おとどちゃん連載・23「世界は誰かの仕事でできている。」

創業92周年! 高知県桂浜にある小さな水族館から大きな声で、いきものたちの毎日を発信中!

広報担当・マスコットキャラクターのおとどちゃんが綴る好評連載第23回は、盛田のおんちゃんと過ごした休日のお話。

なんとオフの日の盛田のおんちゃんの写真も! 盛田のおんちゃん推しのみなさん、必見です!
爆誕したばかりのアシカの赤ちゃんの最新写真もあります♡

以前のお話はこちらから。

 

令和五年五月二十九日、高知県は、昨年より二週間ほど早く梅雨入りした。この季節は読書が捗る。特に豪雨の日は、街を打ち鳴らす雨がすべてのノイズをかき消してくれるから、絶好の読書日和だ。

梅雨入り発表から間もなくして、台風二号の影響を受け、梅雨前線が活発化し、高知県に線状降水帯が発生した。県内は朝から激しい雨に見舞われ、私も水族館に着く頃には、滝行でもしてきたのかというほどびしょ濡れになったいた。こうなったらもうどうにでもなれと、浮かれてはしゃぐ魚類担当の飼育員と浜辺に出た。砂浜にも、遊歩道にも、ところどころ深い水溜まりができている。長靴を履いた飼育員が水溜まりを目がけて飛び上がると、着地とともに私に向かって泥水が跳ねた。

この野郎!! どうにでもなれとはいったが、泥水を浴びせるのは違うだろ!!

「あはははは! ごめん! ごめん!」

尚も水溜まりの上で飛び跳ねて悪びれる様子のない彼を置きざりにし、私は一階事務所に戻った。

濡れた体を乾かし、その日は一日、解剖学の本を読んで過ごした。動物の解剖学ではなく、人間の解剖学である。

夕方のミーティングが終わり、本の続きを読んでいると、憎き飼育員が声をかけてきた。

「おとどちゃん、まだ怒っちゅう? ごめんてえ。え……待って。もしかして、俺、解剖される!?!? そんなあ!!」

目を見開き、肩を揺さぶりながら縋りついてくるのを横目に、わざと音を立てて本を閉じる。

「夜道に気をつけたまえ」

私が薄っすらと笑んでみせると、彼は勢いよく後退り、「うわあああああああああああ!!!!」と叫びながら事務所から出て行った。

まったく、愛すべき馬鹿め。

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