おとどちゃん連載・21「chameleon」

創業92年! 高知県桂浜にある小さな水族館から大きな声で、いきものたちの毎日を発信中!

広報担当・マスコットキャラクターのおとどちゃんが綴る好評連載第21回は、ニューカマーについて。そして、7歳となって改めて攻めの姿勢宣言を放つおとどちゃん、桂浜一カッコイイです!

以前のお話はこちらから。

 初夏のように爽やかな風が吹き、プールの水面に柔らかい陽射しが降り注ぐ。春休みが終わると家族連れの客が減り、平日の水族館は賑わいが少し落ち着いた。とはいえ、浜辺には一日じゅう観光客がいて、お天気の良い日には、カップルが海風に身を委ね、お弁当を広げてピクニックを楽しんだり、学生たちがキャッチボールをしてはしゃいでいる。

 昨年の三月に事務局スタッフとして仲間入りした若手スタッフが、入社から丸一年を迎えた。明るくお調子者で、笑い上戸ではあるが、どんな表情にもどこか影があり、アンニュイな雰囲気を持っている。特に、高知に引っ越して来てから、わりと最近まで同居していた上司にはよく懐いていて、仕事中も軽口を叩いたり、他愛もない言い合いをしている。彼が上司と同居していた家を出ることになり、ひとり暮らしを始めてからも、晩ご飯を食べたり、仕事終わりや休みの日には、時どきいっしょにどこかに出かけているようだ。

 彼は、大学を卒業後、関東で就職をして働いていたが、脅威のハンドルさばきで人生の方向転換を決め、桂浜水族館にやって来た。しかし、事務局スタッフも個性派揃いで、入社早々クセの強いスタッフたちに圧倒され、その存在は埋もれてしまっていた。見かねた館長が自分探しをするようにいうと、彼は初心な黒髪を脱色し、金色、青色、緑色と、髪色を変えるようになった。途中、あまりに染色を重ねたために、何色も雑ざり、絵に描いたような「迷走」を体現した。容姿を変えれば変えるほど、色とりどりの個性に溶け込み、彼の個性は姿を消してしまう。容姿だけでなく、仕事面でもなにをやっても宙ぶらりんで、自由の中で何者にもなれないモラトリアムな日々が続いた。その姿が、私には、なんとなくカメレオンのように映った。

「おとどちゃん、あの子どうしたらいいと思う?」

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