注目のお笑いコンビを紹介する『OWARAI Bros.出張版これからの芸人百景』第5回は、先日の『キングオブコント2021』(TBS系)で、見事準優勝に輝いたザ・マミィ。芸歴6年目ながら、紆余曲折を経験し、大きなチャンスを掴んだ現在。『キングオブコント』(以下『KOC』)の振り返りから、トリオからコンビへと転換した直後の苦悩、コント番組への意欲など、酒井の“クズキャラ”を忘れてしまうほど、熱く賑やかに語ってもらった。
企画・構成/竹村真奈・村上由恵 取材・文/佐藤ろまん 撮影/大槻志穂
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■『KOC』ファイナリストの時点で酒井の夢が叶う
——準優勝した『キングオブコント』決勝から(取材時点で)3週間が経過しましたが、周囲の反応や心境に変化はありましたか?
林田 悔しい気持ちは今もあるんですけど、まわりからは「おめでとうございます」「よかったね」っていうようなポジティブな言葉をかけていただくんですね。(同点2位の)男性ブランコさんも同じことをおっしゃっていて、それが嬉しいっていう段階です。毎年かはわからないですけど、今年の『KOC』は余韻が長いのかなあとも思います。
酒井 僕は、僕らの出番が終わり、空気階段さんが優勝した瞬間から『キングオブコント2022』が始まっています。こんなことを言う相方が心配ですね。
林田 インタビューの度に人格が変わるんだよなあ(笑)。一番余韻に浸ってるタイプでしょ?
酒井 実は、決勝の映像見ながら、酒飲んで浸ってます(笑)。
——『24時のハコ』(TBSラジオ)などラジオでの発言を聞く限り、酒井さんは、『KOC』の決勝進出が決まった段階で、満足していたようですが。
林田 ほら、バレてる(笑)。
酒井 知ってました? そうなんですよ、本当はファイナリストになるのが夢だったんです。ファイティングポーズで、写真がバンバンって出て、「ザ・マミィ」みたいな。あれでもう夢が叶ったから、ここからは余生を楽しもうと。
——余生が長そうですね(笑)。
酒井 でも、林田さんが親父に認めてもらうチャンスだと思って、僕もがんばんなきゃなって思いました。
——林田さんが大学を辞めて芸人になったとき、父親から「売れるまで帰ってくるな」と言われたそうで。
林田 そうなんですけど、この酒井くんのスタンスは、納得いっていないんですよね。よく映ろうとしてるんじゃないかな。
酒井 いや、ここからは、林田の人生です。
■飯塚さんも事務所にトロフィーを飾りたいはず?
——『KOC』決勝で披露した2本のコントのチョイスは、ザ・マミィ第2回単独公演『すごく、生きてる』のベストネタの2本ということでしょうか?
林田 そうですね、反応がよかったふたつです。
——配信で拝見しましたが、セリフなどほとんど変えずに『KOC』に挑みましたね。
林田 はい。どちらかというと2本目の「ドラマ」(「社長と部下」のコント)は、不安があって、決勝が決まってからイジくり倒したんです。配役を替えるまでの荒療治もしたんですけど、しっくり来ず、やりすぎてどんどん飽きて最悪の感じになり(笑)、訳わかんないから、「元に戻そう」ってなりました。1本目(「偏見~春に~」)は、ネタを降ろしたときからどこイジっていいかわかんなくて、結果的に同じになりましたね。でも、迷ったら最初の直感を信じるみたいなことはよくあります。
酒井 僕は、ホン(台本)より演技をがんばろうと思っていました。面白い演技、緊張感のある演技を……っていう志で。
——事務所の先輩の飯塚(東京03・飯塚悟志)さんが審査員を務めたことは、意識されましたか?
林田 意識というか、シンプルに嬉しかったですね。お世話になっている先輩が、審査員って超かっこいいじゃないですか。周囲から「審査員やらないんですか?」って言われて「やんないよ」って返していたのを見ていたので、覚悟を持って、あそこに座ったんだろうなとか、一瞬でいろいろ考えましたね。そういうのが込み込みで、(1本目のネタ終わりに)一瞬、「飯塚さんだ」っていう顔をしちゃって、それをMCの浜田(雅功)さんに見つかり、ヌルヌルした変な絡みをしちゃいました(笑)。
酒井 僕は1本目、飯塚さんなら100点つけてくれると思ったんですよ。思ったより低くて、「あれー?」って。じゃあ2本目が100点かと思ったら、また低くて。
林田 そんなひいきしないだろ。同じ事務所だったら100点って。
酒井 飯塚さんも事務所にトロフィー飾りたいじゃないですか。そのチャンスだったのに。
林田 叩かれる(笑)。
■初めてコンビで「ここにいるんだ!」と思えた「松ノ門」
——「卯月」というトリオを一旦解散して、再び林田さんと酒井さんで「ザ・マミィ」を結成したわけですが、ネタ作りに戸惑いなどありましたか?
林田 後からわかったことですが、3人とふたりって全然違うんですね。3人って、2:1の構図にできるので、2ボケで1ツッコミだと、説明がなくてもツッコミが強い世界を表現しやすいんです。ふたりになって、1:1だと、立場の上下を表すにも、状況を説明しちゃったり、力技っぽいネタが多くなったり、トリオ時代に得意だったネタと似た設定になったりと、スベリっぱなしのような状態が最初の数ヶ月はありましたね。事務所のライブでも、トリオを応援してくれていた方が多くて、裏切った形になっちゃったので、お客さんもどう見ていいのかわかんなかったんだと思います。
酒井 トリオのときと、めちゃくちゃ比べられましたね。エゴサーチみたいなことすると、「面白くなくなった」みたいに書かれていたり。そいつを見つけ出して…。
林田 ダメダメ、脅迫になっちゃう(笑)。
酒井 マイナスからのスタートは想定していたんですけど、思ったよりもキツかったですね。それをはねのけて戦うっていうのが。
——そうした状況を打破したきっかけは?
林田 ひとつあるのは、吉住さんとの2マンライブ、のちに岡野陽一さんが加わった3マンライブです。新ネタをガーっとやる場が欲しくて、僕らだけじゃ集客できないので、事務所の先輩の吉住さんに声をかけさせてもらったら、快く受けてくださって。そこでできた霊能者のネタが、優勝した『オンバト』(2019年3月放送『爆笑オンエアバトル20年SPECIAL ~平成最後の年に一夜限りの大復活!~』/NHK総合)にもつながりましたし、ザ・マミィの新ネタで初めてウケたって思えるネタでしたね。
酒井 「ここにいるんだ!」っていうのが、自分でも思えたし、周りも思ってくれたネタになりました。
——酒井さん演じる「松ノ門」は、酒井さんにピッタリのキャラですよね。
酒井 そうなんですよ。
(一同爆笑)
酒井 ただ「松ノ門」を営業でやるとウケないんですよ。どう見てもボケっぽい人がツッコミをやるからなのか……。
林田 今ならわかんないけど、僕ら自体がそういうネタ多いかもしれないです。
■コント村メンバーで再びコント番組に挑みたい
——今後、コント番組に出演されるなら、どんなメンバーとやってみたいですか?
林田 『キングオブコントの会』(TBS系)が最高だったので、もし僕らが『KOC』優勝できれば、松本(人志)さんやほかのレジェンドの方とコントができるっていう可能性が見えたのは、激アツですね。あと、コント村(ゾフィー・上田航平を村長としたコントを愛する芸人によるユニット)でやった2番組(『お助け!コントット』、『東京 BABY BOYS 9』/ともにテレビ朝日系)は、今よりもコント番組が少ない中、手探り状態で苦戦もしました。感じているものはみんなあるので、またもう一回、あのメンバーで挑戦させてもらえれば、もっとおおらかに楽しみながら、違う角度、面白い見せ方ができるんじゃないかっていう話をすることもありますね。
酒井 コント村でのコント番組は、青春のようで、本当に楽しかったですね。みんなが一生懸命ネタを書いているとき、だいたいサイトウ(ゾフィー・サイトウナオキ)さんと菊田(ハナコ・菊田竜大)さんと僕の3人が、喫煙所でタバコ吸っていまして。サイトウさんが肩組みながら「俺らネタ考えてねえもんな」とか「タバコうめえな」って言って来たりして。で、やるときは、みんなで面白いものを創るっていう空気がよかったですね。
林田 なんでもやりたいとは思っていますが、コント番組でリベンジするのがひとつの目標ですね。
ザ・マミィ●林田洋平(1992年9月10日、長崎県出身)と酒井貴士(1991年6月1日生まれ、東京都出身)が、スクールJCAで出会い、お笑いトリオ・卯月として活動し、2018年よりザ・マミィ結成。2021年『キングオブコント』準優勝。文化放送『カラフルオセロ』毎週火曜パーソナリティー担当。
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