篤い民族愛

『バーフバリ』の監督が、十八番の“愛と復讐”に熱い祖国愛を加味したアクションエンタ。其の実、歴史も長く層も厚いインド映画のアクションを満喫。香港映画から消えた荒唐無稽なアクションシーンを堪能したい人には特に推しです。
★★★★☆

気になる映画ニュースの、気になるその先を! ブロス映画自論

柳下毅一郎
キャンプ・ジョン・ウォーターズ

ジョン・ウォーターズに会ってきた。三年ぶりのアメリカは円安のおかげで死にそうになったけれど、ジョン・ウォーターズに会えると思えば我慢もできる。ジョン・ウォーターズと一緒のサマーキャンプも三年ぶりの三回目である。「ジョン・ウォーターズと一緒のキャンプ」と言ってもなかなか理解されにくいところである。あの『ピンク・フラミンゴ』のジョン・ウォーターズによるサマーキャンプである。飯盒でウ×コを炊くみたいな地獄絵図を想像する人が多いらしい。実際にはジョン・ウォーターズはサービス満点で優しいおじいさんで、キャンパー(ジョン・ウォーターズの熱狂的なファン)たちは明るく楽しい変態揃いなのである。

キャンプの話をすると、当然ながら、じゃあ何をやっているの?と聞かれる。これが本当に困るのだ。何をやってるって、全米から集まったウォーターズファンの変態が、みんな思い思いの格好をして、それを褒めあっているだけである。他人の格好に文句をつける人はいない。ひたすらポジティヴなバイブスが、肯定感だけがある。変態は変態に優しいのだ。円安で死にそうになったけど、キャンプはぼくらを優しく迎えてくれました。

 

ミルクマン斉藤
やっと終わってやれやれ、って朝ドラって……

なんだかんだ言ってNHKの朝ドラを生活のルーティンにしている人は多いみたいだ。僕個人としては俳優陣の起爆剤として機能するケースがやたらと多いからここ十数年欠かさず観ているんだけど、いやあ、『ちむどんどん』は流石に毎日が辛かった。ほぼすべての登場人物においてマトモな行動の動機がまったくない、こんなに行き当たりばったりな話を半年も平然と続けられる神経ってどういうことかね。脚本の羽原大介は開き直った見解を示してはいるようだけれど、生涯の汚点となるのは間違いないところ。ただし、彼の書いた過去のドラマまで貶められるのは避けねばならない。

『パッチギ!』や『フラガール』、『ヒーローショー』といった旧シネカノン系の映画をはじめとして(と言いつつ、どれもそんなに素晴らしい出来とは思えないんだが)、僕が大好きなのはWOWOWの「連続ドラマW」で行定勲が監督した『平成猿蟹合戦図』だ。歌舞伎町のヤバい場所にナシつけてキャメラ持ちこんだ冒頭から、一介のバーテンダー(高良健吾)が中央政界にケンカ売り込む復讐劇として爽快極まる出来。原作者の吉田修一とともに続編も考えてると行定さんから聞いた覚えもあるが、その後どうなったのかなあ。

 

地畑寧子
ドラマシリーズに進出する映画監督

少し前の話題になるが、『イカゲーム』の米国エミー賞での快挙には驚いた。昨年のハロウィーンで同作の仮装をしている人たちがいたのを見て韓流というより配信の威力を感じてはいたが……である。加えて長く韓国映画を見てきた立場から見た驚きは、映画監督がドラマシリーズに進出している動きだ。日本では珍しくはないが、韓国では演出家はテレビ界と映画界は住み分けされていて、映画監督がドラマシリーズを手掛けることはほぼなかった。その垣根がNetflixで除かれてきているようだ。

現に『イカゲーム』の演出は、『トガニ』『怪しい彼女』のファン・ドンヒョク監督であり、『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヨン・サンホ監督は、『地獄が呼んでいる』を演出、そして『悪いやつら』『工作 黒金星と呼ばれた男』のユン・ジョンビン監督は『ナルコの神』を演出し、話題になっている。アカデミー賞のみならずエミー賞までも席巻するNetflixに対しては是非双方の声もあり、韓国においては配分の問題もあるようだが、少なくとも、潤沢な資金、制限の少なさが映画監督には魅力。映画ではそぎ落とさなくてはいけない部分も活かせるドラマシリーズを、役者の起用も含め映画並みのクオリティで作ることができるとなれば逃す手はない、といったところだろう。瞬く間に世界のエンタメの一端を担うようになった韓国、配信の活用もさすがである。

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