ヨシモト∞ホールなどで活躍する人気急上昇中のお笑い芸人・ケビンスのトーク&マンガエッセイ連載。コンビのネタ作りを担い、独創的な視点とイラストセンスを持つ仁木恭平が、快活なキャラクターで何かと注目を集める山口コンボイを主役にマンガを描き下ろし。劇場出番前や賞レースの際の、2人のルーティーンについて聞いたところ、新ネタを受け取るタイミングについての論争に発展…!?
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取材・文/釣木文恵
撮影/武石早代
目次
第8話「ケビンスのルーティーン」
今日はどのネタをやる?
ヤマを張るコンボイ
コンボイ 毎日のルーティーンって言ったら、俺はライブの前に髪の毛をセットしてぇ、ストレッチしてぇ、ボイストレーニングの先生に習った喉のウォーミングアップをやる、かな。
仁木 俺は、出番のギリギリまでずっとネタを書いてるな。その日の客席の空気を見てどのネタをやるか決めるから、アリネタ(※既存のネタ)だったら、だいたい出番の15~10分前にコンボイに「このネタをやる」って伝える。トップ出番の時はオープニングのウケ具合を確認してからになるから、やるネタが決まるのは、本当にもう5分前とか。
コンボイ そう。だから俺は「今日はたぶん、このネタをやるんじゃないか」ってヤマを2、3個張ってる。最近どんどん正解率が上がってきたよ。この前、ネタを2本やるライブがあったけど、2本とも当てたもん。
仁木 あとネタをやる前は、コンボイが1人で練習しているのを盗み聞きしてる。そこで“声の感じが違う”とか、ずっと注意してきたことが直ってなかったら、舞台袖で伝える。
コンボイ それはあるね。(ヨシモト)∞ホールの出番の時は、舞台上手すぐのところでもうギリギリまでやってる。
仁木 家に帰ってからも「今日、あのくだりをやってる時、なんで長く感じちゃったんだろう」「なんであそこウケなかったんだろう」と思い返して、翌日に一度コンボイにやってもらったり…とかはあるよな。でもそれは、芸人ならみんなやってることか。
コンボイ ネタ直後もダメ出しがあるし、やることはいろいろあるよね。俺はさ、7月頭からネタと平場について全部メモし始めたよ。一度文字に起こすくらいのことをやんないと、ちゃんと心に刻めてないなと思ったから。
新ネタは30分前にもらえるのか!?
白熱の論争が勃発
仁木 新ネタだったら、出番の30分前には2人でネタ合わせして…。
コンボイ え、いやいや! 30分前になんて合わせてないよ。18時30分スタートのライブで、俺らがトップ出番の時に18時20分くらいにようやく伝えられたこともあったよ! 俺、新ネタは出番の15分前にもらえたらラッキーって感覚だもん。
仁木 そんなことないって! だってコンボイ、コンビの話し合いの時に「新ネタは30分前にはほしい」って言ったじゃん?
コンボイ 言った!
仁木 だから俺、30分前には伝えてるって。もし伝え始めるのが出番30分前を切ってたとしたら、それはその時間にお前が楽屋にいないからだよ。
コンボイ いるよ! だってさ、いっつも「今日は何のネタやるの?」って聞きに行ったら「まだ決まってない」とか「あっち行っとけ」とか言うじゃん。
仁木 それはアリネタの時だろ? 新ネタを合わせようと思ったら、コンボイはだいたいタバコを吸いに行ってていないんだって。お前、タバコ長いぞ?
コンボイ そんなの、俺がタバコ吸ってても言いに来てくれればいいじゃん?
仁木 お前が来いよ。
コンボイ まあ…じゃあそれは申し訳ない。でも俺、めっちゃ仁木くんの近くをうろうろして、チラチラ見てるじゃん? でも仁木くんはずっと書いてるから「あ、まだ書いてるな、これは邪魔しちゃいけない」って思って、トイレに行くの。トイレに行ったふりをする時もあるんだよ? だから、声かけてよ!
仁木 コンボイから言ってこいって。お前はだいたい、18時30分スタートのライブで17時50分とか55分とかにはいるんだよ。でも俺はその5分でもう1個ボケが出ないかなって考えてるの。で、18時になって探したらいないんだよ。
(と、しばし論争を繰り広げる2人)
コンボイ え~、そっかぁ。じゃあ仁木くんが言うように俺がタバコを吸ってたって理由で、新ネタを本番15分前くらいから伝えてもらって、出番ギリギリにやっと伝え終わるみたいなことがあったじゃん? でも新ネタってエキサイティングだから、俺は意外と飛ばさなかったんだよね。そういうことが何度か続いて、仁木くんは「コンボイはこのぐらいまではできるんだ」と思ったから、どんどん伝え始めの時間が遅くなっていってるのかな、と認識してた。
仁木 そんな意地悪しないって! お前がちゃんとその場いたら言うんだから。
コンボイ うーん、分かった! じゃあ、これからは30分前に仁木くんのところに行くようにする!
賞レース時期に気にすること
コンボイ 賞レース前にも、ルーティーンってあるかも。『M‒1』の予選の日はいつも、熱くなるような曲を聴くようにしてるな。初めて準決勝まで行った2022年の『M‒1』の時に聴いていた曲。それ用のプレイリストもあるよ。ジンクス的なものを気にしてルーティーンに組み込む芸人さんもいるけど、俺はそこは気にしないんだよね。仁木くんもあんまりでしょ?
仁木 いや、俺はめちゃめちゃ気にするよ。賞レースの時期に限らず、日々徳を積むというか、知らない人や街ですれ違う人が嫌だと思うようなことをしないようにしてる。
コンボイ へー!
仁木 例えば人にぶつかっちゃうとか、もちろんやらないけど信号無視とか。「バチが当たる」っていうのは、ある気がしていて。ただ、神みたいな存在がいるとして、そんな細かい国のルールとか法律とか分かるのかな?と思うんだよ。バチって結局、人にそういうちょっとした行動を見られてムッとされた瞬間の気持ちとか、そういう呪いみたいなものの集合体なんじゃないかって。だから、すれ違う人がそういう気持ちになるようなことはしない。賞レース時期はその気持ちがより強くなるな。