続編製作も決定!全米ヒット映画『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』の見どころをご紹介!


コロナ禍で、大人も子どもも楽しめる劇場映画──中でも洋画の実写作品が激減している印象だ。親子そろって楽しめるファミリー向け作品は、思い出にもなる大切なもの。そういった状況で、1月21日に日本公開を迎える映画『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』は、実に希少な存在といえる。

                                                    

                                                    

【執筆者プロフィール】
SYO(Twitter: @SyoCinema )・・・映画を主戦場とする物書き。1987年生まれ。東京学芸大学を卒業後、映画雑誌編集プロダクションや映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー、レビュー、コラム、イベント出演、推薦コメント寄稿など映画にまつわる執筆を幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「BRUTUS」「シネマカフェ」「装苑」「CREA」等に寄稿。

                                                    

今一度我々が追求するべき“理想”を描いた
「子どもにも大人にも響くファミリー向け作品」


本作はタイトル通り、ある“奇跡”によって朝起きたら全長約3mに巨大化していた子犬と孤独な少女の絆を描く物語。舞台はニューヨーク・マンハッタンの一角。名門小学校に転校してきたエミリー(ダービー・キャンプ)はクラスメートからのけ者扱いされ、仕事に追われる母とは一緒に過ごせる時間が少なく、孤独感を募らせていた。そんなある日、彼女は全身が真っ赤な子犬と出会い、クリフォードと名付ける。翌朝、エミリーが目を覚ますとクリフォードはびっくりするほど大きくなってしまっていた! エミリーはちょっと頼りないケイシー叔父さん(ジャック・ホワイトホール)と共に、クリフォードを元に戻す方法を探すが、行く先々でハプニングに見舞われ、クリフォードはSNS等を通してあっという間に街の有名犬に。そして、ある目的を持つ大企業の社長ティエラン(トニー・ヘイル)に目を付けられ、さらわれそうになってしまう……。


本作は、児童文学作家ノーマン・ブリッドウェルの絵本「クリフォード おおきな おおきな あかいいぬ」の実写化作品。コメディありアクションあり、現代的なメッセージ性もしっかり詰まった内容が、爽快感あふれる語り口でつづられていく。ファミリー映画で重要なのは、「子どもにも、大人にも響く」作品であること。この部分、実は非常に難しく、どちらかに寄せすぎてもいけないし、平均的なものを作ると薄味になってしまう。その点『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』は、ストーリー面で「少女と犬の友情」という“わかりやすさ”を重視した構造をまず提示し、ビジュアル面で「巨大化した犬の冒険」という“見目楽しい”仕掛けがあるため、非常に明快でエンタメ性が高い。


ストーリー面では、エミリーとクリフォードを中心に配し、サポートキャラとしてケイシー(大人の共感を集める役割も担う)、敵キャラとしてティエランを置くつくり。それぞれのビジュアルも一目でわかるような差別化がなされていて、スッと理解することができるだろう。成長物語としても2軸が敷かれており、周囲から浮いた存在だったエミリーが勇敢さを得ていくストーリーと、ダメダメだったケイシーが頼れる存在に変貌していく「子どもと大人」両方のストーリーが展開する点が秀逸だ。

そしてビジュアル面。巨大な犬がニューヨークを舞台に疾走する姿はそれだけで見ごたえがあるし、クリフォードが公園でアクアボール(人が中に入って動かす巨大なボール)に興じている人に飛びついてしまうシーンや、家の中でおすわりや尻尾を振るだけで騒動になってしまうドタバタ感など、笑えるシーンも満載。クリフォードの表情一つひとつも細部に至るまで作りこまれており、「かわいらしさ」までカバー。巨大化するといってもグロテスクになることは一切なく、よだれやくしゃみ、おしっこといったある種の動物映画の鉄板ネタも、観る側が不快にならないように(そして、大人が安心して子どもに見せられるように)細心の注意が払われている。


また、興味深いのは本作のテーマ性。冒頭で母がエミリーに語る「世界を変えるのはユニークな人たち」が作品全体にかかっており、作品のキャラクターはとかく多様性が重視されている。人種はもちろん、経済的な面でも富裕層から貧困層まで明確に分散させているのだ。エミリーはスクールカーストに苦しみ、ケイシーは貧乏でトラック暮らし。そこに中国系のリッチな親子、コンデンスミルク好きの老婆、片手が義手となった店員といった多種多様なメンバーが加わり、力を合わせて権力を振りかざすティエランに立ち向かっていく。


言うまでもなくクリフォードも普通の犬と比較して“浮いた”存在だが、エミリーは周囲に「他と違うだけ」と訴える。重要なのは愛であり、相互理解なのだと。多様性を認め、愛をもって相互理解を図ること。これはコロナ禍にあえぐ世界で、或いはネット上を中心とした誹謗中傷が加速する「不寛容&分断の時代」において、今一度我々が追求するべき“理想”でもある。そういったメッセージからも、これからの将来を担う子どもたちへの優しくも切実なメッセージが感じられるのだ。


ちなみに、本作の全世界興行収入は1月13日時点で8700万ドルを超え、続編製作も決定済み。全米では初登場2位にランクインした。1位が『エターナルズ』、3位が『DUNE/デューン 砂の惑星』、4位が『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』と考えると、並み居る強豪にがっちりと割って入った形であり、本作の“強さ”が見えてくる。その後も約6週間に及びトップ10入りし続けており、人気&クオリティは本物だ。


吹き替えキャストも豪華で、花澤香菜、三森すずこ、金丸淳一、諏訪部順一といった実力派が集結。特に主人公のエミリーの声を担当した花澤の安定感あふれる名演には唸らされる(『劇場版 呪術廻戦 0』とは全く違うテイストを魅せてくれるのは、流石)。


親子で楽しめるファミリー映画の人気シリーズとして、産声を上げた本作。本作をきっかけに、親子の“対話”を楽しんでいただきたい。

【作品情報】
『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』
2022年1月21日(金) TOHOシネマズ日比谷 ほかにて全国ロードショー
配給:東和ピクチャーズ
© 2021 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

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