おとどちゃん連載・15「秋桜と金木犀」

今年で創業91周年! 高知県桂浜にある小さな水族館から大きな声で、いきものたちの毎日を発信中!

広報担当・マスコットキャラクターのおとどちゃんが綴る好評連載第15回は、コツメカワウソの近況、飼育員漫才コンビ・リバーシブルのM-1への挑戦、そしてカエルの花子の物語!

以前のお話はこちらから。

 

令和四年九月二十八日に「王子」と「桜」の初子たちが二歳の誕生日を迎えた。きょうだいはすでに桂浜水族館から出ていて、「秀太朗」と「文太朗」は神戸の市街地にある複合施設の中の小さな水族館に、「お浜」は舞台美術やデジタルアートが融合する劇場的な都市型水族館に、「楓」は空の上にある一番大きな施設の天国で暮らしている。きょうだいはみんな生まれた時から多くの人に愛され、移動先でも限りない愛のもと、それぞれの個性を生きている。神戸の施設を訪れた人たちは、今でもよくSNSに写真を載せたり、ダイレクトメッセージでそれぞれの様子を私に報せてくれる。きょうだいいちの破壊神でおてんば娘の「お浜」は相変わらずのやんちゃぶりを発揮していて、どうやら恋愛にも全力投球なようだ。いっしょに移動したパートナーの「げんげん」が鬱陶しがるほどの恋心を燃やしているらしい。彼らが移動した先の水族館は、どちらも新しくできたばかりで、設備が整い、みんな広々とした新居で悠々自適に暮らしているという。

そんなきょうだいたちが二歳を迎えた記念すべき日は、桂浜水族館の飼育員ふたりにとってもまた特別な一日だった。漫才コンビ「リバーシブル」。ツッコミ役である飼育リーダーが体調不良に陥ってしまったために一度は見送った「M-1グランプリ」の一回戦が行われたのだ。体調の回復が見込めず、出場を見送ることが確定した日、ボケ役の飼育員が大会事務局に参加キャンセルの連絡をした。誰もがこのままこの挑戦は終わると思っていた。しかし、事務局によれば日程変更が可能だという。いくつか出場変更希望日を提出した中で、再び挑戦できることとなった日が、九月二十八日だった。これが神様の悪戯だとすれば、本当におもしろいことをしてくださる。

数日後、飼育リーダーが無事職場復帰し、新型コロナウイルスに感染していたスタッフの療養期間の終わりとともに、水族館は約十日間の休館を明け、慌ただしい九月が始まった。

予選出場日の一週間ほど前のこと。夕方のミーティングが終わり、事務所でくつろぎながら後輩たちと他愛もない話をしている飼育リーダーに訊いてみた。

「Ⅿ-1は、なんのネタをやるの?」

「ん? 言わん! おとどちゃん口軽いから教えたらすぐツイッターに書くやろ! 絶対に言わへん!」

「んんん! そこをなんとか!」

「嫌や! 絶対に、言わへん!」

「お願い!」

「………………………」

「………………………」

少しの間ふたりで睨み合って互いに無言の圧力をかける。根負けしたのか、飼育リーダーはできるだけ声を殺してネタばらしをしてくれた。

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