「YOUは何しに日本へ?」(テレビ東京系/2024年4月8日放送)で特集されるやいなや、キャラクターの人気に火が付いたパンダの「ガドゥ」。作者であるムッシュー・タン氏がこの度来日するということで、インタビューを敢行! 来日時に「5時に夢中」(東京MX/2024年5月15日放送)へ出演するなど、注目度は高まるばかり。タン氏はフランスで累計1900万部突破の超人気マンガ「毒舌アデル」の作者でもあり、ガドゥが生み出された背景から日本とフランスのアニメ文化まで、大いに語ってもらった。
日本版ガドゥ公式HP>>>https://gadou.jp/
取材・文/於ありさ 撮影/於ありさ、編集部
プロフィール
ムッシュー・タン
1981 年フランス・シャンベリ⽣まれ。⼩説、絵本、マンガ、詩をはじめ、作品数はすでに100 を超え、シナリオライター、イラストレーターと、活躍の場は広い。Mr Tan(ムッシュー・タン)のペンネームで制作されたアニメシリーズMortelle Adèle「毒⾆アデル」は累計1900万部を売り上げ、ヨーロッパで⼤ヒットを記録する。2024年4月「YOUは何しに日本へ?」(テレビ東京系)で「ガドゥ」のキャラクターグッズを東京・原宿の「キデイランド」へ売り込む様子が放送され、一躍話題に。同店では2023年クリスマスシーズンと2024年4~5月で販売。現在、静岡県の駿河屋本店と駿河屋EC、東京・上野のヤマシロヤにて「ガドゥ」グッズが買える。2024年4月にはフランスでガドゥの絵本も発売された。
目次
きっかけは5歳の頃の原体験、みんなの相棒ガドゥ
――日本でもじわじわと熱を上げているガドゥ。どんなキャラクターなのか、改めて教えてください。
タン ガドゥはパンダの男の子。ほかのパンダとは違って、毎朝じぶんの顔に模様を書いて、新しい自分になっているというキャラクターです。世界中、自分探しの旅をする、冒険家な一面も持っています。
――なぜパンダなのでしょう?
タン ガドゥは5歳のときに、僕がもらったぬいぐるみをモデルに考えたキャラクターなんです。あのときは、母親が病気で何ヶ月も入院することになってしまい、5歳だった自分は急に家を離れることになった時期でした。洋服も持っていかれず、買い直してもらい、新しい学校に入ることになり……そんなときに唯一持っていけたのがガドゥというぬいぐるみだったんです。
――こんな可愛らしいパンダにそういうエピソードがあったとは……。
タン ガドゥは、自分の悩み事を相談したり、寂しい気持ちを言えたりする、当時の僕にとって親友のような存在でした。すごく助けられていたんです。
だからこそ、大人になった今、感謝を伝えたいと思いました。それでどんな方法が良いか考えた時に、みんなに愛されるようなキャラクターにしたい、自分がそうだったように今の子供たちにガドゥのような相棒がいてくれたら素敵だなと考えるようになって、キャラクターとして誕生させることにしたんです。
――日本では東京・原宿のキデイランドなどで展開されているガドゥ。日本人からの反響はタンさんに届いていますか?
タン SNSを通じて直接メッセージをいただく機会が多くあります。bio見ましたよとか、「YOUは何しに日本へ?」での話に共感しましたとか。特にテレビの放送で映った母親が作った試作品への反響が大きいですね。「私も、お母様が作ったものを買いたい」と言ってくださる方も多くて、母もすごく喜んでいました。今度実際、受注販売するんですよ。
日本では大人が自分の中にある子供の心を大切にしている
――ガドゥを日本で広めようと思った理由は何でしょう?
タン 私の考えのベースともいえるのですが、最大の目標は「創作を通して普遍的な感情を共有すること」です。日本に来て驚いたのは、言葉や文化が違う人たちがキャラクターを通じて、共通の感情を受け取ったり感じ取ったりしていることでした。それを見て、自分も感情を共有できるようなキャラクターを作り上げたいと思うようになったんです。
――今のお話に通ずる部分でもありますが、初めて日本に来た際、キデイランドを訪れ感動したそうですね。
タン はい。私はフランスで1900万人の読者がいる「毒舌アデル」シリーズの漫画家なのですが、フランスでは「漫画や児童書=子供のもの、大人向けのものではない」という感覚が未だに強くあります。
一方でキデイランドは違いました。キャラクターは子供向け、大人向けではなく、全ての人に向けたものばかり。一人ひとりが自分の中にある子供の部分を大切にしているように感じられたんです。僕は自分自身の子供の部分を大切にできたら、大人としても充実した人生になると信じているのですが、キデイランドではそれが可能になっている世界でした。
――なるほど。
タン そもそもキデイランドに限らず、日本にはキャラクターやイラストが溢れているんですよね。企業の広告やコミュニケーションなどを含めて、ここまで日常生活にイラストが溢れている国なかなかないですもん。ポテトチップスなどのお菓子のパッケージデザインまでもがすごくキレイに見えて、空っぽの包装紙をたくさん持って帰ってしまいました。
フランスの30~40代が見てきた日本のアニメ
――もう10回以上来日されているタンさん。15年前、初来日したきっかけは何だったのでしょうか?
タン 子供時代から日本に興味がありました。その理由は大きく分けて2つ。まず1つは日本の文字、ひらがなや漢字への興味です。日本の文字は、僕らから見るとイラストのように思え、“書く”というより“描く”っていうイメージが近い。それに興味を持ちました。
2つ目の理由は、僕ら世代が子供の頃、児童向け番組のほとんどが日本のアニメだったんです。ガンダムシリーズとか、ドラゴンボール、セーラームーン、らんま1/2、聖闘士星矢、カードキャプターさくら……とにかくたくさん放送されていて。だから、今のフランスの30~40代はすごく日本好きが多い世代なんです。今は配信番組のおかげで、さらに見られる作品が増えていますけれど。
――タンさんが日本通な理由が少しわかったような気がします!
タン はい。それから、僕個人としては、日本とフランスって文化的にすごく離れているようで、実は近いところもあると感じています。そういうところが自分の感受性に訴えかけてくるんですよね。
離れているようで実は近い!? 日本とフランス
――具体的に、どのようなところが“近い”と感じるのでしょうか?
タン それを言語化するには、まだまだ探らないといけないなと思っているのですが、1つ自分の体験をお伝えします。僕は幼少期に山の中で過ごしました。自然しかなくて、狭い世界。でも漫画を読んで、その狭い世界の外にある世界を知ったんです。
その影響もあってか、日本に来たときに知っているようで知らないこと、知らないようで懐かしいことがたくさんあったんですね。漫画とかアニメをたくさん読んだり、見たりしたから知っているけれど、深いところは知らない。それは外国人だから、というような感覚を覚えました。
――幼い頃に希望を見出した世界だったんですね。
タン それから先ほど申し上げた感受性の部分。特に広島を訪れた時に、それをすごく感じました。さまざまな困難に直面しても立ち上がって生きていこうとする。自分で自身を修復して、前向きに生きていく感覚を覚えたんです。
壊れたお皿を修復する金継ぎにも通じる部分があります。壊れたものを直して、装い新たにして大切にする。人間にも当てはまるなと感じました。実はこの金継ぎ、フランスでも少し流行っているのですが、それはただ単に実用的な技術ではなく、精神的な話として捉えられていて。自分を修復するマインドのように捉えられているんです。
――フランスではより精神的なこととして捉えられているんですね。
タン 僕は「完璧ではない完璧さ」を持ち合わせているものに惹かれるんです。人それぞれ完璧ではなくて、ちょっと欠けているところがあって、そういうところが完璧に素敵である。そういうメッセージをガドゥを通して伝えられたらいいなと思っています。
――素敵です! もうすでに音楽やアニメ、アプリゲームなど幅広く展開されているガドゥ。今後はどのような展開を考えていますか?
タン アイデアはたくさんあります。音楽や本に関してはまだ1つずつしかないので、もっとたくさんリリースしていきたいですし、ゲームも数多く展開していきたい。ありがたいことにゲームに関しては、日本人の利用者が多いので、今後も何か日本に向けた展開も積極的にしていきたいです。
ありガドゥ!
そしてこの言葉、流行らせたいです(笑)。
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