第42回 新社会人の皆さん!こちら、ビジネスの心得を学べるマンガです!!

 いつの時代も人間を最も興奮させるもの、それは「異常に喧嘩を売る奴」と「異常に喧嘩を買う奴」が最悪のタイミングで出くわすこと。
『刃牙』シリーズの板垣先生も過去のインタビューで「誰と誰を出会わせたら揉めそうかを考える」といった内容の発言をされていましたが、皆さん『薩摩転生~世に万葉の丸十字が咲くなり~』読みましたか!?
 戦国最恐のジャパニーズバーサーカー集団・島津家が、豊臣軍との戦いの最中に3世紀のローマに集団転生。島津×ローマ帝国、島津×スパルタの軍勢など、誰の凶暴性が一番なのかが、気合が入った見開きの大殺傷シーンも迫力と共に大展開。
 新天地での圧倒的な殺傷適応力の高さがいかに重要なのかを学べる最高の一冊なので、新社会人の皆さんは是非お読みください。ビジネスの世界でも、誰よりも早く「よし、殺す」と思って実行できる奴が勝つ。間違いない、マンガの力を信じて社会に出ろ。

内富拓地 原案/ほうこう おんち『薩摩転生~世に万葉の丸十字が咲くなり~(1)』(小学館)

 実行力という点では『恋とか夢とかてんてんてん』の主人公・カイちゃんの「片思いからの異常行動」も最高で、大部分の人にとっては大したことないような局面で一方的に意を決し、濃縮された人生のバネを大気圏外まで跳ねさせる様は目が離せない。
『巨人の星』の新春ボウリング大会の回で、生まれて初めてボウリングをプレイする左門豊作が投げた球が、『銃夢』のモーターボールみたいな超暴力的な軌道で周囲を跳ね回るシーンが大好きなんですが、自分の手の中にあったものがコントロール下を離れて制御不可になるあの感じ、カイちゃんの今後の人生には応援する以外の選択肢がないと思います。
 何もないと思っている人の人生は、急に爆発することが多いからな。

世良田波波 『恋とか夢とかてんてんてん(1)』(マガジンハウス)

 応援する以外の選択肢がない、の逆が『おちこぼれ』に登場する老ヤクザ達。
 特に第2話に登場する北原の「ダメ側の愛嬌」が良くて、シルバー人材派遣での作業先で、「ここだけの話、俺はヤクザだ」「俺の兄貴分は〇〇組の相談役で、その組長とは兄弟分で……俺はそんなすげえ人の舎弟なんだ」と周りからは一切相手にされない自慢話を繰り返した挙句に当然クビになり「なぜヤクザだとバレたのか見当がつかない」と心の底から不思議がっているような「直接関わらない距離感から見た時だけに感じる可愛さ」がたまらない。その他の収録作もすべて、ヤクザの世界で何者にもなれなかった上に、今から地道に積み重ねることもできない男たちが一方的に意を決して明後日の方向にはじけ飛んでいく様が描かれており、激しくオススメです。「誰か俺を大企業に売り込んでくれんかのう」「ヤクザ仕込みの交渉とか示談とかしてやるのによう べっぴんの秘書と運転手付きにはしてもらうが」「なんで世間はオレの価値に気付かんかねぇ」
 こんなこと言ってる実績ゼロの50代ヤクザが出るマンガ、栄養しかないよ。

たーし 『おちこぼれ(1)』(日本文芸社)

『影霧街』で、悪いものを悪いとわかって楽しめる大人に向けて、人間の尊厳を極限までゼロにしたエンタメを描いてくれた大瀬戸陸先生の新作『ねずみの初恋』も必読。今作でも期待通りに、主人公・ねずみの彼氏であるあお君の「絶対的な危機に直面した際にヘラヘラしてしまう奴」「死ぬかもしれないのに雑念が入ってきてしまう奴」の表情が抜群にアホで優しくて、たぶん今後も間違いなく重要な局面で大失敗をしてろくでもない目にあい続けてくれると思います。

大瀬戸陸 『ねずみの初恋(1)』(講談社)

『ガールミートガール』も、人間の姿をした少女と豚の姿をした少女の「食育」の話というだけで問題作確定。なんてったって『p u p a』の茂木先生ですからね。この先全くいい予感がしなくて最高だし、そもそもカバーアートから想像する内容からどんどん斜めに裏切られて2巻に続きますので是非。

茂木清香 『ガールミートガール(1)』(朝日新聞出版)

   

げきが・うるふ●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。

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